米津玄師が「IRIS OUT」「JANE DOE」で描いたものとは? 『チェンソーマン レゼ篇』に宿る愛、主題歌の真価

 劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が9月19日に封切りを迎え、公開初日から話題を集めている。主題歌担当として本作を彩るのは、アニメ版に引き続き原作マンガの愛読者でもある米津玄師だ。

 周知の通り、上映に先駆けて9月15日に配信開始されたメインテーマ「IRIS OUT」はリリース直後から前代未聞の勢いで各チャートを席巻し、自身の持つ各種記録を続々と更新。エンディングとして書き下ろした「JANE DOE」ではゲストシンガーに宇多田ヒカルを迎えたビッグタッグが実現し、両曲を楽しみに映画館へ足を運んだ人もきっと多いに違いない。

米津玄師 Kenshi Yonezu - IRIS OUT

 思い返せば今年初旬にリリースされた「Plazma」では、自らの創作の原点に立ち返り制作を行ったと語っていた米津(※1)。彼の原点を語る上で欠かせない音楽と言えばやはりVOCALOIDだが、今回の「IRIS OUT」にもいわゆる“ボカロらしい”ムードが引き続き漂っているようにも見受けられる。

 今作におけるボカロらしさの要素としては、『チェンソーマン』の物語を下地とする乱雑さに加え、やはり特筆すべきは跳ねのリズムに象徴されるエレクトロスウィングの曲調だろう。ぬゆりの「ロウワー」や柊キライ「ラブカ?」など、近年のボカロシーンではYouTubeで数千万回再生の楽曲も複数輩出する一潮流であるエレクトロスウィング。カテゴリとしてはEDMの一種で、曲全体を通してピアノやホーンサウンドを散りばめつつ古典的なジャズ/スウィングのリズムで構成された、いわば“温故知新”な音楽となる。そんなジャンル的性質が原点回帰する現在の米津自身の姿と重なるという意味でも、今の彼にとってはまさにお誂え向きな音楽だと言えるだろう。

 「BOW AND ARROW」では歌詞における韻踏みの効果的な活用も話題となったが、「IRIS OUT」でも近しい手法が用いられていることに早々に気づいたリスナーも多かった印象だ。そういった意味でも今作は、2025年上半期を賑わせた「Plazma」、「BOW AND ARROW」と地続きの作品として位置づけるべき楽曲なのかもしれない。

 次ページより、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』のストーリーや内容に触れながら解説していく。本編を未視聴の場合は、注意しながら読み進めてほしい。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる