新着MVランキング：MAZZEL、静けさの中で見せた“真の表現力”　「Only You」が照らす次なる進化の方向性

MV Chart Forcus

　毎週更新される「YouTube Music Charts」ウィークリー ミュージック ビデオ ランキングより、MVをはじめとした音楽関連の新着動画から上位10作品／楽曲を取り上げ、ランキング化＆レビューしていく連載「MV  Chart  Focus」。10月31日〜11月6日のウィークリー新着のTOP10は以下の通り（※1）。

1位：MAZZEL「Only You」MV
2位：はろける「目撃！テト31世」MV
3位：Ado「MAGIC」MV
4位：BE:FIRST「I Want You Back」Dance Practice
5位：IMP.「KISS」MV
6位：Eve「アイオライト」MV
7位：B&ZAI 「Ain't No Dream Over」Performance Video from『ANDO』
8位：BUMP OF CHICKEN「I」Lyric Video
9位：夏山よつぎ「ころしちゃった!」MV
10位：ピラフ星人「ゴーストマンション」MV

　今回取り上げるのは、BMSG所属の8人組ボーイズグループ、MAZZELのシングル表題曲「Only You」。メンバー各々の伸びやかな歌声がフィーチャーされた、R&B調のJ-POPバラードだ。彼らのディスコグラフィの中でも群を抜いて柔らかく優しく、かつメロディアスな歌唱が中心になった楽曲と言っていいだろう。「Only You」単体で聴くと、バラードであるとしても少しパンチが弱く感じられてしまうかもしれないが、歌詞の内容を膨らませるストーリーテリングを重視した繊細なコレオグラフィが印象的なMVとの相性は素晴らしく、多くのファンが没入してしまうのも頷ける。

　それにしても、このしっとりとしたバラードは、彼らの楽曲（特にシングル曲）としてはちょっと意外に思える。なにしろ、ひとつ前にリリースされたデジタルシングル「DANGER」は三味線のサウンドをフックにしたアグレッシヴなダンスチューン。CDシングルには「Only You」とともに収録される予定のこの楽曲、並べるとかなり対照的だ。4月にリリースされたEP『Royal Straight Flush』も力強いトラックの曲が多く、メロウなR&B「I'm yours, You're mine」にしても、「Only You」の柔和な印象よりも、力強くドラマチックなメロディと歌唱が詰まった楽曲。ちなみに、同EPにはヤマモトショウが提供した「to me」も収録されていて、軽妙でしなやかなディスコサウンドにリリースカットピアノがアクセントになったトラックが、これまた意外なマッチを聴かせている。

　閑話休題。さらにディスコグラフィを遡っても、「Only You」ほどコテコテのJ-POPバラードは見当たらない。パフォーマンス重視のダンスボーカルグループとして、これまでの楽曲は、ダンスが映えるようなビートにHIPHOP要素が強めのリズミカルな歌唱をフィーチャーするのが、ある種定石だったように思う。たとえバラード的な表現であっても、リズムの効いたアレンジになっていた。「Only You」はドラムの音色も控えめで、むしろ歌声とそれを支えるハーモニーの動きをしっかりと聴かせるようなバッキングになっている。もちろん、パフォーマンスそのもののキレはMAZZELが積み重ねてきたものが表れているのだけれど。

　これが彼らのレパートリーのバラエティを豊かにするひとつの変化球なのか、それとも今後の新しい展開を予見するものなのか、大事な意味を持つ楽曲になりそうだ。

※1：https://charts.youtube.com/charts/TopVideos/jp/weekly