家入レオ、音楽で咲かせてきた鮮やかな花 貴重なセットリストで表現の核心に迫るツアー『bulb』開幕

家入レオ、ツアー『bulb』初日レポート

 家入レオの約1年ぶりとなる全国ツアー『家入レオ TOUR 2025 〜bulb〜』が10月24日、埼玉・戸田市文化会館 大ホールにて幕を開けた。

 “bulb(球根)”というタイトルが名づけられた本ツアーは、初のコンセプチュアルなツアーである。彼女が直近のインタビューで「ちょっと生々しくて毒も感じられるようなライブをお届けできたら」(※1)と語っていたように、球根が持つ「美しい花を咲かせるけれど、実は毒を秘めている」ことをテーマに、家入の表現の核心に深く迫るようなセットリストが組まれた。久しぶりに披露される楽曲も多く、オーディエンスの嬉しい歓声が響いた初日のレポートをお届けする。

【以下、ツアーセットリストの一部ネタバレあり】

 フラッシュのような照明の瞬きと、心臓の鼓動のような音が入ったSEと共にバンドメンバーと家入が登場すると、会場は大きな歓声と拍手に包まれた。オープニングを飾ったのは「雨風空虹」で〈現実を睨みつけた 私の中で 踊る心臓〉というフレーズを自由に力強く歌い放つ。七色のライトを浴びながら、会場全体の空気と音楽のすべてを自らがコントロールしているかのような堂々たる姿からは、確かな手応えと自信が感じられた。

家入レオ ライブ写真

 そんな躍動感溢れる1曲目から一転、シリアスな世界観の「もし君を許せたら」では、メロディと言葉を丁寧に慈しむように届け、会場の雰囲気をガラリと変える。最初のMCでは「熱気ヤバいですね!」と興奮気味に語りかけ、今回のツアーのコンセプトについて「コンプレックスや弱さに向き合って、球根に水をあげていったら大きな花が咲くと思うんです」と話した。それは、苦しみや痛みから逃げずに向き合って1曲1曲を生み出し、歌って表現しながら前に進んできた今の家入だからこそ伝えられるメッセージだった。

家入レオ ライブ写真

 そしてアルバムツアーではないからこその予測不能なセットリストはオーディエンスの心を踊らせ続ける。King Gnu 常田大希が楽曲提供した「Overflow」では、バンドの音に身を委ねながら家入が気持ち良さそうに熱唱すると、オーディエンスも大興奮。曲が終わると「レオちゃーん!」「カッコいい!」と歓声が飛び交い、彼女も「嬉しい! ライブに来てくれたみんなが“カッコいい!”と言ってくれるのが何よりの幸せなんで」と笑顔で応えた。

家入レオ ライブ写真

 ライブの中盤、「みんなが会場のどこにいても音ではゼロ距離でいたい。アコースティックなら心の距離も縮まるんじゃないかな」と言って、アコースティック編成で2曲を披露。バンドメンバーがピアニカ(鍵盤ハーモニカ)、カホン、アコギなどを演奏し、家入がその真ん中に座って披露されたのは「ラブレター」。観客は皆、左右に体を揺らして手拍子をしながら聴いている。その姿がとても愛らしく、ハートフルな空間だった。本人も「みんなの手拍子と一緒に歌うの好きかも!」と嬉しそうな表情を見せた。そしてオーディエンスを見渡して「ここで出会ってくれたことがすべて。初めましての人も全力でハグします!」と感謝の言葉を口にした。

家入レオ ライブ写真

 デビュー当時の彼女は、それこそ球根にある毒のような部分だったのかもしれないが、歌いながら自分の中にある何かと戦っているように見えた。だが、デビュー15周年という節目も見えてきた今は、咲かせた花を大切に愛でているように思える。このツアーで披露している曲は、どれも家入が懸命に水を注いできた音楽という結晶だ。そこにある葛藤や孤独や痛みは生々しいけれど美しく輝いていて、何より、こうして目の前の人たちと笑顔で向き合えているのは幸せなことだ。

 そんな、出会ってくれた人たちへの感謝を込めて彼女が選んだ曲は、「君がくれた夏」。透明感に満ちた歌声が途中でアカペラになる部分も鳥肌ものの感動を生み出した。

家入レオ ライブ写真

 終盤、「埼玉初日、アゲていける!? 盛り上がっていけますかー?」と煽ると、アッパーチューンを連発。デビューした2012年にリリースされた3rdシングル曲「Bless You」の〈愛なんていつも残酷で もう 祈る価値ないよ〉というフレーズが印象的に突き刺さる。その剥き出しの感情を今の彼女が抱き締めるように歌うから、こんなにも美しく愛おしく胸に響くのではないだろうか。本編ラストまで凄まじい熱気で盛り上がると、さらにアンコールでは、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN/TenTwenty)をフィーチャリングして先日リリースされたばかりの「Mirror feat.斎藤宏介」を、ひとりで歌いきる姿も見どころだった。

家入レオ ライブ写真

 全5公演で終わってしまうのが惜しいほど濃厚でコンセプチュアルな今回のツアー。彼女のこれまでの足跡と、豊かな表現力と、観客との幸福なコミュニケーションが見事に合わさって、かけがえのない「楽しい!」を生み出す。家入レオが音楽で表現してきたこと、そして辿り着いた現在地を確認するような、刺激と喜びに満ちたツアーが幕を開けた。

※1:https://realsound.jp/2025/10/post-2184700.html

家入レオ、対話するように届けた新たな光「Mirror」 斎藤宏介とのコラボから得た刺激も明かす

家入レオが、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN/TenTwenty)をフィーチャリングした「Mirror fea…

故・西尾芳彦氏は「人生に音楽の道を与えてくれた」 家入レオ、苦楽を共に過ごした恩師との思い出

音楽プロデューサーで作曲家の西尾芳彦氏が5月30日に逝去したことが発表された。1997年に福岡で音楽塾ヴォイスを設立し、YUIや…

■ツアー情報
『家入レオ TOUR 2025 〜bulb〜』
11月9日(日)[福岡] 福岡市民ホール 大ホール
11月24日(月・振)[愛知] 岡谷鋼機名古屋公会堂 大ホール ※SOLD OUT
11月27日(木)[東京]LINE CUBE SHIBUYA ※SOLD OUT
※終了公演は割愛。
詳細:https://www.leo-ieirimobile.com/news/detail/100559

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる