SWAY、アルバム『PSYCHO JUNK』――アイデンティティを探す旅を語る 40代の自分に渡したいバトンとは?

SWAY、アルバム『PSYCHO JUNK』の旅

ラップしててすごく疲れるな、って(笑)。「なんだ、この力み具合は?」みたいな

SWAY

――あと、前作との違いとしてラップのテンションや声のトーンがいい意味で抑制されていると感じました。熱くスピットするラップじゃなくて、ラップに力みがない。その変化によってミステリアスな雰囲気もあるし、落ち着きもあるし、エロティシズムも少し出ている気がします。

SWAY:なんですかね、大人になったんですかね(笑)。

――曲調も前回と違って、今回は力強さや迫力重視みたいな縦ノリではなく、横ノリが多くを占めているんですよね。ラップの変化はサウンドや曲調によって生じたことなんでしょうか、それともひとりのラッパーとして新しい表現方法、歌唱法を模索したかったんでしょうか。

SWAY:DOBERMAN INFINITYで10周年ライブをやって、過去曲をめちゃめちゃ歌ったんですけど、ラップしててすごく疲れるな、って(笑)。「なんだ、この力み具合は?」みたいな。最近の曲を歌うとそんなに体力を使わないというか、自分で言うのもなんですけど、ドシッと構えてる感がある。だから、自然とそういうところに落ち着いてきてるのかもしれないです。

――そもそもサウンドは今回どんな方向を目指したんですか?

SWAY:クラブでもっとパフォーマンスしたいので、クラブで鳴っても自然な音というところをすごく意識しました。音数は今後もっと少なくしたいし、聴く音楽も最近だいぶ変わってきているので、そういう部分も反映されてるかもしれないです。

――今回のアルバム制作でリファレンスにしたアルバムやアーティストはあるんですか?

SWAY:これというリファレンスは毎回設けていないんですけど、HIPHOPで言うと年代問わずウエストコーストのチルな感じとか、あとはアフロビートとか。そういうものを今自然と聴くようになってるんですよね。

――チルな嗜好と指向がラップのテンションの変化をもたらしたのかもしれないですね。

SWAY:そうだと思います。2010年代くらいまでは、ずっとNY側のHIPHOPをウォッチしていたんです。今もクラブでそのへんがかかるとめちゃくちゃテンションが上がるけど、車で聴く音楽とか家で聴く音楽が変わってきましたから。今回、Staxx Tと一緒に曲を作りましたけど、Staxxが作るApple Musicのアフロビートのプレイリストを共有してもらってるくらいですから。

――Staxxが作った「ちょっと強えエモーション feat. Staxx T」のビートはめちゃくちゃかっこよかったです。

SWAY:Staxxがアマピアノをやりたい、と。この曲は制作の終盤にできたんですけど、Staxxから今回入れる予定の曲を全部聴きたいとリクエストがあったので、Staxxの家に行ってデモ段階の収録曲を全部聴いてもらったうえで、「どんな曲をやろうか?」と詰めていって。で、こんなにもアフロビートの話をしてるんだったらそれはマストだなって。Staxxの意見も採り入れてできあがった曲ですね。

――とはいえ、「ちょっと強えエモーション」はアマピアノほどゆったりして流麗な感じじゃないですよね。パーカッシブな躍動感があって猥雑な感じもある。

SWAY:クラブでちゃんと機能するような攻めの音楽がアルバムのなかで足りなかったので、そこを意識して作りました。同業者にウケがよくて、この曲がいちばんいいと言ってくれる方が多いですね。

Taka Perryとの初タッグ、セッションから生まれた「またね」

SWAY「またね」Official Music Video

――MVが公開された「またね」では、プロデューサーのTaka Perryと初めてタッグを組みました。

SWAY:Taka Perryはオーストラリアに住んでいたんですけど、今年、日本に拠点を移したタイミングで「よかったらセッションしませんか?」とDMがきて。ぜひということでLDHのスタジオにきてもらったんです。昼頃スタジオに入って、夕方前にはセッションが終わったのかな。その時にできた曲なんです。

――リリックはどんなテーマで書いたんですか?

SWAY:これがテーマです、というのは正直なくて。「どんな曲作ります?」というところから、本当にゼロベースで始まったんですよ。Taka Perryが目の前でトラックを作り始めて、ある程度ビートができた時に、僕もそのテンポでリリックを書き始めて。

――ビートを聴きながらイメージを膨らませていった、と。

SWAY:毎日のように入っていたスタジオに小さな部屋があるんですけど、そこから思いついた〈アガレ In da room〉というフレーズがメモ帳のいちばん上にあったんです。それで自分を中心に世界が回っているということをなんとなくテーマにしながら、トラックができた時に自分のリリックも「できました!」という状態にしておきたかったら、韻を考えて言葉を出してバースを書いていって。お互いにできあがったタイミングでバースをまず録って、サビはどうする?ってふたりで鼻歌を歌いながら考えていたときに、最初に「またね またね」という部分ができた。そしたらTaka Perryが「Another day another day」と返してくれたから、「めっちゃいいじゃん!」みたいな。初めましてのふたりがひとつの部屋で面白いことをやってるなと思いながら、そのウキウキ感を膨らませていった感じですね。

――それぞれの道を頑張る者同士のエール交換のようにも聴こえたし、一期一会を大切にしたいというメッセージも含んでいるようにも感じました。

SWAY:そうですね。自分がクラブに行ったら誰かに会って、気づいたら酔っ払って肩組んでる、みたいな。そんなことが自分の人生では多々あるんですけど、今回はそういう感覚を全体通して重視していたところはありますね。

――テーマといえば、「レスリーチャウ feat. Ashley」は、どこから発想したんですか?

SWAY:レスリーチャウは、『ハングオーバー!』という映画のシリーズに出てくる、全部かき乱していく中国人のキャラクターの名前です。“レスリーチャウ”という文字が僕のメモ帳に5年以上ありまして(笑)。

――長いこと温めてましたね(笑)。

SWAY:「DOBERMAN INFINITYで作れるかな?」と思いながら、ずっと時を待っていたんですけど、「何なんそれ?」って言われるだろうなと思って切り出せず(笑)。次は(トラックメイカーの)SUNNY BOYとスタジオに入った時に「『レスリーチャウ』っていう曲を作りたいんだよね」って行ったら「ははは。で、さあ――」と流されたので、ここもダメか、と。そんなある日、自分がやってるHARLEMのイベントにAshleyとLUNA姉が遊びにきてくれて。Ashleyとは以前にクラブで知り合っていたから、3人で曲をやろうよと立ち話をしていた時に「『レスリーチャウ』って曲を作りたくて」と言ったら、初めてLUNA姉が「よし、やろう!」って引き受けてくれて。

――やっとわかる人が現れた(笑)!

SWAY:そう(笑)! Ashleyは全然知らなかったんですけど、あの子はよくも悪くもテキトーなので、「いいじゃないすか。やりましょ、やりましょ!」って。そんなノリからできたんです。

――じゃあ、テーマは「場をかき乱すヤツ」。

SWAY:あるいはトラブルの元凶とか。「誰がレスリーチャウか?」って言いながら、結局自分たちだったっていう話です(笑)。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる