友希、i☆Risとソロの狭間で揺れた想い 一度諦めたシンガーソングライターの夢ーー念願の1stアルバムに詰め込んだ情熱

「THIS IS ME」は“若井友希”と“友希”がちゃんと手を取り合えた

ーー制作過程での起爆剤になった曲はありましたか?
友希:リード曲になっている「THIS IS ME」だと思います。これはゼロの状態からレフティさんといろんな話をしながら作っていったんですけど、私のなりたいシンガーソングライター像は自分のできることを追求しまくって“音楽エイリアン”みたいになることなんじゃないかなっていう結論に達して。そこで、この曲には自分の持っている武器を全部入れ込んでみようっていうことになったんです。要はシンガーソングライターとして大事にしてきたことはもちろん、声優アイドルとして培ってきたものすらも全部混ぜこぜにしてみようということで。曲の中で楽器も自分で演奏するし、ダンスもするし、表現として芝居要素を入れてみたりもする。そういう今までに手に入れてきた自分の武器を活かすことで、他にはない女性シンガーソングライターになれるんじゃないかなって。
ーーなるほど。これまでの友希さんはシンガーソングライターとi☆Risの活動を切り離すことに注力してきたけど、そこを混ぜてしまってもいいんじゃないかなと。
友希:そうですね。それが「THIS IS ME」という曲でできたことで、今までは絶対に交じり合わないだろうと思っていた若井友希と友希がちゃんと手を取り合えたんですよ。ある意味、シンガーソングライターとしての足枷にもなっていた若井友希という存在を全部認めてあげられた気もしたし。この曲が生まれたことは自分にとって本当に興奮する出来事でしたね。
ーーこの曲での気づきは友希さんの未来を照らしてくれるはずですしね。
友希:本当にそう思います。実は、この曲の制作はすごく大変ではあったんですよ。合宿中には完成までこぎつけられなかったくらいなので。でも苦労したからこそ、刺激的な制作だったし、鍛えてもらえた実感もあるんですよね。他の曲も含めてですけど、今回の制作では自分のできないこと、足りない部分もあらためて知ることができたんです。だからこそ今まで浮かばなかったような「もっとこうしたい!」という気持ちも出てくるようになって。そういう意味で、ちゃんと今後が見える、今後に繋がるアルバムになったのが一番うれしいですね。
ーー新たな挑戦で言うと、海外のクリエイター陣とコライトして生まれた「Cut the rope」という曲もありますね。
友希:この曲はリファレンスとなる曲を用意した上でロンドンに行って、向こうのトップライナーの方と一緒に制作をさせてもらいました。海外のトップライナーがどういう制作スタイルでやっているのかは全然知らなかったんですけど、実際向こうに行ったら私がレフティさんとやっているのと同じスタイルだったんですよ。用意してもらったトラックの上に、その場で浮かんだメロディを乗せていくというやり方で。「このやり方なら全然ついていけるぞ!」と思って嬉しくなりました(笑)。
ーーじゃあ現場では友希さんも積極的にメロディのアイデアを出していったわけですね。
友希:はい。私も1人のトップライナーとして戦ってやろうと(笑)。トラックを流しながらのカラオケ大会みたいなのが始まり、それぞれがメロディを出していくんですよ。「次、私が行きます!」「それいいね」みたいな感じで、私のメロディを採用してもらえたところもあって嬉しかったです。完成までのスピード感は私1人でやるときよりも全然早かったし、自分からは出てこないトップラインばかりだったので、本当に刺激を受けまくりな経験でしたね。
ーーこの曲は全て英語詞になっていますよね。
友希:歌詞もメロディと同じ日に全部書いたんですけど、まずは私が日本語で自分の言いたいことをお伝えして。それを元に英語の歌詞にしてもらった感じです。その過程では、「その言葉だとちょっとネガティブだから、もうちょっとポジティブにしたいです」とか、自分の思いとズレがないようにはしてもらいましたね。Google翻訳を駆使しながら(笑)。そういうやり取りはめっちゃ楽しかったです。今後も海外でいろんな人と書いてみたいってすごく思いました。

ーーこの曲を筆頭に、アルバムには洋楽的なニュアンスを感じさせる曲が多い印象もありました。そのあたりはご自身のルーツが影響しているところなんですかね?
友希:その影響はあると思います。私はちっちゃい頃から家族の影響で洋楽をたくさん聴いてきたんですよ。さらに2000年代にはアヴリル・ラヴィーンさんをきっかけにパンクロックを、クリスティーナ・アギレラさんとかいろんなR&Bも聴いていたので、そこらへんが自分のルーツになっているなって思う。それを投影した曲が今回の『Main Dish』には多くなってますね。
ーーだからでしょうね、「Cut the rope」で聴かせてくれている英語での歌唱もすごくなめらかですもんね。発音がめちゃくちゃいいし。
友希:えー、嬉しい! もちろんイングリッシュディレクターの方が入ってくださっていたし、「Cut the rope」を一緒に作ってくれたタリア(TALIA DUSSEK)ちゃんが歌ってくれた仮歌を一生懸命マネして歌ったんですけどね。まあでも、学生時代から洋楽が好きで歌っていたので、普通の人よりは歌い慣れているところもあるのかもしれないですね。この曲は今までで一番上手く歌えました(笑)。
ーーあとアルバムの中で唯一、作詞を他者に委ねたのが「遺言」です。黒木渚さんが歌詞を書かれていますが、これはどうしてだったんですか?
友希:この曲では、私の中にある悩み抜いてきた強い思いを歌いたかったんですよ。でも、その思いはファンの方に言いたかったけど言えなかったことでもあったので、どうしても自分の言葉で書く勇気がなかったんですよね。なので今回は黒木さんにお願いして、私の気持ちを代弁してもらうことにしたんです。歌詞を書いていただくにあたっては、事前に黒木さんといろんなお話をさせていただいて。黒木さんには「私が書くから友希ちゃんのせいにはならない。大丈夫だから、全部吐き出しちゃいなよ」って言っていただいて。結果、私のド黒い部分を上手く表現していただくことができました(笑)。
ーー「遺言」というタイトルにドキッとさせられますけど、ここで歌われているのはシンガーソングライター・友希としての、未来に向けた覚悟でもありますよね。
友希:ファンの方に対して、「ここからの私を受け入れてくれなきゃ許さないからね」みたいな感じで、ある意味、ケンカ売ってる感じがありますよね(笑)。もちろん、そこには感謝の気持ちも込めていますけど。今までウジウジしてた自分に対して、ここで一度ピリオドを打ち、ここから私は生まれ変わるからお前らもついてこいよっていう。今までの自分に対しての「遺言」っていう意味ですね。


















