友希、i☆Risとソロの狭間で揺れた想い 一度諦めたシンガーソングライターの夢ーー念願の1stアルバムに詰め込んだ情熱

i☆Risメンバーの若井友希が、ソロ名義“友希”として1stアルバム『Main Dish』を10月29日にリリースする。同作はRyo'Lefty'Miyataをプロデューサーに迎え、彼女自身も作詞や作曲に参加する意欲作。アルバム制作にあたってクラウドファンディングを行い、達成率388%を記録するなど、i☆Ris結成前からシンガーソングライターを目指していた友希にとって、ファンと共に作り上げたメモリアルな作品になった。
声優アイドルとして活動するなかで、シンガーソングライターとしての夢を一時は諦めたという友希。彼女がなぜ再び夢へと向かって歩き出したのか。念願の1stアルバムに込めた想いを聞いた。(編集部)
友希として認識してもらうことが本当に難しくて

ーー友希さんは声優アイドルグループ・i☆Risのメンバーとして2012年にデビューされましたが、幼い頃からシンガーソングライターとして活動したいという夢を持っていたんですよね。i☆Risとして活動してきた約13年の間、その夢とはどう向き合ってきたんですか?
友希:i☆Risとしてデビューをしたときに、「あ、私はシンガーソングライターになる運命じゃなかったんだな」「『声優アイドルとして生きろ!』と神様に言われているんだな」って思ったんですよ。それはある意味、諦めではあったんですけど、でもそこに悔しさはあまりなかったというか。当時はどんな形であれメジャーデビューしたいという気持ちが強かったし、音楽で生きることができるんだという喜びの方が大きかったから、まずは目の前のことを必死に、がむしゃらにやっていこうと。ただ、声優アイドルとしての活動が長くなってきたことで、ふと自分自身のことを考える時間も増えてきて、「私、このままでいいのかな?」っていう気持ちがだんだん芽生え始めたんですよね。それが2017、18年くらいかな。そのときにスタッフさんとかも「友希はソロをやった方がいいよ」って背中を押してくれていたりもしたんですよね。
ーーそこで幼い頃からの夢がまた湧き上がってきたわけですか。
友希:そうですね。元々、シンガーソングライターをやりたかったわけだし、曲が作れるという自分のスキルを活かさないのは絶対イヤだなと思って。で、2019年からソロのシンガーソングライターとしてワンマンライブをやるようになったんです。ただ、いざ始めてみると最初はi☆Risの若井友希ではなく、シンガーソングライターの友希として認識してもらうことが本当に難しくて。どうしてもi☆Risの枠から抜け出せない状況に打ちのめされることが多かったんですよ。それによって「私にはムリなのかな」って諦めかけた時期もありました。
ーーそれでも友希さんはソロ活動を地道に続けられ、2021年からは自作楽曲も続々配信リリースするようになりました。
友希:曲を書く自分をどうしても捨てることができなかったんですよね。そこには強いプライドもあったから。ソロとしてもアニソンアーティストをやろうと思った時期も正直あったんです。i☆Risを通して私を知ってくれた人はアニソンが好きな人も多かったから、ソロとしても同じ方向の方が認めてもらえるんじゃないかなって。でも、やっぱりそれは違うなと思った。i☆Risの存在は私の大きな軸であり、ホームみたいなものなんですよ。私のことをここまで連れてきてくれた大切な場所。だからこそ、ソロではi☆Risの世界観とは違う、自分が本当にやりたいことをちゃんとやるべきだなって。誰にどう思われてもいいから、自分が一番いいと思える音楽をやり続けるべきだなって思うようになったんですよね。いまだにソロとしての難しさを感じることは多いですけど、頑張って続けて来てよかったなって今は思っています。いろんな思いを抱えながら、だいぶ回り道しまくりましたけどね(笑)。
ーーそんな友希さんが今回、ソロとして初めてのアルバム『Main Dish』をリリースしました。様々な思いを抱えながら歩んできたソロ活動だけに、感慨深いものがあったんじゃないですか?
友希:そうですね。私としては、アルバムを1枚出してこそアーティストとしての土俵に立てるという感覚があるんですよ。アーティストとして生きるならアルバムを出すべきだと。しかも、ちゃんと形の残るCDとしてもリリースするということにもこだわりたかったんですよね。で、そんなアルバムを出すのならば、自分が30歳になろうとしている今のタイミングが一番いいだろうということで。
ーークラウドファンディングを行い、ファンを巻き込んで1stアルバムを盛り上げようと思ったのはどうしてだったんですか?
友希:どうせ作るなら普通に作るのではなく、何か大きなエンタメにしたいなと思ったんですよね。そんな時、i☆Risメンバーのさきさま(山北早紀)が以前30歳のタイミングでクラファンをしていたことを思い出して。「そっか。私のアルバムを一番待ち望んでくれているファンの方々と一緒に作ればいいのか!」と思い、クラウドファンディングをすることに決めました。
ーー結果、達成率388%というものすごい数字が。それだけファンの方々が待ち望んでいたということなんでしょうね。
友希:私もほんとにビックリしました。みんなの期待が数字に表れる喜びを心から感じることができましたね。参加してくれたみんなには本当に感謝しています。
ーーアルバムの内容に関しては、ご自身の中に明確なイメージはあったんですか?
友希:入れたいなと思う曲はいくつかあったんですけど、基本的にはまっさらな状態で制作をスタートさせた感じでした。サウンドプロデュースをしてくれているレフティさん(RYO’LEFTY’MIYATA)から、「合宿で一気に作っちゃえば?」っていうアイデアをいただけたのが大きかったですね。私自身、今までに制作合宿をした経験がなかったし、クラファンで合宿見学プランを用意したことで、ファンの方にも意味のあるものになったと思うので。合宿では、私がデモを持っていくものと、その場でゼロからレフティさんと一緒に作っていくものの2パターンがありましたね。


















