DOES、『銀魂』との出会いが運んだバンドの転機 「修羅」からブレない曲作りの美学

DOES、「修羅」制作秘話

「自分が思うかっこいいものさえあればいい」

DOES

ーーDOESが活動休止をしてから最初にやったライブも『銀魂』のイベントでしたし、TVアニメが終わったあとも、引き続きDOESと『銀魂』は深い関係性を築いてきました。

氏原:「道楽心情」(映画『銀魂 THE FINAL』挿入歌)もね。僕ら、再始動してフリーでやるようになったんですけど、「道楽心情」がオリコン週刊ROCKシングルランキングで1位を取って。1位なんて、勉強でも取ったことなかった。それがいちばん好きな音楽で、しかもちょこっとだけLiSAさんを抜いて(笑)。

赤塚:あの牙城を(笑)。

氏原:休止明けで、フリーなのにこんなバンドいねえぞ、やっぱりうちら変だなって思ったんです。オリコン1位取ったからって、別に武道館でやったこともねえし、小さいところでガシガシやってきたし。でも、もっと人が来てくれてもいいのになって思うんですけどね。なんかわかりにくいのかな。パンクなのか、オルタナなのか、邦ロックなのか、ポップなのか、アニメなのかよくわからんみたいな。

ーーそれがDOESのいいところ、おもしろいところですけどね。

氏原:オルタナティブのオルタナティブやってるんで、僕ら。「修羅」「曇天」「バクチ・ダンサー」って結構、三種の神器みたいになっちゃってるけど、やっぱり自信があるんですよ。言っちゃうけど、全世界で俺しかできないなって。最近はそこまで思えるようになってきました。「修羅」もそうだけど、「曇天」のイントロとか、あんな簡単なのを勇気を持って世界に出した俺、自分で自分を褒めてあげたいです。

ーーマラソン選手の名言が出ました。

赤塚:あんな1コードで、堂々とね。

ーーメジャーから出るアニメタイアップ曲としては、確かにかなりソリッドですよね。

氏原:普通は「鍵盤入れないの?」「クリック入れないの?」ってなる。でもそこは任されてたっていうか。アートロックも好きだったんで、あえてないものを作りたい。これは今でも変わってないんですけど、どっかで聴いたことあるような、茶の二番煎じみたいなのやってもしょうがないじゃないですか。せっかくお父さんとお母さんから生まれて、1人の人間としてこの世界に生きてるんだもの、俺しかできないことやりたい。ならば、人に合わせない。流行ってるものにも合わせない。流行りはめちゃくちゃ聴くけど、聴くからこそできるんですよ、合わせないことが。僕、音楽に超詳しいんで。セルジュ・ゲンズブールからジャズから、なんでも聴いてフレーズとかだいたい頭に入ってるから、「これは他にない」と言うのが出せるんですよ。じつは俺の曲作りってそうなの。だから他の人にはできないんだよ。これはもう今だったら自信持って言える。

ーー天然じゃねえんだぞっていう。

氏原:めっちゃ緻密に考えてる。だからモダンって言ってくれたのがすげえ嬉しいんですよ。

DOES

ーーそれは、たとえばVelvet Undergroundに今もモダンさを感じるのと一緒ですよね。

氏原:一緒のことですね。「Sunday Morning」のリフとかめっちゃかっこいいじゃん。でもそういうのって邦ロックにはないんですよ。そこにピンとくる人ってまあクオンティティが少ないというか。まあしょうがないけど俺はピンと来ちゃう。みんな右に行こうとしたら左に行くもん、絶対に。上に行こうとしたら下に行く、前に行こうとしたら後ろに行くから。インテリアにしても建築にしても、見方がちょっと違うというか。(ル・)コルビジェはめちゃめちゃいいけど、ニトリがなぜいいのかも、コルビジェが分かればわかるわけですよ。ユニクロもそうで、いろんなおしゃれにも興味あったから、ユニクロの良さがわかるんですよ。わかるからこそ、俺はユニクロはやらなくていい。混ぜれるし、単独でもいけるし、そういう作り方をしてきました。

森田:だからナチュラル天邪鬼なんですけど、でもある意味、分かりやすいっちゃ分かりやすい。

氏原:いや、分かりにくいんだよ。分かりにくいことを分かりやすくやってるんだよ。

ーーでもスタンスは明確ですよね。ただやること、次に何をやるかはまったくわからないっていうか。

氏原:だから客が来ない(笑)。

ーーと言いますけど、少なくとも「修羅」や「曇天」は、その超オリジナルな音楽が、世界に広がるっていう状況を生んだわけで。すごいことだと思います。

氏原:今となっちゃね。バーとかで飲んでて、「何をやられてるんですか?」とか聞かれて「『銀魂』って知ってる? 『曇天』、僕が作ったの」って言うと「えー、めっちゃ好きです!」って。あー、俺のこと知らねえんだ、みたいな。

ーー『銀魂』の曲としての「曇天」は知ってるけど、DOESは知らない。それはどうなんですか?

氏原:全然それでいいです。だってミュージシャンなんて曲聴いてくれて、楽しんでくれたら完璧なんで。顔なんかいいよ、別に見なくて。でもライブには来てね、みたいな。

ーーそういえばこのあいだ、漫画『ふつうの軽音部』で「曇天」が登場していましたよね。

森田:嬉しかったね。びっくりした。

DOES

ーー実際、高校の軽音楽部でDOESをコピーしてる人ってたくさんいるんでしょうね。

氏原:めっちゃ簡単なんでね。Nirvanaの「Smells Like Teen Spirit」なんて、たった4コードで人類ナンバーワンのロックソングになっちゃったじゃないですか。そこに勇気もらって、「修羅」とかを作ったと言うのもあるんです。コードがあれば大丈夫、あとなんかかっこいい感じをイメージするだけでいい。あれがこうだからこうとかじゃなく、なんか自分が思うかっこいいものさえあればいい。うまく言えないけど、その感じだけでやってきてるんだよね。

ーー今お話を伺ってなるほどなって思ったのは、常に「この曲で何をやりたいのか」「どういうとこ目指したいのか」っていうものが、はっきりとあるんでしょうね。

氏原:そうですね。なんとなくその時節時節でモードがあって、流行ってる音楽を聴いたり、昔の音楽を聴いたり、自分の中で流行ってる何かに寄ってはいくんですが、いざ自分でやっていくと、そこから研鑽が入っていくんです。それで洗練させていったらなんか別のものができた。これはつまり自分なんだなっていう。他にも全然似てないし、質感とか。じゃあこれだろみたいな。

ーーそれが達成できるかできないかが問題であって、売れる売れないとかは……。

氏原:売れる、売れないとか、あまり考えたことがないんで。別にDOESじゃなく、俺らが演奏して歌うのでなければ、売れそうな曲も作れるわけですよ。けど、この3人でやって俺が歌うならあれじゃないよねって。そうやってないものねだりみたいな感じで別のものを作るからめんどくせえんですわ。

赤塚:(笑)。

氏原:すげえ、めんどくせえ。130曲くらい出してるからさ。今、デジタルからアナログへの回帰みたいなのが来てる中で我々がどうやるか、90年代リバイバルも今あって、90年代がドンズバ青春だった我々はどうあるべきか。そのままやればいいんだろうけど、考えるのが仕事だし。今、四苦八苦しながら新曲作ってるけど、まあ遅い。何でもいいなら作れるんだよ。でも何でもよくねえんだよな。

ーー正直、なかなか新曲が出ないなあ、と思っていました(笑)。

氏原:ほとんどサボってるのもある。酒ばっかり飲んで。あとは、僕らも48歳で、もうすぐで50なんで。いい年齢になってもかっこよく収まるようなやつを模索してるんですよね。

ーー来年は20周年ですもんね。

氏原:20周年なんでやっぱ、新曲出さなきゃなって。

森田:でも、よく20年やれてるな。

氏原:びっくりだよ。

赤塚:きついよね、体が(笑)。

氏原:全然きつくない。ジョギング、筋トレ、納豆をやってるから。

赤塚:納豆? ドーピングみたいに?

ーーでもまったく変わらないですよね。

氏原:変わりましたよ。ケーサクは顔がでかくなった。

森田:それなりにね(笑)。

氏原:まあでも、メジャーでガシガシやってた時よりは気楽に音を楽しめてるというか、そんな感じはありますけどね。あの頃はがむしゃらにただやってるだけだったから。

森田:何かと戦ってたよな。

氏原:そのよさもあるんですけどね。戦わなくてもよくなったというか。戦いは若者がやってくださいって。おじさんはゆっくり、そのうち盆栽でも始めます(笑)。

■リリース情報
DOES『修羅』
2025年10月22日(水)発売
【完全生産限定盤】7インチアナログレコード
品番:MHKL-103 価格:2,800円(税込)

<収録内容>
SIDE A:修羅
SIDE B:ワインディング・ロード
購入:https://does.lnk.to/shura_7inLP

■ライブ情報
DOES Tour 2025-2026『独歩行脚~列音亜細亜篇~』
2025年10月09日(木)愛知県・CLUB UPSET
2025年10月10日(金)大阪府・梅田Shangri-La
2025年10月26日(日)福岡県・LIVE HOUSE OP’s
2025年11月07日(金)東京都・下北沢Shangri-La
2025年11月19日(水)中国 広州 Mao Livehouse
2025年11月21日(金)中国 上海 Modern Sky LAB
2025年11月23日(日)中国 北京 1919 LIVE HOUSE
2025年12月11日(木)北海道・札幌 BESSIE HALL
2025年12月22日(月)宮城県・LIVE HOUSE enn 2nd
2026年01月11日(日)台湾 台北 THE WALL MUSIC
2026年01月17日(土)韓国 ソウル WEST BRIDGE

DOES | Official Website:https://www.doesdoesdoes.com/
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