Mrs. GREEN APPLE、自己も他者も包容する覚悟 「GOOD DAY」が10周年の“集大成”である意味

 「MGA MAGICAL 10 YEARS」と題してデビュー10周年のアニバーサリーを駆け抜けてきたMrs. GREEN APPLE。10月25日から5大ドームツアー『DOME TOUR 2025 "BABEL no TOH"』が開幕、11月28日からドキュメンタリー映画『MGA MAGICAL 10 YEARS DOCUMENTARY FILM ~THE ORIGIN~』とライブフィルム『MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~ ON SCREEN』が同時公開と、今後も様々なトピックが控えている一方で、10周年を締めくくる展覧会「MGA MAGICAL 10 YEARS EXHIBITION『Wonder Museum』」を12月から2026年3月にかけて東京・福岡・大阪で開催することも発表され、いよいよフィナーレが見えてきた。

 改めて振り返ると、本当にマジカルな1年だった。ライブやイベントはもちろん、リリース面もかなり充実していた。昨年彼らは5カ月連続新曲リリースでファンを驚かせたが、今年はそれを上回る6カ月連続新曲リリースを敢行。その勢いにファンも圧倒されたのではないだろうか。

6カ月連続新曲リリース、怒涛の軌跡

 6カ月連続リリースの口火を切った曲、4月リリースの「クスシキ」は、TVアニメ『薬屋のひとりごと』第2期第2クールのオープニングテーマとして書き下ろされた。二胡や琴などを使用し、アニメと通ずるオリエンタルなカラーも取り入れたマスロック調のアッパーチューンだ。バンド初期を彷彿とさせるスタイルが現在の彼らの技術で再構築されており、周年のタイミングでリリースされた意義も大きかった。

Mrs. GREEN APPLE「クスシキ」Official Music Video

 5月にリリースされた「天国」は、大森元貴(Vo/Gt)が菊池風磨(timelesz)とともに主演を務めた映画『#真相をお話しします』の主題歌。人間の暗部を容赦なく描き、希望も答えも提示しないまま終わるのが鮮烈で、人気絶頂のアーティストが放つには、あまりにシリアスで重厚なバラードだった。しかしメガヒットを連発し、ポップスターとしてのMrs. GREEN APPLEのイメージが最大化されている今だからこそ、この曲を世に問う意味があると大森は判断したのだろう。MVの内容、音楽番組やライブでのパフォーマンスも含め、リスナーの間で様々な議論を呼んだ。

Mrs. GREEN APPLE「天国」Official Music Video

 大森のソロシングル『絵画』のリリースを経て、6月に配信された「breakfast」は、情報番組『サン!シャイン』(フジテレビ系)のテーマソングとして日本の朝を彩った。4つ打ちを基調とした軽快なサウンドに乗せて、彼らは、矛盾や無力さも含めた“人間”そのものを見つめ、〈とりあえず今日を生きよう〉と語りかける。朝食という日常的な行為に自己受容を重ね、ミセスらしい人間観を土台に、決して甘美ではないセルフケア論が展開された。「ダンスホール」以来約3年ぶりとなるダンスMVも反響を呼んだ。

Mrs. GREEN APPLE「breakfast」Official Music Video

 ベストアルバム『10』をリリースした7月には、「Carrying Happiness」が配信された。この曲は、東京ディズニーリゾートの夏のイベント『サマー・クールオフ at Tokyo Disney Resort』のテーマソングとして書き下ろされたもの。ミセスは日本人アーティスト初となる東京ディズニーリゾートのアトラクションとのコラボを果たすとともに、バンドの音楽性を更新する曲を生み出した。〈世界はHappinessで満ちてる〉という言葉は、ミセスとディズニーに共通する理念。表面的なポジティブさではなく覚悟を伴った肯定、きっとそうであれと信じる気持ちが歌われていた。

 8月のお盆の時期には、キリン 午後の紅茶のCMソング「夏の影」がリリースされた。夏の昼間に外に出るのは危険だと言われるようになって久しいが、この曲では、失われつつある古き良き“日本の夏”が描かれている。“もののあはれ”的な美意識の下、穏やかに、ゆったりとしたテンポで歌われる夏の情景に、リスナーは現代社会では得難い癒しを感じたことだろう。代表曲「青と夏」とは異なるカラーを持つ、新たな夏曲の誕生だった。

Mrs. GREEN APPLE「夏の影」Official Music Video

 そして9月28日、キリンビールの新ブランド・キリングッドエールのCMソングである「GOOD DAY」がリリースされた。スラップベースとサックスが効いた軽やかなサウンドは、どこかシティポップを思わせる風通しのよさ。即興セッションなど偶発的な要素も多かった定期公演『Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”』以降のバンドのモードを感じさせるアンサンブルだ。ボーカルも歌い上げるタイプではなく、聴き手の心に寄り添うように響いている。特にファルセットをメインとしたサビの浮遊感は心地よい。〈LaLaLa…〉のコーラスパートはつい口ずさみたくなる親しみやすさで、老若男女が安心して触れられる爽やかな楽曲に仕上がった。

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