吉柳咲良「私にはネガティブなことも絶対必要」 「Bad Gyal」にも表れる“強さ”の根源を語る

吉柳咲良が、約1年ぶりとなる新曲「Bad Gyal」をリリースした。
吉柳は俳優としてドラマや舞台の話題作に立て続けに出演するなか、昨年4月に「Pandora」でアーティストデビュー。音楽活動においてはRyosuke“Dr.R”Sakai&麦野優衣とともに制作したエッジの効いた音楽に乗せ、彼女の内面の強さを提示してきた。今作では〈どうせこの世界はcrazy〉〈なら楽しむだけbaby〉と力強く言い放ち、前へ前へと自身の道をまっすぐに突き進む様子を歌い上げている。また、楽曲が持つパワーを表現するかのように、総勢50名のダンサーが参加したMVも圧巻だ。
そんな「Bad Gyal」で歌われる吉柳咲良の強さとは、どこから湧き上がってくるものなのだろうか。同曲の制作エピソードと共に、彼女の中にある信念や生き方について語ってもらった。(編集部)
不確かさがむしろおもしろいと思うし、それこそが人生

ーー約1年ぶりの新曲となる「Bad Gyal」がリリースされて少し時間が経ちましたが、反響はいかがですか?
吉柳咲良(以下、吉柳):「リリースしてきた曲の中で『Bad Gyal』が一番好きです」って言ってくださる人や、「この系統で突き進んでほしい」って言ってくださる人が多かったです。逆に「今度はしっとりとしたバラードを聴いてみたくなった」っていう声もありましたし。今回の曲のテーマは、“強さ”や“開放”みたいな部分をメッセージとして込めたので、「この曲を聴いているときは、すごく自分に自信が持てます」という反応をいただいたときは特に嬉しかったですね。私が伝えたかったことをちゃんと汲み取ってくれているんだなと実感できたので。
ーーアーティストデビュー当初は、俳優業での表情とのギャップから、楽曲のテイストに驚きを感じたリスナーも多かったと思うんです。でも、リリースを重ねてきたことでアーティスト・吉柳咲良のスタイルが徐々に浸透してきたところもありそうですよね。
吉柳:そうですね。「アーティスト業ではこういう表情を見せるんだね」ということが、ファンのみなさんにもわかってもらえるようになってきたというか。その上で、「じゃあ次はどんなテイストなんだろう」とか「何がテーマなんだろう」とか、すごいワクワクしてくれている感じがします。私のテイストを理解してくださる人が増えている状況は本当にありがたいですね。
ーーアーティストとしての活動が俳優業にもフィードバックしているような印象も受けます。音楽を愛し、高い歌唱力を持っている咲良さんだからこそ演じることができる役柄が多いような気がするんですけど、ご自身ではどう感じていますか?
吉柳:確かに朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)でも歌う役でしたし、ミュージカルの『ロミオ&ジュリエット』や実写版『白雪姫』の日本語吹き替えもありましたからね。そういった作品をきっかけに私のことを知ってくださった方が、アーティスト活動をチェックしてくれることもすごく多くて。そこではまた180度違った歌を歌う吉柳咲良を見せることができているので、自分としてはすごくいいバランスが生まれているような気がします。いいギャップとしてみなさんが受け取り、楽しんでくれているのも感じられていますし。
ーーユーザーはもちろん、業界的にも咲良さんの音楽愛が認知されている部分もあるでしょうしね。
吉柳:あ、それこそ今、舞台『チ。-地球の運動について-』の稽古中なんですけど(取材は10月頭に実施)、スタッフやキャストのみなさんは私がミュージカルをやっていたことや、アーティストとして楽曲をリリースしていることを知ってくださっていて。稽古の途中で森山未來さんや成河さんが「どうする? 歌う?」「ここで1曲入れてもらう?」みたいな話をしてくださって。
ーー稽古の現場で急遽、歌うことが決まったわけですか!
吉柳:そうなんです。元々は歌うシーンはなかったんですけど、1曲歌うことになりました(笑)。ほんとにありがたいことですよね。
ーーすごくいい状況ですね。では、新曲「Bad Gyal」について詳しく伺っていこうと思います。制作はいつ頃、行われたんですか?
吉柳:制作自体はもうだいぶ前で、2曲目の「Crocodile」(2024年8月30日リリース)の後に作った曲ですね。去年にはもう出来上がってました。まだあと4曲くらいストックがある状態なんですけど。
ーー「Crocodile」でインタビューさせていただいたとき、「次は聴き手に手を差し伸べられるような曲を歌いたい」といったことをおっしゃっていて。今回の「Bad Gyal」はまさにそういった楽曲になっていますよね。
吉柳:前回、取材していただいたときにはもう「Bad Gyal」が出来上がっていた状態で、次はこれで行こうと決めていたんですよ。なので、予告的な意味合いの発言でした(笑)。
ーーなるほど(笑)。今回は具体的にどんなイメージを持って制作をスタートさせたんですか?
吉柳:二十歳を過ぎたので、女性としての色気を出したい気持ちがあったんですよね。ただ、「強さは絶対になくさないほうがいい」という(Ryosuke“Dr.R”)Sakaiさんからの提案もあったので、トラックはその両方を込めたものになりました。その上で、私はさなぎが成長し、自分の力で羽ばたいていく蝶の姿に憧れがあるんです。なので、そういったイメージをお伝えしながら、Sakaiさんや麦野優衣さんと一緒に歌詞を書いていった感じでしたね。

ーー生きている中で他者から手を差し伸べられることは多々あるけど、それをどう受け取り、どう羽ばたいていくかは自分自身でしかないというメッセージが胸に響きます。
吉柳:誰かが手を差し伸べてくれたとしても、その善悪は不確かなものだし、それを良いものにできるのは自分次第でしかないですからね。もちろん自分で判断しても、常にいい方向に進むかもわからない。その不確かさがむしろおもしろいと思うし、それこそが人生だって私は思うから、そんな思いを込めました。
ーーこの曲自体が聴き手に対して直接的に救いの手を差しのべるというよりは、自分らしく生きるためのヒント、きっかけを与えてくれている印象ですよね。
吉柳:そうですね。そんな曲になったら一番いいなと思っていたので。たとえ間違った道を選んでしまったとしても、その先に正解があるのであれば、一度間違いを経由することにも意味が生まれるわけじゃないですか。要は前へ進むことを諦めなければ、その先にはきっと何かいいことが待っているはず。そんなメッセージを感じてもらえたら嬉しいですね。
ーーSakaiさんの手によるトラックにはどんな印象を受けましたか?
吉柳:もう出だしからかっこいいですよね。「Pandora」(1stデジタルシングル。2024年4月21日リリース)と「Crocodile」、それぞれの良さを併せ持ったようなかっこよさ。さらに今回はそこに私が欲していた女性らしさみたいな部分もしっかりのせてくださっていて。私の中にあるイメージをほんの一言、伝えただけで、なんでここまで世界観を膨らますことができるんだろうって、あらためてSakaiさんの凄さと、音楽が持っている無限の可能性を教えてもらえた気がしました。Sakaiさんはほんとマジシャンみたい。毎回、ものすごい手品を見せてもらっている気分です。

ーーそこからみんなでメロディのアイデアを出し合い、のせていくわけですよね。
吉柳:そうですね。Sakaiさんや麦野さんと一緒に、メロディを出し合いながら回していきます。最近は私が最初にメロディを出すようになったんですよ。最初の頃は、みなさんにアイデアを出してもらい、考える時間をもらってから自分も参加する流れだったんですけど、今は「一発目に行け」と言われるようになって(笑)。毎回、そこでどれだけ対応できるかが勝負ですね。
ーー制作を重ねることで咲良さんがどんどん成長していくから、一発目を委ねられるようになったところもあるはずですよね。
吉柳:確かに自分が歌うべき楽曲のテイストをより理解できるようになった気はします。普段から今まで以上に幅広い音楽を聴くようにもなったので、いろんなところから受けたインスピレーションが影響しているのかもしれないです。トラックを聴きながら出すメロディの選択肢は徐々に多くなってはいますね。



















