2025.10.15 19:00

吉柳咲良「私にはネガティブなことも絶対必要」　「Bad Gyal」にも表れる“強さ”の根源を語る

“Crazy”すら心地よくなったり、それによって救われることも絶対ある

ーー以前、言葉は書き溜めているとおっしゃっていましたが、メロディをご自身の中でストックしておいたりもしているんですか？

吉柳：録りためておいたりはしていないですけど、カラオケに行ったときに自分なりに訓練はしていますね。麦野さんからアドバイスをいただいてやるようになったんですけど、カラオケで自分の知らない曲を適当に入れて、そこで流れてくるトラックに合わせて自分なりのメロディで歌ってみるんです。そうするとトラックや歌詞が持つ可能性をあらためて感じることができるし、そこからいろんなメロディが浮かんでくるんですよね。

ーー「多彩なメロを次々と生み出してくれる」とSakaiさんがコメントされていましたけど、その裏にはカラオケでの秘密特訓の成果があったわけですね。

吉柳：Sakaiさんが褒めてくださってたのでビックリしちゃいました。でも、「Bad Gyal」のときが一番、いろんなバリエーションのメロディが出せてたんじゃないかな。けっこう採用してもらえたところもあったし。その上で、自分が出したメロディがSakaiさんや麦野さんのメロディと繋がることでガラッと印象を変える瞬間もあったりしたので、いろんな発見があって楽しかったです。

ーーそこにご自身の思いがたっぷり込められた歌詞がのせられたわけですが、タイトルにもなっている「Bad Gyal」というワードがいいですよね。ものすごく吉柳咲良っぽいなと。

吉柳：あははは、そうですよね。私のマインドとしては“Girl”じゃなく“Gyal”だよねっていう。私は“Bad”があるから先に進むことができると思っているので、それをちゃんと肯定したい思いもありました。

ーー咲良さんはマイナスでネガティブな事柄があるからこそ、強さを持って前に進めているわけですか。

吉柳：はい。私は他者からネガティブなことを言われた過去もあるし、時には自分で自分に“Bad”な言葉を投げかけて、わけわかんない思考になってしまったこともあったんですけど（笑）、でもだからこそ自分のすべてを肯定できるようになったんです。それが強みになった人生だなって、今はすごく思える。かつては否定していた過去の苦しみや怒りすらも肯定したからこそ、今の人生があるんです。その思いを今回の曲には強く反映した感じですね。

ーー「Bad Gyal」の冒頭では咲良さんが経験してきた“Bad”なことが歌われていますが、それが曲の中でどんどん弾けていって、〈My Way〉〈前へ〉と高らかに歌うサビへと繋がっていく。そのカタルシスが最高に気持ちよかったです。

吉柳：サビで急にアガるじゃん！　みたいな（笑）。毎回、自分の楽曲には私自身の思いをメッセージとしてガンガン詰め込んでいきたい気持ちがあるんですけど、今回は思い切り、相当込めた感じですね。ネガティブなことが100％消えた状態になったときって、何かを見落とす可能性があると思うんです。だから私にはネガティブなことも絶対必要。そもそも私は悩んでる時間がないと怖くなってくるんですよね。私自身の地盤となるもの、前へと引っ張っていってくれるものが不安だったり、ネガティブなことだったりもするから。これからもそういう曲を歌っていきたいと思っています。

ーー〈どうせこの世界はCrazy〉〈なら楽しむだけbaby〉というフレーズなんかは痛快ですよね。

吉柳：言っちゃったねーみたいな（笑）。歌詞じゃなきゃ許されないですよね（笑）。“Crazy”って強い言葉だから語弊を生みそうではあるけど、でもそういう世界だからこそおもしろいみたいなところもありますよね。地球上にこれだけ多様な人間たちが生活しているのであれば、自分とは価値観が全然違う人間もたくさんいるし、そういう人を“Crazy”だと思ってしまうこともあるわけで。でも分かり合っていけば、その“Crazy”すら心地よくなったり、それによって自分が救われることも絶対あると思う。だから、この曲での“Crazy”は誉め言葉でもありますね。

ーーでは、ボーカルのレコーディングはいかがでしたか？

吉柳：相当、難しかったです。今回はテンポもものすごく速いし、サビでは今まで以上に高音域を出したりしているので。「これ、どこで息するんだ⁉」みたいな部分もあって（笑）。

ーー平メロとサビでは、かなりキーの高低差がありますよね。

吉柳：そうなんです。ちょっと専門的な話にはなるんですけど、高い音を出すために、その前にある低い音をどう扱うかがすごく重要になってくるんです。低いところを低くしすぎると、高いところに一発で当てるのが難しくなって、ブレてしまうんですよね。ミュージカルなんかでは、そういうブレを極力なくすために、声帯のポジションを一定のところにキープしておいたり、低音を無声音に変えて切り落とすみたいなことをやるんです。でも、それを「Bad Gyal」のような曲でやってしまうと、表現や伝わり方が浅くなってしまうというか。なので、今回は低いところも高いところも、自分の声が持っている特性をなるべく切り離さないで全力で歌うことをすごく意識しました。この曲に関してはキレイに歌うのはちょっと違うなという思いもあったので、声の音色に関してもものすごく意識しながらのレコーディングでしたね。でも、それはスタジオだからできたことでもあって、生で歌うとさらに大変なんです。こないだ音楽番組の収録があったんですけど、そのときにあらためて難しさを感じたので、さらに研究していかなきゃと思ってます。

ーーそういう歌い方も日頃から鍛錬しているんですか？

吉柳：そうですね。基本的にはカラオケで練習しています。他のアーティストさんの曲を歌うときにも、その方の声の特性をしっかり理解しながら、声の出し方を研究したりとか。日々、勉強ですね。

ーーカラオケはもうリフレッシュするための娯楽じゃない感じですね。

吉柳：娯楽ではまったくないです（笑）。カラオケはほぼ仕事、トレーニングの手段です。カラオケでも自分の歌は全部録音して、家で聴き返したりするので。でも、私にとって歌うことは生きがいなので、楽しいですけどね。少しでも歌わない時間があると気持ちがしぼんでいくので、週3はいかないと気が済まない（笑）。歌えなくなったときが人生の終わりだと思います。

ーー「Bad Gyal」はMVも大きな話題を呼んでいますね。

吉柳：私の中にある二面性みたいな部分を表現しています。私がイメージしていた細かい表現が見事に一致していたので、監督のRyo Sudaさんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

ーーフィメールダンサーたちとともに咲良さんもかっこいいダンスを披露されています。

吉柳：総勢50名のダンサーのみなさんに後ろを固めていただき。背中を押していただきながら頑張って踊りました。振り付けをしてくださったMONAさんも私のイメージを明確に汲み取ってくださっていて。楽曲が持っている色気と強さのマッチングが本当に絶妙な振りだったので、踊ってて超楽しかったです。踊れば踊るほど、自分自身が助けられている気持ちになってくるというか。とは言え、後ろにいてくれるのが本当にスーパーダンサーズなので、めちゃくちゃ緊張しましたけどね（笑）。ダンスをやってた私からすると、もう頭を下げてダンスを教えてもらうような方々なので恐れ多かったですけど、そんなみなさんと一緒だからこそ真ん中で堂々と踊ることができたところもあって。ダンサーさんありきで成し遂げられたMVでもあると思います。自分でもいまだに何度も見ちゃいますからね。「ここいいんだよなあ！」とか言いながら（笑）。それくらいお気に入り。

ーー今回は1年ぶりの新曲でしたけど、聞けばストックもあるそうなので、次の曲がすぐ聴けることを願ってやまないですけどね。

吉柳：そうですね。出すタイミングをみんなでいろいろ考えているところです。次に出すであろう曲もハンパないですよ（笑）。

ーー曲が溜まってきているので、ライブもやって欲しいですけどね。

吉柳：そうなんですよ！　いつかやれるように頑張っていきたいです。レコーディング中にライブをイメージすることもあるし、日常の中で勝手にセトリを考えたりすることもあるんですよね。そんな妄想を日々してます（笑）。ただ、ライブとなると生で歌うことの大変さと向き合っていかないといけないですからね。もっとトレーニングしないと。もっとカラオケいかないと（笑）。