地方だからこそできる挑戦ーーfishbowl ヤマモトショウ×タイトル未定 ついま、両プロデューサーが語る地元に賭ける理由

ヤマモトショウ×ついま対談

『TIF』は1年間の成績表、“地方代表”としての誇り

ヤマモト:松井さんは、“ご当地アイドル”と言われた時に、それを訂正するのか、受け入れるのか問題(笑)。

ついま:(笑)。

ヤマモト:fishbowlは、ご当地アイドルとは少しニュアンスが違う部分があると思っているのですが、あまり詳しくない人からすると同じようなものに見えてしまうと思うんです。だからと言って、メディアに“ご当地アイドル”と書かれてしまうと、そういう目線で見られてしまう。メンバーも、初期の頃は特に気にしていたと思います。「私たちって“ご当地アイドル”なんですか?」「“ご当地アイドル”と言われた時には否定した方がいいですか?」って。今は“ご当地アイドル”と呼ばれることはなくなったんですけど。

ついま:タイトル未定は、『TIF』などの東京のアイドル業界の中で知名度を上げてから北海道でのメディア露出が増えたので、北海道で“ご当地アイドル”として紹介されることはなかったんです。そこは、我々のやりたいことの意図がメディア側にもしっかりと伝わっていたのだと思います。

ヤマモト:なるほど。東京で『TIF』に出ることの意義は、地元の人たちが「うちの地域にも『TIF』に出るくらい活躍しているアイドルがいるんだ」という自慢になることですよね。

ついま:甲子園に出場したみたいな感覚(笑)。

ヤマモト:そうそう(笑)。地方校が毎年甲子園に出て活躍して、全国にも名前が知られていくような感覚。だから、戦うために毎年『TIF』に出演しているようなところがありますね。

ついま:『TIF』はアイドルフェスの中では一番大きいイベントですし、キャッチコピーも「世界最大のアイドルフェス」で。『TIF』発のアイドルがいたり、『TIF』で活躍したアイドルをさらにフックアップしてくれたり、日本全国のアイドルにスポットライトを当ててくれるイベントだなと思っています。なので、そこに上手くハマるようなグループであり続けたいという気持ちもありますし、メンバーにとっても熱量高く臨む、思い入れの強いイベントになっています。1年間の成績表、みたいな。そのアイドルの状況や注目度のような部分がタイムテーブルなどにも反映されていると思うので、意識高く臨んでいると思いますね。

ヤマモト:fishbowlのプレイヤーはあくまでもメンバー自身なので、彼女たちが“静岡代表”という自覚を持ってステージに立ってもらわないといけないと思っています。『TIF』はメンバーにとって一番のモチベーションになっているイベント。(fishbowlに限らず)アイドルの子たちみんなが「絶対に出たい」「活躍したい」と言っているイベントなので、そういう場に呼んでいただけることが、アイドルグループとしてのfishbowlのモチベーションになっていることは間違いないです。

――なるほど。

ヤマモト:年に一度のお祭りなので、お客さんも全力で楽しもうという気持ちで来ていますし、『TIF』でアイドルファンに見つかるという現象も面白いですよね。fishbowl自体、『TIF』に来るお客さんにはすでに知ってもらえていることが多いのかなと思いきや、まだまだそうでもなくて。去年の『TIF』で初めて知ってくれた方がたくさんいて、直後に行ったライブチケットが一気に売れたこともありました。僕個人としても、自分が曲を書いたアイドルのライブをたくさん観られるので、毎年純粋に楽しませてもらっています。メンバーの子達は、アイドルの友達と普段なかなか会えないので、『TIF』で友達に会えることも楽しみにしているみたいです。

fishbowl for TIF2025 in SKY STAGE

――ちなみに『TIF』期間中、お二人はほかのグループをチェックされますか?

ついま:そうですね。運営やプロデューサー目線で見るのはもちろんなんですが、HOT STAGEやSMILE GARDEN、SKY STAGEなど、ほかのフェスと違って『TIF』はステージごとに色があるのが面白くて。「このグループはこのステージを使うとどう見えるのかな」とか。

ヤマモト:どのグループも気合いを入れて参加しているので、「どんなことをやるんだろう?」と気になります。たとえば、新衣装で臨んだり、新曲を披露したり。fishbowlにはメンバーカラーはないので、基本は全員が同じ色の衣装なんですけど、去年初めてメンバー毎に色を分けた衣装で出演したんですよ。その挑戦をしたのも『TIF』でしたね。いつもと違う出立ちなので「安心してください、fishbowlです!」って言いながら(笑)。

ついま:やってましたね(笑)。

ヤマモト:あとは、運営同士が一堂に会する場でもあるので、バックヤードで情報交換をしたりもしています。リハも合わせると4日間いるのでなかなかのカロリーではありますが、「どこのホテル泊まるの?」とか話したりして(笑)。戦友に会うみたいな感覚ですね。

ヤマモトショウ、ついま
ヤマモトショウ、ついま

――地方拠点グループ同士、大変な部分や苦労している点などで共感し合えるものですか?

ヤマモト:リアルなところで言うと、交通費はシンプルに大変ですよね。地方だと、アイドル友達のネットワークがなかなか広がらないので、メンバーも大変かなと。

ついま:移動は本当に辛いですね。金銭面もですが、飛行機にあれだけ乗っていたら(体力的にも)疲れます(笑)。番組収録では日帰りも全然ありますし。東京に来る時はなるべく(スケジュールを)コンパクトにまとめて、滞在時間を短くするようにしているので、そうすると必然的に飛行機に乗る回数も増えるんです。1週間のうち移動日に2日くらい取られる場合もあるので、そういう大変さはありますね。

ヤマモト:僕らは静岡なのでその日のうちに帰れることが多いんですが、帰れるがゆえに、イベント終わりの特典会で、ほかのグループはまだやっているのに、fishbowlだけバタバタ急いで撤収して終電で帰るなんてことはよくあります(笑)。

ついま:僕らは夕方の時点で最終便が終わっているので、そもそも帰りようがないから(笑)。そういう負担はほとんどないです。

ヤマモト:あとは、レコーディングスタジオがなかなかないとか、そういうクリエイティブ面での制約もありますよね。

ついま:タイトル未定はダンスの先生は北海道の方なんですが、レコーディングや映像チーム、その他のクリエイティブな部分のスタッフは東京の方が多くて、完全に地元で完結というわけにはいかないんです。

ヤマモト:うちはレコーディングができるように、事務所の中にブースを作りました。

――バンドや芸人の場合、地元で力を付けてから上京して勝負するといったストーリーもよくあると思いますが、お二人が北海道と静岡という拠点にこだわり続ける理由をあらためて聞かせてください。

ついま:僕は「北海道の人に愛されるコンテンツ」を作りたいと思って会社を立ち上げたので。今では、僕から発信しなくてもメンバー自身が口癖のように「北海道の顔になりたい」と言ってくれているので、それが一番やるべきこと、目指すべきことだと思っています。

ヤマモト:僕はメンバーに「さわやかよりも静岡で有名になってくれ!」と最初からずっと言い続けていて(笑)。それは半分冗談でもあり、半分本気でもあって。ライバルはさわやかだという気持ちでやっています。「静岡にはまだまだ面白いことがたくさんあるから、みんなで一緒に盛り上げていきましょう!」という気持ちで大きくしていきたいです。たとえば、去年から『しずおか大好きまつり』という静岡を盛り上げる“街のお祭り”を作ったんですが、fishbowlはそのアンバサダーとして参加しています。僕自身、静岡の可能性に期待しているんです。

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