10-FEET、探求の先で辿り着いた骨太なロックサウンド 『ウマ娘』OP主題歌に込めた“闘争心と悔しさ”を語る

10-FEET、骨太なロックを追求

TAKUMA、“生の実感”として描きたかった2つの要素

ーーでは、歌詞も含めた話を伺うと、楽曲のラストで〈瞑想シンクロ走破…〉という歌に〈悔しい悔しい悔しさ悔しいよ〉というシャウトが重なってくるじゃないですか。個人的にそこが一番好きなんですけどーー。

TAKUMA:ありがとう。

ーー集中力を高めて懸命に走り抜けるシーンの裏側には、常に苦悩や後悔といった原動力があって。そういうプラスとマイナスの心情が同居しているような、表裏一体の感覚が音楽で表現されている気がしてとても感動したんですが、ラストのパートに込められた想いはどんなものでしょうか。

TAKUMA:『ウマ娘』に出てくるオグリキャップというキャラクターが、怪物と呼ばれて圧倒的に強いんですけど、たまに普通に負けるシーンがあって、本人も悔しいんですよね。だから1曲の中で、悔しい感情と走ってる人の精神の集中、その両方を描きたいと思っていました。

アニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』第2クールノンテロップOP映像|10-FEET「スパートシンドローマー」

 こないだ『世界陸上』(『東京2025 世界陸上』)もやってましたけど、例えばトップアスリートの短距離走って、10人近くで走ってどれだけ離されても、1秒以内くらいにはほぼ必ず全員ゴールしているじゃないですか。僕がもしそこに参加したら、余裕で何秒も離されるわけですけど(笑)、つまりトップアスリートのフィジカルの差なんてそんなにないと思うんですよ。普段の自己新(記録)タイを出せたらメダル獲得できるような選手がいっぱいいる中で、それがなかなかできなくて、本番でさらに自己新を更新できるような化け物が勝っていく神懸かった世界やなと。どんなに速い身体を持っていても、闘争心や集中力といった精神面がゾーンに入っていないと勝てない……にもかかわらず、負けたら「よくやった」じゃなくて、やっぱり「悔しい」。その2つの要素を、言葉でも音楽でも描きたかったんです。

 さっき言ってもらった表裏一体の感覚っていうのは、僕は意図してやってないですけど、別々のパートで鳴っていた全然関係なさそうな2つのメロディが1つに重なって、それがうまくハマったときって不思議と大体泣きそうなものになるので、それができたのは少なくとも良かったですね。しかもどちらも心の中を描いた歌詞で、大事なメッセージを込めたパートが組み合わさる展開ですから、言ってもらったように受け取ってもらえて、より良かったなと思いました。

10-FEET ライブ写真

10-FEET ライブ写真

10-FEET ライブ写真

ーーそもそも〈悔しい悔しい悔しさ悔しいよ〉というフレーズが1つ入ることで、曲のテンポや雰囲気もガラッと変わりますけど、むしろそれがあるからこそ素晴らしい曲になっていますし、やはり悔しさは10-FEETの根底にある感情でもあるんだなって、改めて感じました。

TAKUMA:そこは歌詞を知らなかったら英語に聞こえるフレーズになっていて、だから歪ませているんですよね。字面だけ見たら〈悔しい悔しい悔しさ悔しいよ〉なので、ちょっと幼稚で生々しすぎるというか、「歌詞じゃなくてセリフやん」みたいな感じなんですけど、英詞のラップのフックっぽく聴かせる妙が面白いんじゃないかなと思ってました。アニメにも合ってますし、10-FEETのメッセージの裏側にある主たる感情の1つでもあると思うので。まあ歌詞だけ先に見られるのは恥ずかしいけど(笑)。

ーー(笑)。今ってあらゆる面で、なるべく苦労したりせずに済む選択肢を提案される時代で。悔しさを募らせながら1つの物事に邁進するよりも、そうしない理由のほうがはっきりしている時代だと思うんですよね。だけど 「スパートシンドローマー」は、悔しさや苦しさの先にあるものの意義をロックバンドとして提示している楽曲に聴こえて、すごく夢があるなとも思ったんです。

TAKUMA:言ってもらった通り、悔しいこと、悲しいこと、苦しいこと、不快なことって、全部嫌なものだからなるべくないほうがいいみたいな風潮になってきている中で、それをどんどんなくしていくと、生きてる実感というか、幸せや喜びや安らぎもどんどん失われていく気がするんですよね。塩キャラメルじゃないけど、甘みをより感じるための“塩”みたいなものーーまあ僕らの世代は根性論だったり、体罰やいじめもいっぱいあるような時代に育ってきたから、その分孤独の意味がわかったり、「なんで強くならないといけないのか」「優しさって何だろうか」ってことを考えて、そういったものに巡り会えたときに嬉しさを感じられて、安らいで、喜んできて……それらを全部ひっくるめて「生きてきた実感やな」って思うんです。

 残念ながら、その生きてきた実感の中には、苦しさや悲しさといった“塩”があったりするけど、それがあったから、歌詞やメッセージだけじゃなくて、音作りでもライブのパフォーマンスでもいろんな姿を見せられていると思うし。僕らの先輩バンドもわりとそんな感じで、いろいろあった中でも「苦しさとか全然ないよ」っていう余裕を見せてくれる姿がまたかっこよかったりとか。そういうものに意義を感じて「好きや」と思ってきた僕らが作ったから、そうなったんじゃないかなと思います。

10-FEET ライブ写真

ーーよくわかります。今年の『京都大作戦』でも「タイヤ1個か2個もげてからのほうがむしろスピードが出る。それがバンドマンや!」という名MCがありましたけど、2日間のフェスの空気や、10-FEET自身が大事にしていることをズバッと射抜いたひと言だったので、すごいなと思ってました。

TAKUMA:仲間のバンドも、そんなヤツらばっかり出てましたからね(笑)。ほんまにそうやなと思ってましたよ。

ーー 「スパートシンドローマー」の制作を振り返ってみて、これからに向けて今どんなことを考えていますか。

TAKUMA:ロックやったら、やっぱりサビは勢いやスピードがあったほうがいいっていうイメージを僕ら自身も持っていたけど、それだけじゃなくて、遅かろうが速かろうが、あるいは静かだろうが、いい音やサビの聴かせどころというのは存在していて。それを今の10-FEETのスタイルで表現していって、なおかつこれまでのどの曲よりもいいと言ってもらえるような曲作りをしていきたいなと思うので、そこに繋がる1歩になったんじゃないかなと思いますね。制作の初期の段階から、音楽としても精神としても、そういう想いをメンバーと共有して臨めましたし、これからもさらに面白いものができていったらいいなと思ってます。

※:ライブ写真は『京都大作戦2025』より。

◾️リリース情報
10-FEET
Digital Single「スパートシンドローマー」
(アニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』第2クールオープニング主題歌)
2025年10月8日(水)リリース
配信:https://lnk.to/10feet_ssr

10-FEET オフィシャルサイト

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