『ユイカ』、新曲「ローズヒップティー」とシンガーソングライターとしての深まり 今向き合う“本当の音楽”

『ユイカ』、今向き合う“本当の音楽”

 『ユイカ』がドラマ『君がトクベツ』(MBS/TBS系)のオープニングテーマとして書き下ろした新曲「ローズヒップティー」。この曲で描れるのは、恋愛におけるひねくれた感情である。それを『ユイカ』は“ローズヒップティー”という飲み物に喩えた。

 ピンク色でかわいい見た目。だけれど、その味はちょっぴり酸っぱくてクセがある、万人が「好き」とは言えなさそうな味。『君がトクベツ』という物語に、見た目で騙されそうなものを重ねる――。この『ユイカ』の審美眼と想像力はあらためてすごいものだとあらためて思う。「ローズヒップティー」は、かわいくて、いじらしくて、作品を心から愛することのできる『ユイカ』にしか作れない、洗練された楽曲である。それと同時に、エレキギターを手に作ったというのも、彼女がまたひとつ殻を破った証明のひとつだ。今『ユイカ』は新たな高みにいる、そんなことを確信できる楽曲でもある。

 ここまで正しく、そして的確な作品の主題を描いた『ユイカ』は、今どんな日々を過ごして、どんな気づきのなかにいるのか。彼女は朗らかに話をしてくれた。(編集部)

「ラブコメだったら私、上手に書けるよ?」って

――8月の『LuckyFes 2025』、今月の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025』と夏フェスのステージも増えてきていますが、手応えはいかがですか?

『ユイカ』:いやあ、暑いですね。今までライブで汗をかくことってあんまりなかったんですけど、夏フェスはさすがに汗をかきました。でもめちゃくちゃ盛り上がるし、ものすごく楽しいです。

――ワンマンライブとは違って、ファン以外の方も『ユイカ』さんのステージを観にきていると思いますが、反響や手応えはどのように受け取っていますか?

『ユイカ』:MCで「『ユイカ』のライブ、初めての人ー?」って聞いたら、8割くらいが手をあげてくれて。フェスで出会ってくれるのもそうだし、そこから「『ユイカ』のライブ行ってみようかな」って思ってくれている様子もSNSで見かけて、うれしいですね。

――フェスならではのセトリやライブ運びなど、何かこだわっていることはありますか?

『ユイカ』:基本的には初心者向けのセトリというか、明るい曲や「みんなが一度は聴いたことあるんじゃないかな?」と思うような曲を集めているんですけど、『LuckyFes』では「17さいのうた。」というバラードを入れてみたんです。そしたら思ったらよりも反響が良かったので、また入れてみようかなとかいろいろ考えています。『ユイカ』の曲は明るくてかわいい曲ばかりじゃないっていうこと、ラブソングだけじゃなくて、人生を歌う曲もあるということを知ってもらいたいなと思っているので、良い機会になったかなと思います。

――他のアーティストのライブを見たり交流したりと、フェスも楽しめていますか?

『ユイカ』:はい。私、礼賛がめちゃくちゃ好きなのですが、『LuckyFes』では同じ日の出演だったので、普通にファンとして見に行きました。めちゃくちゃ楽しかったです。

――さらに少し遡って、6月には初の企画ライブ『『ユイカ』presents「時計草」#1』を開催しました。あらためて、この『時計草』というイベントを開催に至った理由を教えてください。

『ユイカ』:このイベントは、私がいつも聴いているアーティストさんや、友達のアーティストなど、私がリスペクトしているアーティストさんと一緒にライブをしたいと思って始めました。どんどん大きくなって「『ユイカ』の企画ライブ出たいよね」って思ってもらえるようなライブになればいいなと思っているので、そこまで頑張ろうと思っています。

――初回のゲストは、とたさんでした。いかがでしたか?

『ユイカ』:めちゃくちゃ楽しかったです! とたちゃんは普段からよく会っているので、プライベートじゃなくてお仕事で会うというのが少しむずがゆくもあり、最初はちょっとどぎまぎしちゃったんですけど(笑)、友達とライブができるのはすごくうれしかったです。対バンって“戦場”みたいなイメージがあったんですけど、対バン相手のアーティストさんを観にきている人にも私のライブを観て「いいな」と思ってほしいし、友達とのライブだと“戦い”のような気持ちもなく、変な緊張もせず、いい意味で気楽に落ち着いてできました。

――ライブ中にも説明されていましたが、『時計草』というイベントタイトルに込めた思いをあらためて聞かせてください。

『ユイカ』:時計草の花言葉には、“愛”や“信仰心”みたいな意味があって。私がそれくらい好きなアーティストを呼ぶイベントにしていきたいなと思っています。今回は普段から仲のいいとたちゃんに出てもらいましたが、この先は会ったことのない、私自身がリスペクトしている方とも対バンできたらいいなと思っています。

――対バンをしたり、フェスに出たりと、さまざまな形でのライブを経てリリースされるのが新曲「ローズヒップティー」。この曲はドラマ『君がトクベツ』のオープニングテーマですが、最初にドラマ『君がトクベツ』オープニングのお話を聞いた時はどう思いましたか?

『ユイカ』:もうめちゃくちゃびっくりしました! もともと原作が好きだったので、まず実写映画になる時点で、ファンとして「うれしい!」って思っていたんです。だから、さらにドラマもやるって聞いてすごくびっくりしたし、「オープニングテーマ、私?」って(笑)。しかもドラマのタイアップは初めてだったので、それもすごくうれしくて。ドラマのオープニングテーマにふさわしい曲を書けるようにと思って頑張って書きました。

――原作ファンということは、正直、映画化された時は主題歌をやりたかったという気持ちも?

『ユイカ』:ありました、ありました! 「ラブコメだったら私、上手に書けるよ?」って。でも、映画の主題歌をチェックしてみたら、劇中アイドルの皆さん(LiKE LEGEND)が歌われていたので、「そりゃそうだ!」って思いました(笑)。だから、今回ドラマで携われて、「本当にありがとうございます!」という気持ちです。

「好きになりたくないのに好きになっちゃう」みたいなものを表現したかった

――「ローズヒップティー」は『君がトクベツ』という作品のどういったところからインスピレーションを受けて作っていったのでしょうか?

『ユイカ』:『君がトクベツ』のいちばんの大きなポイントって、主人公がイケメン嫌いな女の子というところだと思っていて。私はイケメンが大好きなので、最初は入り込んで書くのは難しいかもと思っていたんですけど、多くの女の子が好きなものが「好きじゃない」というひねくれた感じを持っているものなのかなと掘り下げて、そういう女の子を主人公にした曲にすることにしました。

――その主人公は、ご自身とは別の感覚だと思うのですが、歌詞は書きやすかったですか?

『ユイカ』:嘘になるから「イケメンが嫌い」とは書けなかったんですけど(笑)、最初の〈甘いのがきらい/ピンクもきらい〉という部分は、私自身、共感できるところが少しあるし、「多くの女の子が好きなものが好きじゃない女の子」というひねくれた感じも出せていいかなと思いました。私は甘いものよりもラーメンが好きなんですけど、さすがに「ラーメンが好き」とは書けなかった(笑)。

――(笑)。「恋愛に対してネガティブな方にこそ当てはまる曲なはずです」というコメントも印象的でした。

『ユイカ』:「恋愛に対してネガティブ」というと、「恋愛なんて……」みたいなイメージになりがちだと思うんですけど、この女の子はそうじゃない。「恋愛なんて……」という気持ちもあるけど、結局相手のことを好きになっちゃうんですよね。その「好きになりたくないのに好きになっちゃう」みたいなものを表現したかった。恋愛に対してポジティブな私だからこそ書けることもあるのかなと思って、ここは背中を押すようなイメージで書きました。

――恋の甘さと苦さをローズヒップティーに喩えるという発想も秀逸ですよね。

『ユイカ』:『君がトクベツ』の世界にあわせて、見た目で騙されそうなものって何があるかなと考えたんです。ローズヒップティーって、甘そうだけど、実際に飲んだら酸っぱくてそこまで甘くないじゃないですか。それを恋愛に置き換えられないかな、って。「あなたは甘い顔で笑うから好きじゃないって思ってたけど、まあ私はローズヒップティー好きだし、あなたのことも好きになってもいいか」みたいな。私が初めてローズヒップティーを飲んだのは小学生くらいの時だったと思うんですけど……見た目からして、めちゃくちゃ甘そうじゃないですか。

――色もほんのり赤みがかっていて。

『ユイカ』:そうそう、かわいいし! だけど、飲んだら「酸っぱ!」って裏切られて(笑)。その時の感情を思い出したんです。

ローズヒップティー / 『ユイカ』【MV】

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