矢沢永吉の言動はなぜ伝説となる? イチロー・林修ら著名人との対談から浮かび上がる“50年間ブレない軸”

 日本ロック界のカリスマとして長きにわたりシーンを牽引し続けてきた矢沢永吉が、9月21日にソロデビュー50周年を迎えようとしている。24日にはニューアルバム『I believe』のリリース、11月には東京ドーム2DAYS公演、そして全国のアリーナ会場を巡る『EIKICHI YAZAWA CONCERT TOUR「Do It!YAZAWA 2025」』の開催を控えており、76歳を迎えた今なお精力的な活動を展開している。

 そんな矢沢は、各メディアで著名人との対談をたびたび行っている。8月24日放送の『日曜日の初耳学』(MBS/TBS系)ではMCの林修と、そして9月15日放送の『NHK MUSIC SPECIAL』(NHK総合)では「ヤザワ×イチロー ~俺たちの失敗~」と題し、日本人初のアメリカ野球殿堂入りを果たしたイチローとの対談が実現した。

 『日曜日の初耳学』での林との対談で、矢沢はソロデビューから50年間活動を続けることができた理由を「街から街、ライブからライブ。酒飲んでまた次の街行って、ってやってたら、あっという間でしたね」と説明してみせた。この対談の話題は、やがて世の中でまことしやかに囁かれる矢沢伝説の真偽について移行していく。ライブ後は楽屋に戻らずに直帰するという噂については、「最初はそうじゃなかった」としつつも、現在はステージを降りてからわずか40秒で会場を後にするという矢沢らしい豪快な在り方を赤裸々にトーク。しかし、それができるのも裏にセルフケアやセルフマネジメントがあるからこそ。健やかに、そして長く活動を続けられる理由をそこかしこに感じた瞬間でもあった。

 こうしたいわゆる“YAZAWA伝説”については『NHK MUSIC SPECIAL』でのイチローとの対談でも語っていた。「俺はいいけどYAZAWAはなんて言うかな?」という有名な語録は、「言葉が独り歩きして大きくなってしまった」「誇張されてしまった」としつつ、何かの拍子で発した言葉であることは認めており、ステージ上だけではなく、どんな場面においても矢沢永吉は矢沢永吉であり、だからこそ伝説が生まれるのだと気づかされる。

 『NHK MUSIC SPECIAL』では、イチローが「はっきり物を言ってしまうこと」が自身の欠点であると話すと、矢沢は「若い頃の自分に似ている」と笑顔で応えていた。矢沢が「はっきり物を言う」ことにまつわるエピソードは『日曜日の初耳学』でも明かされており、デビュー当時ロックシンガーが成功を夢見て口にすることを「カッコ悪い」とする風潮に対し、「常に自分の夢ははっきり口にすることで叶えてきた」と語っていた。やはり矢沢とイチローは、それぞれ舞台は異なるが、そこで大きな成功を収めてきたからこその共通点があると2つの番組を通して感じられた。

 コピーライターであり、矢沢永吉の自伝『矢沢永吉激論集 成りあがり How to be BIG』(小学館/KADOKAWA)でインタビュアーを努めた糸井重里との対談企画『ほぼ日刊イトイ新聞』創刊21周年記念企画にて(※1)、特筆したいのが、矢沢の芯のブレなさだ。対談は6年前に行われたものにもかかわらず、最近放送された『日曜日の初耳学』や『NHK MUSIC SPECIAL』で語られているエピソードとも印象がブレていないのだ。例えば、アメリカのロックバンド・The Doobie Brothersをバックバンドに迎えた公演をプロモーターを介さずに開催したエピソードが語られ、そこにはビジネスマンとしての矢沢を感じられる。これは、筆者の考える矢沢のロックミュージシャンとしての最大の魅力そのものだ。圧倒的な芯のブレなさこそが、矢沢永吉を矢沢永吉たらしめていると思うのである。

 ブレない矢沢が作り上げた最新アルバム『I believe』、そして東京ドーム2DAYS、アリーナツアーを心待ちにしている。きっと矢沢はたとえ東京ドームであったとしても、ブレることなく40秒で会場を後にするだろう。

※1: https://www.1101.com/yazawa2019/index.html

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