MON7A「おやすみTaxi」バイラルチャートイン 語りかけるような歌唱とグルーヴで広がる話題性
Viral Chart Focus
Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの8月27日付のTOP10は以下の通り(※1)。
1位:トシロウ(CV:谷山紀章)「Hunting Soul」
2位:TAKUMI & KYOSKE(INI)「Unrequited Love」
3位:MON7A「おやすみTaxi」
4位:Number_i「未確認領域」
5位:ディエゴ・マイター「Flaming Thunder God (from "Demon Slayer: Infinity Castle") - Cover」
6位:HUNTR/X・EJAE・AUDREY NUNA・REI AMI・KPop Demon Hunters Cast「Golden」
7位:KOTA「Rainbow Road」
8位:REN「始まりのように」
9位:TENBLANK「旋律と結晶」
10位:アイナ・ジ・エンド「革命道中」
今回は3位にランクインしたMON7Aに注目する。MON7Aは東京出身、現役高校生のシンガーソングライターだ。SNS上で人気を集め、TikTokやInstagramに投稿された高校生の日常的な視点を切り取る歌や映像が共感を呼び、SNSの合計フォロワー数は現在までに270万人を突破。机の上に足を上げて撮影する動画が“もんた界隈”として急速に広がり、まるで漫画のキャラクターのようなビジュアルと存在感で注目を集めてきた。契機となったのは、恋愛リアリティ番組『今日、好きになりました。ハロン編』(ABEMA)。この出演をきっかけに人気と知名度が急上昇したのだ。
そんな中、彼のアーティストデビュー曲となる「おやすみTaxi」がデジタルリリースされた。本曲は、SNS投稿時からZ世代を中心に急速な広がりを見せており、TikTok関連UGC(ユーザー生成コンテンツ)は8万件を超えている。バイラルチャートでは、8月25日付のデイリーチャートで初登場3位にランクインした。以降5日以上にわたり3位をキープしている。
なぜ「おやすみTaxi」がここまで広がりを見せたのか。まずひとつに、タイトルと歌詞が示すわかりやすい情景が、SNS動画と親和性が高かったことだろう。夜のドライブ映像や帰宅途中の映像などに合わせやすく、ユーザー拡散が促進されたと推測できる。加えて、サウンドの主張が大げさすぎず、BGMとしても機能する曲であること。夜のシチュエーションを描いた曲ではあるが、その限定的な時間帯を超え、幅広いシチュエーションで活用されるようになった。さらには、SNSでのプロモーション展開により、MON7A自身の存在感をもって日常に密着した楽曲としてリスナーに浸透したことも大きい。
「おやすみTaxi」は深夜の高速を走るようなグルーヴが心地よい、実に洒脱な楽曲だ。BPM的にはアップチューンだが、リズムよりもグルーヴ感を残す手腕がお見事。柔らかな音を選んだと思わせるリズムのビート、ローファイ的な質感、浮遊感あるギターリフが楽曲を彩る。展開などでも過度な装飾のないミニマルなアレンジが、非常にクールで、都会の夜景や車窓から流れる街灯の光を想起させる。音数を絞りつつも耳に残る音色を使っていること、リズムのディテールのニュアンスが軽やかなフックとなり、MON7Aのセンスを際立たせている。
ボーカルにも注目したい。抑えたトーンでリズムを刻み、ともすれば淡々とした印象を残しそうなのだが、柔らかい声質と丸みのある発音、階段を一定のリズムで駆け上がるような高音への移行で、楽曲に表情を添えている。また、楽曲全体を通してブレスを混ぜるように発音していること、夜に溶けていくように自然なデクレッシェンドをかけているところも、楽曲に合わせたアプローチだろう。ウィスパーボイスというよりは、軽く語り掛けるように、言葉をスウィングさせるようにして歌っている。このグルーヴに対するボーカルアプローチは、間違いなくMON7Aの才能だ。サビでも声量で押さず、グルーヴを最大限に活かしたアプローチを見せている。声色、母音の抜き方など、聴き手をリラックスさせる効果を発揮しているところも特筆すべきポイントだろう。
歌詞もシンプルな言葉を使いながら、〈群がる 光の先 鋭利なビル〉など、聴き手のイメージにダイレクトに作用するようなフレーズが光る。ワンフレーズがリスナーそれぞれの体験に結びついていくのだ。そんな中に〈そのまま身を壊せ 生涯〉や〈暗闇 手を伸ばす 勝敗〉など、メッセージともとれる言葉が挟み込まれる。ネガティブまではいかないけれど、やるせない。そんな都市生活の満たされない日常を切り取っている。
「おやすみTaxi」がバイラルチャートインすることで、広く世に知られた存在と才能は、これからさらに広いリスナー層へ届いていくだろう。そんな予感を孕んだ「おやすみTaxi」という楽曲には、MON7Aの実力の未知なる可能性が満ち溢れている。
※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2025-08-27

























