アイナ・ジ・エンド、“三つ巴”のバイラルチャートで存在感 「革命道中」が日常のBGMとして放つ説得力
Viral Chart Focus
Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの8月20日付のTOP10は以下の通り(※1)。
1位:TAKUMI & KYOSKE(INI)「Unrequited Love」
2位:TENBLANK「旋律と結晶」
3位:ディエゴ・マイター「Flaming Thunder God (from "Demon Slayer: Infinity Castle") - Cover」
4位:TAKUMI & KYOSKE(INI)「So You Can Shine」
5位:HUNTR/X・EJAE・AUDREY NUNA・REI AMI・KPop Demon Hunters Cast「Golden」
6位:TENBLANK「永遠前夜」
7位:アイナ・ジ・エンド「革命道中」
8位:琳子「中華料理屋の酢豚が食べたい」
9位:TENBLANK「君とうたう歌 (feat. 櫻井ユキノ)」
10位:TENBLANK「Glass Heart」
今週のSpotifyバイラルチャートには、注目すべき楽曲がひしめき合っている。まず、なんといっても初登場にして首位を獲得した、INIの尾崎匠海と藤牧京介の「Unrequited Love」である。切ないラブソングの名手であるHY・仲宗根泉による書き下ろしで、叶わぬ恋をリアルに描いたバラードだ。またあわせて目を引くのが『グラスハート』(Netflix)の劇中バンド・TENBLANKによる複数楽曲の同時ランクインだろう。「旋律と結晶」「永遠前夜」「君とうたう歌 (feat. 櫻井ユキノ)」「Glass Heart」と4曲がトップ10入りし、ドラマと音楽が相乗効果を生み出していることがよくわかる。
そして、今回特に注目したいのがアイナ・ジ・エンド「革命道中」である。7月後半の初ランクインから徐々にポジションを上げ、先週の9位から今週は7位と、いよいよトップ5入り目前にまで迫っている。
「革命道中」はTVアニメ『ダンダダン』(MBS/TBS系)第2期のオープニングテーマとして書き下ろされた。『ダンダダン』の核である“オカルト×青春”の質感を、彼女は音の推進力と身を切るような語り口で表現してみせた。ダンサブルで疾走感のあるサウンドが駆り立てる焦燥感は、歌詞の切実さを一層際立たせる。
そんな歌詞の中核にあるのは、葛藤と決意の往復だ。焦燥や未練を抱えたまま、それでも今日を踏み出すためのリフレイン。“道中”という言葉が示すとおり、これは到達点の歌ではなく過程の歌であることが、反復再生の中毒性と結びついている。
今週この楽曲がチャートに浮上する決定打となったのが、YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』への出演だろう。8月6日公開の『THE FIRST TAKE』に約2年ぶりに登場し、本楽曲をバンドメンバー、そして実の妹も加わったダンサーたちと一発撮りで披露した。スタジオ音源版の速度感は保ちながら、呼吸や間合いの“生”が加わったパフォーマンスは、『THE FIRST TAKE』ならではの仕上がりである。動画の公開直後からSNSでは「背中を押された」「仲間と歌う姿に熱くなった」といった反応が多く寄せられた。
彼女自身も、この曲の本質を正確に理解しており、「『1人で戦うよりも大切な人を守るって思った方が強くなれる』そんな歌を書いたんですけど、本当に今日にぴったりだなって歌いながら思いました……朝の学校行く時とか、仕事行く時とか、しんどい時に聴いてほしいです。そしたらあなたの一日に革命が起きるでしょう」(※2)というコメントのとおり、多くの人の日常のBGMとして力強く作用していることがわかる。
今週のチャートに目を戻せば、バイラル上位は大枠で三つ巴であるようにも見える。ひとつはINIのデュエットに象徴される直球のラブバラード。もうひとつはTENBLANKに代表されるドラマ発の物語性。そして「革命道中」に連なる“アニメ×SNS”の駆動力を備えたモダンポップ。それぞれの導線が異なる聴き手を連れてきて、同じプレイリスト上で隣り合っている構図が興味深い。なかでも「革命道中」は、作者性と普遍性のバランスが良く、プラットフォームを跨いで自走する力が抜きん出ている。首位交代や複数曲ランクインなど動きの多いランキングのなかで、彼女の歌は順位以上の説得力を持っているように思えるのだ。
「革命道中」は、現在のアイナ・ジ・エンドを最もコンパクトに、しかし最も遠くまで届く形で提示した一曲である。彼女の新たな名刺代わりともいえるこの楽曲が今後どこまでチャートを登っていくのか、注目したい。
※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2025-08-20
※2:https://www.thefirsttimes.jp/news/0000664797/


























