『私の夫と結婚して』OSTがバイラル首位獲得 INI 尾崎匠海・藤牧京介のクリアな歌唱力を徹底解説
Viral Chart Focus
Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの7月30日付のTOP10は以下の通り(※1)。
1位:TAKUMI & KYOSKE(INI)「So You Can Shine」
2位:ディエゴ・マイター「To the Infinity Castle - Muzan vs Hashira Theme (from "Demon Slayer")」
3位:琳子「中華料理屋の酢豚が食べたい」
4位:はてな「夢?」
5位:HUNTR/X・EJAE・AUDREY NUNA・REI AMI・KPop Demon Hunters Cast「Golden」
6位:椎名豪「猗窩座 出現」
7位:HANA「Blue Jeans」
8位:ドン・ミゲロ「Y Que Fue?」
9位:BLACKPINK「JUMP」
10位:HALCALI「おつかれSUMMER」
今回取り上げるのは、バイラルチャート1位に輝いた「So You Can Shine」。INIの中でも歌唱曲に定評のある尾崎匠海と藤牧京介によるユニット曲である本作は、ピュアでロマンティックなメロディが印象的なラブバラードだ。Amazonオリジナルドラマ『私の夫と結婚して』日本版(Prime Video)のOST(オリジナルサウンドトラック)の第5弾として7月11日にデジタルリリースされた。『私の夫と結婚して』は、6月27日よりドラマがスタートして以降、Prime Video内ランキングで首位を獲得し、公開から30日の間に集計された日本国内の視聴者数を基準にした集計では、Amazonオリジナルドラマの中で、日本国内の視聴者数歴代1位を達成している。このドラマの好調も今回のチャートアクションを牽引した一因だと思うが、INIの活動展開もヒットの後押しをしていると考察する。
2024年からINIのオフィシャルYouTubeチャンネルで、メンバーが自ら企画して表現、そして発信するクリエイティブコンテンツ「INI STUDIO」をスタート。その中でも尾崎と藤牧の2名は、同コンテンツでオリジナル楽曲やカバーを披露している。また今年1月には、メンバー個人がプロデュースするソロステージ『LAPOSTA 2025 SHOW PRODUCED by MEMBERS』を開催したほか、2月にはユニット曲「BREATH」、「Howlin'」を同時リリース。そういったソロ・ユニットとしての活動が盛り上がる一方で、グループとしても、6月25日に3rdアルバム『THE ORIGIN』を発売。『オリコン週間アルバムランキング「Billboard Japan Top Albums Sales」で1位を記録し、1stアルバムから3作連続しての首位獲得となった。さらに5月から6月にかけてアリーナツアー『2025 INI 3RD ARENA LIVE TOUR [XQUARE]』を開催。その追加公演として、9月13日~15日、バンテリンドーム ナゴヤで『2025 INI LIVE [XQUARE - MASTERPIECE]』を開催することも発表された。
彼らは、個々のスキルアップとグループとしての躍進を並行し連続して提示することで、メンバーの個性とグループとしてのスケールアップを大衆に印象付けたのだ。この活動に対する熱量が、そのままファンの期待感に直結し、SNS上やバイラルチャートでもこれまで以上に盛り上がりをみせているように感じる。
そういった背景がある尾崎と藤牧によるバラード「So You Can Shine」が、多くのリスナーに“刺さる楽曲”となった理由は、いくつかあるだろう。まず、ドラマと楽曲の世界観がしっかりリンクしていたこと。ゆえに視聴者が楽曲に感情移入しやすくなり、恋愛という万人の共通言語を通し、歌詞も含んだ楽曲への共感がシェアで広がったのだと思う。この“感情移入”からの共感、シェアには、尾崎と藤牧の確かな歌唱力が欠かせなかった。その歌唱力について、さらに掘り下げて考えてみたい。
「So You Can Shine」は、きれいに響く2人のボーカルがメロディの良さを拾い上げ、そこに輝きを添えている。尾崎と藤牧は、2人とも中高音~高音が得意なレンジだと思う。さらに高音にスポットを当てると声質もクリアで、2人には似ている部分があるように感じる。2人でマイクリレーをしているブロックも、滑らかに歌い繋ぐ。何も知らずに聴くと、2人同時に歌うユニゾンやハモりが出てくるまで、ボーカルが2人いるという確証が持てないほど、実に自然にメロディを繋いでいくのだ。この滑らかなマイクリレーが、先述の感情移入の大きな要因になっていると考える。「So You Can Shine」は、マイクリレー、ユニゾン、ハモりの中で、それぞれの歌声が混ざり合わないように声音の違いを強調したりと、音程に対する安定感、そしてボーカリストとしてのディレクション能力と表現力が問われる楽曲である。しかし、2人とも後半に向かって感情を膨らませていくポイントでも呼吸のコントロールがぴったり合っている。両者がお互いのスキルを熟知し、相手の声を聴きながら自分の歌声をコントロールできていることには、素直に驚いた。
ラブソングという普遍性、そして彼らを知るファンだからこそ見出せるINIというグループの変わらぬスタンスにおける不変性。普遍性と不変性という2つの要素を同等のポテンシャルでしっかり体現することができたことが、同曲がバイラルチャートで1位となった最大の要因だと思う。
※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2025-07-30

























