“夏フェス”が日本から失われつつある? 厳しい猛暑で開催時期変更が相次ぐフェスシーンの現状

“夏フェス”が日本から失われつつある?

 2025年の夏も厳しい暑さが続いている。音楽フェスでいえば、サザンオールスターズが昨年、夏の暑さと向き合った結果「最後の夏フェス出演」を宣言したことも記憶に新しく、野外フェスの主催者は参加者の安全確保の方法を模索している印象だ。真夏の太陽の下でライブを楽しむ光景は夏フェスの象徴だが、それが徐々に変わりつつある。

 今年、特に大きな変化を示したのが『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』(以下、『ロッキン』)だろう。『ロッキン』は例年8月に開催されてきたが(昨年は8月・9月で計10日間開催)、今年は時期をずらし、9月13日、14日、15日、20日、21日のみで開催される。以降も9月のシルバーウィークで開催されることが発表されており、発表当時のコメント(※)を見ると、近年の気候変動を受けて以前から開催日程変更を検討していたこと、1日の来場者数が約6万人にも及ぶ上に初参加者も多いフェスであることから、観客の安全を最優先して決断に至ったことが読み取れる。

 そもそも『ロッキン』は、参加者が快適にフェスを楽しめることを常に重視していて、近年は無料の給水スポットを設置したり、「雪スポット」と題して一部のエリアで人工雪を降らせたりといった熱中症対策も積極的に行ってきた。参加者がどうすればより過ごしやすくなるかを考え、改善を続けてきたフェスなのである。今年の『ロッキン』の開催日変更は、他の野外フェスにも今後影響してくるのではないだろうか。

 直近で『ロッキン』に似た例として、SiM主催のイベント『DEAD POP FESTiVAL』も来年から開催時期をずらすことが発表された。野外フェスとしては2015年から開催されており、例年6月下旬や7月上旬に行われてきたが、2026年は4月4日、5日での開催が発表されている。案内には「暑すぎるので春フェスにします。」とも添えられており、こちらも酷暑を踏まえての決断だったことが窺える。

 他にも真夏を避けて開催されているフェスとして、主催者の西川貴教が自身の誕生日(9月19日)付近に例年開催しつつ、悪天候の影響を避ける意図で近年10月に開催がずれ込んだこともある『イナズマロックフェス』、過去には9月上旬に開催していたが、2024年より11月開催に変更となった『Local Green Festival』、例年10月開催だったが2025年は5月開催に変更された『ながおか 米百俵フェス ~花火と食と音楽と~』などが挙げられる。今後も、暑さが和らぎ始める9~11月や、屋外でも過ごしやすい4~5月に開催されるフェスが増えてくるかもしれない。

 真夏の爽快な青空の下で汗をかきながら音楽に浸る空間が失われていくのは、少し寂しくもある。一方で、気温が40度にも迫る炎天下での熱中症対策にも限界があり、身を守って快適にフェスを楽しむためにも開催時期の変更は避けられないのでは、とも思う。“夏フェス”という言葉の意味は変わりつつあるのかもしれない。

※ https://rijfes.jp/2024/message/2697/

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