櫻坂46が証明したネクストレベルへの到達 “最高地点”を刻み、究極のエンタメを届けた京セラ公演を振り返る

櫻坂46、“最高地点”京セラ公演を振り返る

 そして、ついに登場する四期生ーー彼女たちにとっての初ステージとなった6月の『櫻坂46 四期生「First Showcase」』に続く舞台が、東京ドームや京セラドーム大阪という時点で破格の待遇であり、それに見合ったパフォーマンスができるのかと不安が表出してしまうのではないかと思っていたが、そんな心配は無用だった。ムービングステージに乗ってアリーナ後方から登場した四期生9名の佇まいは、すでに数カ月前の彼女たちとは別モノのような、スター性に満ち溢れたものへと変化しており、この短期間での成長ぶりにただただ驚かされる。そして、先輩たちが圧巻のステージを繰り広げたあとにも関わらず、四期生初楽曲「死んだふり」のたった1曲で場の空気を激変させるパフォーマンスにもあらためて度肝を抜かれた。これもリハーサル期間含め、間近で目撃した先輩たちのパフォーマンスに触発された結果なのだろう。

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

 アイドル性を強調したブロックに続いては、先に触れた藤吉の表現力が際立つ「偶然の答え」や冒頭での山下のポエトリーが印象的な「TOKYO SNOW」、中嶋優月が希望と絶望が入り混じったような複雑な表情で表現する「Nothing special」など、ミディアムテンポでじっくり聴かせる曲を連発。そのブロックを締めくくるのがエピカルな展開を持つ「I want tomorrow to come」であり、ここでは四期生が初めて先輩メンバーに合流してパフォーマンスを展開する。先の「死んだふり」で急成長ぶりを提示したあとだけに、百戦錬磨の先輩メンバーに混じっても悪目立ちをするなんてことは一切なく、早くも即戦力として機能していることが窺えた。本公演での本格的な合流パフォーマンスは1曲にとどまったが、ほかの曲ではどんな表情を見せるのか、どんな化学反応を起こすのかーーと欲張りなことを考えてしまったのは、きっと筆者だけではなかったはずだ。

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

 7月の『12th Single BACKS LIVE!!』を経て、アイドルとして、そして表現者として数段上へと上り詰めた石森璃花が異彩を放つ「港区パセリ」が、すでに櫻坂46のライブに欠かせない1曲にまで進化していることを実感したあとは、ライブもいよいよ終盤戦に突入する。ここでついに、ツアーのアリーナ公演ブロックで冒頭に展開されたサーカス演出を、よりスケールアップさせた演目が我々に提示されることとなる。

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

 ドーム公演用に新たに加わった本格的なサーカス演出(実在する「さくらサーカス」による演目)が次々に展開されていくのだが、ステージ中央に設置された大車輪やその両サイドで披露されるジャグリングなどさまざまな演目を楽しんでいると、自分が櫻坂46のライブを観ているという現実をすっかり忘れてしまっていた。しかし、ピエロが床に置いたトランクを開いて、中から森田が姿を現した瞬間に場の空気は再度櫻坂46のライブへと戻り、MVの世界観さながらの「UDAGAWA GENERATION」を披露。守屋が大砲から飛び出す“れなぁ砲”も再現されるなど、たった1曲の中に「これぞ究極のエンターテインメント」と断言したくなるような演出を多数詰め込んだ贅沢なステージは、櫻坂46がアイドルグループとしてネクストレベルに到達したことを見事に証明してみせたと言っても過言ではないだろう。

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

 サーカスをモチーフにした「UDAGAWA GENERATION」の世界観は1曲のみで終了するのだが、この贅沢な表現方法を取れるのも今の櫻坂46の勢いあってこそ。「どんな色にでも染まれる」ーー櫻坂46へ改名した際、当時のメンバーはそんなことを口にしていたが、今回のドーム公演はまさに曲ごとにさまざまな顔を見せていく櫻坂46のスタイルの、(現時点での)究極の形ではないだろうか。

 「UDAGAWA GENERATION」まででの演出でさまざまな顔を見せてきた櫻坂46だったが、最後のブロックに当たる「何歳の頃に戻りたいのか?」以降では何も繕うことなく、すべてをさらけ出した“素の櫻坂46”を観ることができた。この時点ですでにライブは2時間を超えており、体力的にも限界に近付いていたのではないだろうか。しかし、彼女たちの表情からはそんな素振りは一切感じられず、山下を中心に荒ぶりまくる「もう一曲 欲しいのかい?」、森田が唯一無二の存在感を打ち出す「承認欲求」と、曲を重ねるごとに放出するエネルギーは上昇していく。そして、ライブ序盤の「Nightmare症候群」でもそのビジュアルとパフォーマンス力で異彩を放った的野美青を軸に、今の櫻坂46らしさを最良の形で表現した「Make or Break」でほぼノンストップで駆け抜けたライブ本編は幕を下ろした。

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

 長時間にわたって起承転結がくっきりと表現され、かつエンディングで的野が腕を上げたのと同時にパイロが爆発し、スクリーンに「END」の文字が浮かび上がって終了するというあっけない終わり方も、前身グループ・欅坂46時代から引き継がれた“らしさ”のひとつと言える。

『5th TOUR 2025 “Addiction”』京セラドーム大阪公演((C)Seed & Flower LLC)

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