ASP、ならず者と分かち合った喜びと別れ “完全体”8人で迎えたツアーファイナルで示した未来への覚悟

まさに激動。8月15日に開催されたASPの全国ツアー『Acid Suspicious Parental Tour』のファイナルとなった東京・LINE CUBE SHIBUYA公演は、喜びも悲しみも、さまざまな感情が入り乱れる一夜となった。

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まず、この日は事前に告知されていたとおり、今年3月から体調不良で活動を休止していたナ前ナ以の復帰公演だった。ナ前ナ以が休みに入るのと入れ替わるようにして5月に加入したイコ・ムゲンノカナタを含めた7人体制で本ツアーを回ってきた彼女たちだが、ついにこの日、8人によるASPの“完全体”が姿を現した。当然、会場に集まったならず者(ASPのファンの総称)の鼻息は荒かった。実際、開演時刻となり、ステージ後方のスクリーンが上がるとともにその後ろから登場した8人の姿にはのっけから大歓声が飛んでいたし、1曲目「TOXiC iNVASiON」の2番のAメロでナ前ナ以のパートがくると、その歓声は一際大きくなった。8人が入り乱れるフォーメーションの中でその動きがビシッと揃うと、やはり圧巻。彼女たちの歌声と客席からの声がホールの壁や天井に反響して、会場は熱狂的な雰囲気に包まれていく。

高速ドラムンベースがさらなる高揚感を煽る「Black Nails」で見せる激しいダンスとシャウト、ユメカ・ナウカナ?の「渋谷の皆さん、上がっていけますか!」という声を受けて突入した「NO COLOR S」での爆発的な盛り上がりを経て、このままライブはさらなる高みに駆け上がっていく――かと思われた。ところが、3曲終えてのこの日初めてのMCで、衝撃の事実が明かされる。
メンバー8人の自己紹介(ナ前ナ以の名乗りには「おかえり!」の声があちこちから飛んだ)を経て、あらためて「復帰になりました!」と叫ぶナ前ナ以に大きな拍手が送られるが、彼女は「ユメカとモグ(・ライアン)からもお知らせがあります」と言葉を継いだ。それを受けてふたりの口から告げられたのは、9月に行われる海外ツアー『ASP in the UK Tour』をもってグループを脱退するということだった。
「えー!」と困惑の声が客席から上がる中、「このタイミングになってしまって本当にごめんなさい」と頭を下げるユメカ。「ASPになって、このメンバーと、ならず者と作るライブの時間に何度も救われてきました。だから、大好きなこの時間を1秒たりとも無駄にはしたくありません。この先の1曲1曲、全力で一緒に楽しんでいってくれたら嬉しいです」とこのライブに懸ける思いを語る。モグも「ASPになるまで自分には何もなくて。本当にたくさんの感情とたくさんの生きる糧をもらいました。皆さんに、ならず者に育ててもらったと言っても過言ではないです。残りの1カ月間、今までもらってきたものすべてを尽くして皆さんに感謝を伝えられるように活動していきます」と思いを口にする。その言葉に、戸惑いながらも拍手を送るならず者たち。「今日は今日しかありません。8人でありったけの気持ちをひとつにして、今日しかないステージを届けます!」――モグの言葉に熱い決意が宿る。


ASPというグループは、これまでもメンバーの加入や脱退を経験しながらここまで来たし、そうやって人が入れ替わっていくことはある意味で“さだめ”のようなものかもしれない。復帰のめでたさと初期メンバーふたりの脱退発表の悲しさ、振り子のような感情に振り回されながらも、ライブは止まらない。であれば、ステージ上の8人も客席のならず者たちも、そこにすべてを懸けて楽しむしかない。衝撃の発表からの少しの間で、会場の空気はバチっと決まったように感じた。そしてライブのリスタートを告げる「TOTSUGEKI!!!!!」が鳴り響く。アッパーなダンスビートが手拍子を誘い、客席からのコールがメンバーを包み込む。ハイパーに展開していく「MAKE A MOVE」にセンチメンタルなムードが漂う「I won't let you go」と楽曲を立て続けに投下し、客席をガンガン高揚させていく8人。マチルダー・ツインズとウォンカー・ツインズの双子によるラップが放たれる「darma」に、高速ビートに乗せてリオンタウンのシャウトが轟いた「ジャ・パ・ニーズガール」。すべての感情を置き去りにするようなスピードで、ASPのパフォーマンスが繰り広げられていく。



その後も曲を重ね、客席と一体になって作り上げた「Tokyo Sky Blues」を終えるとここで再びのMCタイム。チッチチチーチーチーが「LINE CUBE SHIBUYAに立つのは初めてなので、ずっとずっと楽しみにしてきました。ここから皆さんの手もお顔も全部しっかり見えてます!」とならず者に話しかける。「今の私たちの精一杯を詰め込んだものをたくさん持ってきてます。8人のASPを見せます。まだまだよろしくお願いします!」という宣言が拍手を巻き起こす。そうして始まったのは「PLEASE!!!」。ドープなR&Bのグルーヴにのせて大人っぽいダンスが展開されていく。ならず者の声がグループを後押しするように響き渡った「Anyway」やポップな「I HATE U」、そこからビートを繋いで突入した「Blueberry Gum」では、今やASPの一員としての強烈な存在感を発揮しているイコのパフォーマンスに歓声。バラエティ豊かな楽曲を矢継ぎ早に繰り出し、ライブは終盤に向かってさらに加速していった。



最後の曲を前に、マチルダー・ツインズがツアーを振り返りながら話し出す。「新体制で始まって新体制で終わる、後にも先にもないツアーになったなと思います。このツアーファイナルは、いつか今日を振り返ったときに、ASPにとって大事な分岐点になるんじゃないのかな。この日を迎えるまでたくさんの変化がありました。でもそんな変化があるたびに、私は新しい形のASPに出会うことができたなって思います。目の前にならず者がいる限りは、どんなに大きな変化でも、プラスに変えて、未来に向かって進んでいくしかないなって思いました」。そして「やっと、8人で歌えます!」と「Get New ミライ」が始まる。客席はならず者による8色のサイリウムで美しく塗り分けられた。結果として束の間といっていい形になってしまったが、8人の“完全体”を祝福する、ファン有志による粋な演出だった。























