ミニマムジーク、愛すべき等身大の姿から繰り出す音楽の可能性 TETORAを招いた全国ツアー東京公演

ミニマムジークが全国ツアー『1st full album"標本"release「VXツアー」』を開催中だ。今年4月に初のフルアルバム『標本』をリリースした彼らは、5月3日からツアーに出発。計23公演のツアーは現在ファイナルシリーズを迎えている。
この記事では、23本中21本目となる東京・渋谷Spotify O-Crest公演の模様をレポート。チケットソールドアウトとなった同公演では、TETORAとのツーマンライブが実現した。TETORAはミニマムジークの先輩バンドであり、生粋のライブバンドとして知られている。TETORAをツアーに招いたことから、ツアーのエンディングに向かうミニマムジークの気合いが伝わってきた。
TETORAは、ミニマムジークの山之内ケリー(Vo/Gt)が好きな楽曲「覚悟のありか」でライブをスタートさせた。ライブ序盤ではスロー~ミドルテンポの楽曲を連続で披露し、包容力に満ちたサウンドで会場を包み込む。一転、「上越と大阪それぞれの土地に偉大な先輩がいます」「地元代表と言われるにはこれからもっと頑張らないといけないし、二番煎じじゃいけない」「ミニマムジークも同じ気持ちやなってライブを観てたら思います」「だからミニマムジークはライバルだと思ってる」「私らTETORAはミニマムジークに勝ちに来ました」というMCから「12月」へ繋げると、鮮やかなテンポアップとともに剥き出しの音を届けた。先輩と後輩ではなく、同じ目線でバチバチやろうと訴えかけるかのように、メンバーはアグレッシブな演奏を続ける。これにはミニマムジークのメンバーも燃えたぎったに違いない。O-Crest店長の室清登氏へ「『ムロフェス』でトリやらせてください!」と叫び、ミニマムジークとの『ムロフェス』での“対バン”を誓う場面もありつつ、TETORAは「Loser for the future」でライブを締めくくった。

続いてミニマムジークのステージへ。観客の前に現れた3人はコンタクトを交わしながら、挨拶代わりにまずは一発、ジャーンと音を合わせる。そして山之内が「新潟・上越EARTHよりミニマムジークです。よろしくお願いします!」と告げてライブをスタートさせると、鍋島ヤヒロ(Ba/Cho)、オオサキケント(Dr/Cho)による力強いサウンドが響き、山之内の歌声が会場奥へと伸びていった。観客は拳や手に持ったドリンクを掲げながら、喜んでバンドの音を浴びている。3人が物怖じせず、思いっきり歌ったり鳴らしたりしているから、観客も自然と心を開いたのだろう。実は彼らは前週の8月2日、TETORA主催のフェス『TETORA presents KAKUSHIN CLUB』に出演し、「言葉が出ないほど惨敗」したという。だからこそ「俺らの主催(ライブ)では俺らのやりたいことをやろうと本気で歌いました」と山之内はのちのMCで語っていた。

ツアーのファイナルシリーズということで、この日彼らはアルバム『標本』収録の12曲を全て披露した。『標本』は1年以上の期間を設けてじっくりと制作された作品。制作期間中にもバンドは歩みを重ねており、その変遷も興味深い。例えば、彼らの楽曲の中でもポップな部類の楽曲「アイマイニーマイン」がファンから高い評価を得たことから、「だったらもっとキャッチーな曲を」と「羊」が制作され、さらにその方向性を突き詰めた先で「取り憑かれたい」が生まれた。ライブの前半では、この3曲を連続で演奏するセクションが設けられていた。「今日は俺らのバンド人生で一番強いミニマムジークを見せたいと思います」「一人じゃ寂しいから、一緒に遊ぼう!」と観客に投げかけながら、音楽・バンド・楽器に夢中になる3人。その姿を見て、彼らがガンガンと突き進めるのは、ついてきてくれるファンのことを信頼しているからなんじゃないかと感じた。























