2010年代の終焉と功績、バズヒットから見える次世代グループの存在感ーー新陳代謝が加速するアイドルシーンの現在地
アイドルが1年間に発表した曲を順位付けして楽しもうという催し『アイドル楽曲大賞』。14回目となる2025年度の『アイドル楽曲大賞』メジャー部門はCYNHNが「ノミニー」「息のしかた」にてそれぞれ1位と3位、=LOVE「とくべチュ、して」が2位、超ときめき♡宣伝部「超最強」が4位、AiScReam「愛♡スクリ~ム!」が5位にランクイン。また、インディーズ/地方アイドル楽曲部門では、タイトル未定「空」が首位に輝き、そこからfishbowl「蒼霞」(2位)、ラフ×ラフ「君ときゅんと♡」(3位)、きのホ。「秋刀魚」(4位)、Ringwanderung「LV」(5位)と続く。
リアルサウンドでは今回も『アイドル楽曲大賞アフタートーク』と題した座談会を開き、イベント主宰の伊豆原亮一氏をはじめ、コメンテーター登壇者からはアイドル識者の岡島紳士氏、宗像明将氏、ガリバー氏に参加してもらった。
コールドスリープしたPerfumeをはじめ、でんぱ組.inc、清 竜人25、フィロソフィーのダンス、東京女子流など、キャリアを重ねたグループが活動休止や解散を発表した2025年。それと同時にバズヒットで頭角を表すアイドルグループや地方からの新鋭グループの存在も目立っている。そんな新陳代謝も見せる昨今のアイドルシーンを総括してもらった。(編集部)
『アイドル楽曲大賞 2025』ランキング結果:https://www.esrp2.jp/ima/2025/
東京女子流やでんぱ組.incらの解散、関西圏で存在感を示すアイドルグループの登場

――=LOVE「とくべチュ、して」、超ときめき♡宣伝部「超最強」、AiScReam「愛♡スクリ~ム!」、ほかには≠ME「モブノデレラ」もそうですが、世間的にも話題になったヒット曲が上位にランキングしています。
宗像明将(以下、宗像):イコラブ、超とき宣がバズヒットをたくさん出していて、これが一発目ではなく、常にそういった楽曲を出しているところが強いなと思います。
ガリバー:イコラブに関しては、「絶対アイドル辞めないで」での話題化から、喉から手が出るほど欲しかった「とくべチュ、して」というバズ曲を手に入れた万全の状態で国立競技場(MUFGスタジアム)に挑む態勢が整っていますよね。「とくべチュ」なくしてこのステップはなかった、グループにとって大事な曲になったな思います。ノイミーの「モブノデレラ」は、杉山勝彦さんが立ち上げたスクール「CoLAB」に在籍している生徒の関口颯太さんと合作で作った楽曲なんです。プロデューサーで作詞をしている指原莉乃さんの手腕は評価されて当然ですけど、杉山さんのチームでの動きが見過ごされていると思っていて。関口さんは当時16歳で杉山さんと一緒に「モブノデレラ」を作曲しているんです。そうやって若い才能を発掘・育成し、一緒に作ってきた成果が現れているのが「モブノデレラ」なのだと思います。
――“コールドスリープ”に入ったPerfumeの「巡ループ」も6位に入っています。
宗像:Perfumeのコールドスリープ発表前にリリースされた楽曲ですよね。Perfumeがコールドスリープに入るのはシーン的にも大きいことですし、「アイドル」と聞いたとき、みんなの頭に思い浮かぶ存在はPerfumeであったというのは重要なことだと思います。
――あ〜ちゃんが結婚を発表したり、かしゆかが髪をバッサリ切ったりしていて、結成から25年もの間、アイドルとしての矜持を守りながら活動してきたのかなとも想像します。
宗像:アイドルのアイコンとしてPerfumeが存在し続けていた。改めて今回6位だということを踏まえて痛感しましたね。
――でんぱ組.inc、清 竜人25、フィロソフィーのダンス、東京女子流、lyrical school、ukka、RYUTist、TEAM SHACHIなど、「アイドル楽曲大賞」常連とも言えるグループが多くランクインしてますが、解散や活動休止を発表していて、アイドルシーンの潮目が変わっているのを感じさせます。
宗像:2010年代的なものが終わっていくのも感じます。モーニング娘。のようなメンバーが全員入れ替わるシステムでない限り継続は難しくて、どこかで大ブレイクしなければいけない。それは逆説的に言うと、「アイドル楽曲大賞」にいつまでもランクインしていてもしょうがないと言われているかのようで、我々「アイドル楽曲大賞」の限界を突きつけられたようでもあると感じますね。今は変化のスピードが早い時代で、ショート動画の時代だということをこのランキングを見ていても感じます。
ガリバー:僕は東京女子流の解散発表が一番心にズシンときました。解散は今年の3月ですが、2025年1月のでんぱ組.incの“エンディング”もそうですし、2010年から活動し続けてきていて、いい音楽で、パフォーマンスがすごいのもみんな知ってるけど、それでもやっぱり限界は来てしまうんだという事実はショッキングです。2010年代の中心的グループであったのは間違いないし、活動半ばのアーティスト宣言等や、16年以上にも及ぶ活動歴含め、アイドルシーンの象徴の様なグループの歴史に幕が降りるのは、時代が変わっていくといえばそれまでなんですけど、でもここまで続けられたことを称賛するしかないです。昨年は最後の『TOKYO IDOL FESTIVAL』出演となりましたが、東京女子流の功績をリスペクトするコラボステージは涙無しには観れませんでした。
宗像:でんぱ組.incは立ち上げのメンバーである古川未鈴ちゃんがいる状態で16年活動してきたわけで、「アイドル」と聞いてPerfumeがみんなの頭の中に思いつくように、でんぱ組.incもアイコニックな存在だったんだと思います。一方で、再結成した清 竜人25は、数ヶ月で終わるはずの予定がそのまま続いていって、清 竜人さんの活動一時休止に伴って急に終わったイメージが個人的にはあったんです。いろんな事情があるなというのを感じますね。
岡島紳士(以下、岡島):アイドル市場が大きく広がりアイドル戦国時代が始まったとされる2010年から15年、2015年から数えてもすでに10年経過したので、当時から活躍していたグループが何らかの決断をするのは、仕方のないことだと思います。また、インディーズシーンを含めれば、解散や現体制終了などが多い反面、新しいグループの結成や新体制発進などのニュースもとてもたくさん目にします。他のグループへの移籍や、卒業後に裏方として活躍するアイドルも増加傾向にあるように思います。長く続いていたグループがいなくなってしまうことは寂しいですが、シーン全体やアイドル楽曲好きの立場から考えると、決して悲観的な状況ではないのかなとは思います。
――メジャーとインディーズのランキングで、ピックアップしたいアイドルはそれぞれいますか?
岡島:これまで「アイドル楽曲大賞」の上位常連だったグループが解散していく中で、2025年は新しいグループの躍進が目立ちました。インディーズでいうと、京都勢が強かった。AQ、きのホ。、0番線と夜明け前がそうです。AQときのホ。のレーベルは同じ古都レコードで、楽曲やパフォーマンスの見せ方を工夫していて、今年また伸びていく、台風の目になっていくんじゃないかなと思っています。
ガリバー:関西のライブハウスシーンの中心は、いつもミナミ(心斎橋〜難波〜日本橋エリア)だったんですよ。その求心力がランキング的には京都へとシフトしていっているのが面白い現象です。RYUTistは、2010年代の新潟・古町拠点のロコドルで若手の位置づけだったと思うんですけど、結果的に13年やっていて、いい楽曲なのは言うまでもなく、解散自体は2024年末だったわけですけど、ガラッと地図が変わったのを感じますし、最後にちゃんと存在感を残していくところは美しいなと思います。現在は静岡のfishbowl、北海道のタイトル未定が地方を拠点にしながら活動を広げている中で、RYUTistの最後のランクインが嬉しかったですね。
伊豆原亮一(以下、伊豆原):CiONは、ボーカル2人とピアノ、ユーフォニアム、サックスという編成のアイドルで、彼女たちはツーマンライブを継続的に開催しているんです。私は去年の11月に宮本佳林を目当てにライブを観に行ったんですけど、その時に観てすごく良いなと思って。私みたいに、ほかのグループを目当てで来たファンがCiONのライブを観てファンになる形で、さらに層を広げてるところはあるのではないかと思います。
ガリバー:CiONは『TOKYO IDOL FESTIVAL』の盛り上げ隊長みたいになっているんですよ。楽器を演奏しながらのライブスタイルがどのグループとも被っていないですし、特にそれが『TIF』の場ではセッションで活きていて、いろんなグループのファンを獲得している。グループ間の潤滑油のような形で面白いコラボが2026年も観られるんだろうなと自分も楽しみにしています。
宗像:イコラブ、とき宣、AiScReam、インディーズですがきゅるりんってしてみて、といったTikTok時代に沿ったものアイドルがちゃんと入ってきてるのが象徴的だなと思っています。対してインディーズの方になると、またちょっと方法論が違ってくるなという感じがあって。ライブシーンの中で、yosugalaのような昨年からさらに人気を拡大してきたグループがしっかりランキングに入っているのはいい傾向だなと思います。9位のハルニシオンは、2025年にスタートしたグループなんですよ。ブランディングやイメージがしっかり構築されているグループです。あとは、RAYが20位以内に2曲入ってきている。中でも、「plasma」は7拍で6分以上の楽曲なので、そういう独自の路線も面白いなと思いました。
――きゅるりんってしてみて、yosugalaはそれぞれどういったグループですか?
宗像:きゅるりんってしてみては、ディアステージ所属なんですけど、非常に女性に受けているグループですよね。メンバーのチバゆなさんは清 竜人25の夫人も兼任しています。マクドナルド、ahamoとのコラボレーションもやっていて、そういった大きなタイアップを持ってくるくらいに人気なんですよね。yosugalaは、TOY'S FACTORYからのメジャーデビューが決まっていて、ロック系のアイドルグループではINUWASIと並んで頭一つ抜けてる印象です。yosugalaの中だと、汐見まといさんが注目度の高いメンバーです。
――大河ドラマ『べらぼう』(NHK総合)に出演していましたね。
宗像:そうしたメディア露出もあってフォロワーがバッと増えたりして、そういった注目度、勢いを持っているグループ2組が入ってきているのがいい流れだなと思います。
坂道、イコノイジョイ、カワラボ……それぞれの道を追求するアイドルたち
――FRUITS ZIPPERが東京ドームを成功させていたり、櫻坂46の国立競技場でのライブが4月に、=LOVEも夢の東京ドームを飛ばしての国立でのライブが6月に決定し話題になっています。ほかには、HANAが『第76回NHK紅白歌合戦』への出演をきっかけにさらに人気に火が点いていたり、同じく『紅白』に出ていたAKB48の結成20周年イヤーも盛り上がりを見せていました。互いにアイドルシーンが刺激し合いながら相乗効果で盛り上がっている印象を受けるのですが、みなさんは今のシーンをどのように見ていますか?
宗像:主観になりますが、基本的に女性が支持するグループが受けていくのだと思います。BMSGのHANAも女性ファンが多いですし、そこを掴んでるところはどんどん上に行けるし、そうではないところは伸び悩むというのが顕著になっているなと感じます。どうやって女性にリーチするかというとショート動画になってくるし、それが時代の流れになっていますよね。
ガリバー:そこについては僕も同意で、女性のものになったというのを感じます。KAWAII LAB.もHANAもイコノイジョイも女性ファンが多い。かと言って、女性プロデューサーの木村ミサさんが女心を分かっていて、指原莉乃さんが女子が共感できる歌詞を書いているから、という文脈で語られるのは安易だなとも思っています。坂道グループは割と男性が多い中で櫻坂46は国立でのライブを開催しますし、男性から多く支持されているグループも息をしているというので抗っていきたいという気持ちがあります。男性の受け皿としての女性アイドルはメジャーで言うと今は坂道グループくらいで、ライブアイドルシーンに行くとまだまだ男性が多かったりしますし、僕はそこは抗い続けていきたいですね。
宗像:自分で言っておいてなんなんですが、男性女性で区分するのも実は本質的な部分ではないなと思っています。FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE、SWEET STEADY、CUTIE STREETといったカワラボの現場を観ていると、そこにあるのは大衆性なんですね。カワラボは、これまでのアイドル文化の様々な文脈を継承しながら、同時にかなり取捨選択もしていて、より受容されやすく、今の時代に必要とされる要素を考えながら、アイドルというフォーマットで新たに提示している。日本の大衆にいかにフックするかを考えているし、誰もが知っている存在にカワラボがなってきている。いわゆる一般層にどれだけリーチできるかは、今の時代に合わせてどれだけチューニングできるかで変わってくるんだろうなとは思っています。
――ガリバーさんは数年前から坂道ファンとしての危機感をこの取材の中で訴えてきていましたよね。
ガリバー:今回、坂道からは20位以内には一切ランクインしてないんですよね。乃木坂46、櫻坂46、日向坂46の3坂道でそれぞれ違うベクトルの戦い方をしていて、ここ数年でファン層も全然被らないようになってきたんです。それぞれに役割があって、差別化もされている。実態としてカワラボだったり、イコノイジョイが勢いがあるのは事実ですけど、それで坂道の動員が減っているわけでもないですし、櫻坂46は動員が伸びている状況にある。アイドルシーン全体がカワラボやイコノイジョイのような方向性にはいかない気がしますし、その中でも櫻坂46は特異で面白い戦い方をしているなと思います。
岡島:昨年からではなく何年も前からの傾向なのですが、個々のアイドルプロジェクトが何をブレイクとするのか、何を活動の目的とするのかが、変わってきているように感じます。運営側もアイドル側も目指す場所がまちまちとなり、それを外部から一括りにして分析することが難しくなっている。市場規模が大きくなり、ある程度シーンが安定したために、必ずしも世間的なブレイクだけを目指す必要性がなくなったことが要因かと思います。もちろん売れればそれに越したことはないと思うんですけど、別に紅白出演や武道館やドーム公演を達成できなくても、一定期間はビジネスとして回していくことができるし、副業みたいな形で捉えたり、自己表現したいという理由で活動しているということもあるのではないかと。「一生この世界で食っていく」という目的だけでなく、インディーズで何年か活動して卒業という形で良いという人もたくさんいて、それをファン側も受け入れる人が増えている。だから、アイドルというだけで全てを同じレールで話すのがややこしくなってきているなと思っています。
伊豆原:東京ドームといった大きい会場の話があったので、ハロー!プロジェクトのファンとしては、そういった箱でライブをやらせてあげてほしいなという思いがあります。2025年リリースの「盛れ!ミ・アモーレ」が評価されたJuice=Juiceは、5月にぴあアリーナMMでのライブを控えています。鈴木愛理もTHE FIRST TAKEでの「初恋サイダー」が話題になりましたけど、とは言っても13年前の楽曲ですから。ハロプロ結成30周年を前にして、“老舗”あるいは、“平成の象徴”みたいなポジションになっていて、現在進行形という感じがしないので、「盛れ!ミ・アモーレ」のヒットをきっかけに、もっと多くの人に今のハロプロが届いてほしいなと思います。サブスクも解禁したことですしね。




















