藤井 風、大森元貴、米津玄師、Official髭男dism……MVで発揮された“名演技”に集まる注目

 9月5日にリリースされる藤井 風の3rdアルバム『Prema』より、「Love Like This」の先行配信が8月1日にスタートした。同日にMVも公開され、藤井の演技が話題を集めている。
 
 MVはラブストーリー仕立てで、現代のヨーロッパが舞台だという。異国情緒あふれる映像が、全編英語詞かつ爽やかな曲調の「Love Like This」と重なり、まるで1本の映画のような作品だ。美しい海と街並みが広がるなかで、藤井が演じる男性と、彼が愛しているのであろう女性との物語が繰り広げられる。藤井が女性に向ける柔らかな笑みからは、曲のなかで繰り返される〈I’ll never find another love like this〉(こんな愛はもう二度と見つからない)のフレーズが感じ取れるだろう。しかし後半、物語は予想できない方向へ――。「Love Like This」という曲が持つ甘くもどこか儚い雰囲気が、MVでの藤井の演技によって引き立てられている。
 
藤井 風 - Love Like This [Official video]
 ほかにも、こうしたアーティスト自身の演技が印象に残るMVを挙げてみたい。直近でいえば、Mrs. GREEN APPLEの「天国」も衝撃的な一作だろう。MVは、一輪の花を誰かが大切そうに撫でるシーンで幕を開ける。曲が始まり部屋の全体像が映し出されたところで、その手の主が大森元貴(Vo/Gt)だと分かる。「天国」は、彼自身が主演を務めた映画『#真相をお話しします』の主題歌であり、MVで大森が演じている男性は、映画での彼の役とも重なるように思う。刻一刻と迫る“その時”を前にして、曲で歌われている憎悪や悲しみを、大森は視線や表情のみで静かに伝えている。そしてなによりも、ラストシーンで彼が浮かべる解放されたような表情と、そこからの展開には考えさせられるものがあるだろう。このMVを観て、あなたは何を思うのか。胸に迫る大森の演技とともに、そう問いかけられているように感じる。
 
Mrs. GREEN APPLE「天国」Official Music Video
 米津玄師は、「月を見ていた」のMVで異なる3つの役を演じている。映像には3つの世界線が描かれており、それぞれで違う役を演じているのだ。米津はこれまでにもMVでさまざまなキャラクターに扮し、なかには「KICK BACK」での筋トレに勤しむなどコミカルなものもあったが、「月を見ていた」ではシリアスな演技が印象的。女性との別れのシーンで見せる思い詰めたような表情や、兵士に扮した際の目での演技など、違う人物を演じ分けながらもどれも繊細に感情を表現している。〈生まれ変わったとして 思い出せなくたって/見つけてみせるだろう あなたの姿〉という歌詞と米津の切ない演技がリンクし、壮大な愛を描いた作品に仕上がっているように思う。
 
米津玄師 - 月を見ていた Kenshi Yonezu - Tsuki Wo Miteita / Moongazing
 Official髭男dismも、「SOULSOUP」のMVで演技に挑戦している。メンバーが扮するのは、曲名にちなんでラーメン屋で働く料理人見習いだ。彼らは師匠の技を学びながら仕事に励んでおり、店を訪れる個性的な客たちを盛り上げている。しかし、途中で師匠が倒れてしまったことをきっかけに物語は急変。師匠を蘇らせる“一杯”を作るために奮闘するという、ハチャメチャなストーリーが繰り広げられている。まるで漫画のキャラクターのようにコミカルな演技を見せるメンバーの姿には、思わず頬が緩んでしまう。演奏シーンやアニメーションシーンも含め、ハイテンションな楽曲とあわせて明るい気持ちにさせてくれるMVだ。
 
Official髭男dism - SOULSOUP [Official Video]
 こうしたアーティスト自身が演技を行うMVは、普段のパフォーマンスとはまた違った彼らの姿を目にできるのが新鮮だ。また、アーティスト自身が演じることで、楽曲に込められた感情、想いがより伝わってくるように思う。アーティストの演技が光るMVは楽曲に奥深さを与え、観る者を曲の世界観へと引き込んでくれるのだ。
 

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