One Direction、BTSからThe 1975、スピッツ好きまで必聴! Re:name、“ポップ”と共振する極上のバンドグルーヴ

Re:name、“ポップ”と共振するグルーヴ

 バンドに憧れてバンドをやるのは自然な流れだし、ポップアーティストに憧れてポップアーティストを志すのもまた自然な流れだ。近年の音楽シーンではジャンルの壁が薄くなったこともあってか、オリヴィア・ロドリゴやmgk(マシン・ガン・ケリー)のように、「ロックバンドに大きな影響を受けたポップアーティスト」といったケースも増えてきているとはいえ、こうした「形式」と「継承」という点においては、バンドというフォーマットは今なお強固である。ただ、あえて言えばストリーミングサービスやSNSの台頭も相まって、フォーマットとしてどこか窮屈な印象を与えることもあるかもしれない。

 だからこそ、「ポップアーティストに大きな影響を受けたロックバンド」として存在感を放つRe:nameは興味深い。2016年に結成し、間もなく結成10周年を迎える彼らは、高木一成(Vo)、Soma(Gt)、ヤマケン(Dr)にサポートベースを加えたオーセンティックなバンド編成を起点に、驚くほどに現代のポップシーンと呼応するサウンドを鳴らしている。

幅広い“ポップ”を昇華したフレッシュな音楽体験

 主要なソングライティングを担当している高木は、中学生の頃に聴いたOne Direction(以下、1D)をきっかけに音楽に夢中になり、5 Seconds Of Summer(以下、5SOS)を通してバンドに興味を持ったという人物だ。以降もThe 1975やThe Cureといったバンドからの影響をインタビューなどで話すことはありつつ、それと同じくらいにジャスティン・ビーバーやBTSの名前も出てくる(さらに、Somaとヤマケンもポップミュージックに大きな影響を受けており、特にヤマケンはサザンオールスターズやMr.ChildrenといったJ-POPを中心に聴いていたという)。

 これは、筆者自身も1Dや5SOSのファンだった身として思い切って書くのだが、端的に言って彼らは、当時のいわゆる“バンド好き”からは軽く見られることが多く、たくさんの音楽好きの中にいると、どこか肩身の狭い思いをすることが多かった。だからこそ、彼らからの影響を公言するRe:nameの登場は鮮烈で、その「ポップであることを恐れない」姿勢に対して、最高にクールだと感じるのだ。

 そうした姿勢は、楽曲においても存分に発揮されている。彼らの楽曲は一聴するだけでメロディが頭から離れなくなるほどにキャッチーで、海外のヒット曲と並べて聴いても違和感がないほどに純度の高いポップミュージックだ。それでいて、「バンド」という編成だからこそ生まれるであろう音像やグルーヴがしっかりと感じられるため、結果として、他では決して聴くことのできないような、フレッシュな音楽体験が生まれているのである。

 2024年にリリースされ、TikTokを中心にバイラルヒットを記録した「24/7」は、やはり象徴的な楽曲と言えるだろう。ややタイトめに鳴らされるピアノの音色をバックに爽やかな歌声が広がっていくイントロを起点に、少しずつ景色が広がっていくようなアレンジとともに高揚感が高まり、心地よいムードのまま歌いながら踊りたくなるサビへと突入していく同楽曲は、バンドサウンドではありながらも、むしろBTS「Permission to Dance」のようなポップソングを彷彿とさせる。だが、軽やかなギターのフレーズやカッティング、力強いドラミングがバンドならではのグルーヴ感を生み出していて、まるで、それぞれの楽器がポップグループのメンバーとして、音に身を委ねて踊っているようにすら感じさせる。こうした「バンド編成で奏でる直球のポップソング」だからこその魅力は、まさにRe:nameだからこそ作り上げられるものだろう。

Re:name 「24/7」Music Video

 ひとくちに「ポップソング」といっても、その音楽性がアーティストや時代によってまるで異なるように、Re:nameの音楽性も実に多岐に渡っている。煌めくようなギターのアルペジオが印象的な、エバーグリーンな魅力の詰まった「Light」は、ヤマケンが作詞を担っていることもあってか、Mr.Childrenやスピッツのような90年代の上質なJ-POPを彷彿とさせる。だが、サビで打ち鳴らされる激しいリズムとアンセミックな高揚感は、(2000年代後半以降の)Coldplayのようなスタジアムで映える海外のポップロック的なアプローチに近い。また、スモーキーな歌声や美しいピアノの音色に魅了される「Magic Hour」で繰り広げられる壮大かつエモーショナルな音像に3rdアルバム(『A Brief Inquiry Into Online Relationships』)以降のThe 1975が脳裏によぎったり、一方、打ち込みで構築されたグルーヴィなエレクトロ/R&Bの「TOY」ではギターが一切鳴らされることなく硬質な世界観を貫いていて、SHINee「View」やTOMORROW X TOGETHER「Blue Hour」のようなハウスミュージックを経由したK-POPからの影響が感じられたりと、その引き出しはかなり多様だ。

Re:name「Light」Music Video
Re:name「Magic Hour」Music Video
Re:name「TOY」Music Video

 バンドという編成でありながらも、メンバーが影響を受けた90年代~00年代の国内外のポップソングと、(K-POPに象徴される)時代やトレンドを色濃く投影した最先端のポップソングの魅力を躊躇うことなくミックスし、楽曲によっては「バンドで演奏する」という既成概念すら放り投げてしまうRe:nameのスタイルはあまりにも痛快で、強烈な中毒性を内包している。だが、それでいて、その楽曲には常にどこか息遣いや、躍動する楽器の音色、印象的なフレーズといった「人間らしい」手触りが感じられ、そうした質感が余白なしで徹底的に磨き上げられてしまう最先端のポップソングにはない「親しみやすさ」を生み出している。だからこそ、彼らの音楽を聴きながら日常を過ごしていると、どこか寄り添ってくれているような感覚を覚えるのかもしれない。

新曲「KISS ME HONEY」「I’ve」ではさらなるトライも

 今年2月に4枚目のアルバムとなる『GENIUS FOOL』をリリースしたばかりのRe:nameだが、その勢いは留まることなく、直近でも新曲の発表が続いている。7月2日に配信開始された「KISS ME HONEY」は、美しいコーラスワークと(The Weeknd「Can’t Feel My Face」の系譜でもある)抑揚の効いたグルーヴィなサビのコントラストが冴え渡る楽曲で、前半と後半で大きくキャラクターを変える高木の歌声も相まって、心地よく翻弄される感覚に浸りたくなるような仕上がりだ。

KISS ME HONEY

 一方、8月6日リリースの「I’ve」は強靭なベースラインが牽引し、高木のシャウトも炸裂する激しいガレージロックナンバーとなっており、改めて、とても同じバンドとは思えないほどの振り幅の大きさに驚かされる。同楽曲は間違いなくキャリア史上屈指のロック方面に振り切った楽曲だが、「Re:nameらしい」ポップ性はもちろんここでも存分に発揮されており、メロディどころか、どの楽器の音色も一度耳にしたら頭の中から離れないくらいキャッチーに磨き上げられている。ガレージロックの系譜といえば、近年ではMåneskinが印象的だが、この突き抜けたキャッチーぶりはやはりJ-POPの影響を色濃く投影できるRe:nameだからこそのユニークなものだろう。

I've

 『GENIUS FOOL』で思いっきり提示してみせた振り幅の広さをさらに拡大してみせる今のRe:nameの動きには驚くばかりだが、彼らはなんといってもバンドであり、音源での「バンドという形式に固執しない」という割り切った姿勢が生み出す自由自在なアレンジを、卓越した演奏技術によって「バンドとしての表現」に落とし込んでみせるライブは必見だ。今年の夏以降は『TOKYO CALLING 2025』や『イナズマロック フェス 2025』など日本各地のフェスへの出演を予定しており、持ち前のポップサウンドでオーディエンスを魅了してくれることだろう。また、その先にある「結成10周年イヤー」にも期待のかかるところだ。ポップであることを恐れることなく突き進み、音楽シーンの風穴を軽やかに開けようとするRe:nameの姿を、ぜひ目撃してほしい。

◾️Re:name リリース情報
2025年8月6日(水)リリース
配信シングル「I’ve」
https://lnk.to/rename_ive

2025年7月2日(水)リリース
配信シングル「KISS ME HONEY」
https://lnk.to/rename_kissmehoney

◾️アルバムツアー追加公演情報
『Re:name ONE MAN LIVE Encore Live Tour 2025「Genius Boy’s」in TOKYO』
2025年8月9日(土)
東京・渋谷Spotify O-nest
OPEN 18:00 / START 18:30
¥4,200+1D

公式HP: https://renamejpn.com/

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる