新着MVランキング:「モニタリング」に続くヒット再び DECO*27×初音ミク「チェリーポップ」の面白さ
MV Chart Forcus
毎週更新される「YouTube Music Charts」ウィークリー ミュージック ビデオ ランキングより、MVをはじめとした音楽関連の新着動画から上位10作品/楽曲を取り上げ、ランキング化&レビューしていく連載「MV Chart Focus」。7月25日〜7月31日のウィークリー新着のTOP10は以下の通り(※1)。
1位:DECO*27「チェリーポップ feat. 初音ミク」
2位:LiSA「残酷な夜に輝け」MV
3位:Aimer「太陽が昇らない世界」MV
4位:ORANGE RANGE「花」THE FIRST TAKE
5位:SixTONES「Stargaze」MV
6位:宝鐘マリン「スキスキDieスキ超Ayeシテル」original anime MV
7位:TWICE「ENEMY」MV
8位:ME:I「THIS IS ME:I」MV
9位:Acid Black Cherry「1/3の純情な感情」MV
10位:B&ZAI「なつ♡あい」Dance Practice
今週のランキングで最高位となったのはDECO*27の「チェリーポップ feat. 初音ミク」だ。DECO*27は人気ボカロPのひとりとして長きにわたってコンスタントにヒット曲を放っており、昨年発表した「モニタリング」がTikTokなどのショート動画プラットフォームでも絶大な人気を博し、バイラルヒットとなったのも記憶に新しい。
そんな「チェリーポップ feat. 初音ミク」はチップチューン風の電子音を織り交ぜたポップな高速ダンスロック。イントロにはじまり楽曲中で何度も登場するカウベルのすっとぼけた響きが醸し出す緩急や、オーケストラルヒットの響き、一瞬登場するダブステップのベース、地味に挿入される歪んだハードスタイル系のキックなど、スタイリッシュながら細かいギミックは、悶々とした想いに振り回される歌詞に寄り添いつつ、絶妙なジャンル横断的“過剰さ”を演出している。MVは、ロングヘアをお団子にして左右にまとめ、着崩した制服姿の初音ミクが印象的なイラストを軸に、モーションタイポグラフィを駆使して動きを作り出すという定番とも言えるスタイルだ。デフォルメされたキャラの紙人形風アニメーションも含めて、毎度ながら遊び心のあるビデオに仕上がっている。
今回、DECO*27とともにこの曲の編曲を担当したのはHayato Yamamoto。インディーズでのバンド活動を経て、現在は作編曲家として辣腕をふるうYamamotoだが、ふたりは近作でよくタッグを組んでいて、昨年DECO*27がリリースしたアルバム『TRANSFORM』の大半の楽曲に編曲ないし共同編曲として参加。前述の「モニタリング」もDECO*27とYamamotoのタッグによるものだ。同アルバムではラウドロック的なダイナミックさとエレクトロニックな要素をシームレスに掛け合わせるポップな折衷性を発揮したサウンドが展開されているが、その点でYamamotoの貢献は大きいだろう。
ちなみに、YamamotoはAiScReam「愛♡スクリ~ム!」の作編曲(DJ Chika a.k.a. INHERITと共同)、M!LKの「イイじゃん」の作詞、作曲、編曲(作詞曲は岡嶋かな多と共同)を手掛けており、言ってみれば2025年上半期バイラルヒットの目玉ふたつに関わっている。強い。強すぎる。もっとも、「愛♡スクリ~ム!」、「イイじゃん」、そして今回取り上げた「チェリーポップ」だけを取り出したところで、そこに共通性を見出すのは難しいが(しいて言えば、程度の差こそあれダンスミュージック的な要素の重要性だろうか)、その仕事をより俯瞰的にチェックしてみると、ある意味、J-POPの現在地を示すひとりと言えるかもしれない。
※1:https://charts.youtube.com/charts/TopVideos/jp/weekly