UVERworldが高みを目指し続ける理由 揺るぎない音楽愛、結成25年で手にした大きな“気づき”

結成25周年、デビュー20周年を迎えたUVERworldが2年ぶりのニューアルバムをリリースした。タイトルは『EPIPHANY』。それは“気づき”や“突然のひらめき”という意味を持つ、道しるべなき道を走り続けてきたバンドの最高到達点であり、いまだ進化し続ける彼らの哲学を象徴しているとも言える言葉だ。
ベテランと呼ばれる域に達しても、今なお攻撃的な姿勢を貫く6人のモチベーションはどこにあるのか。先日開催された東京ドーム公演『UVERworld LIVE “EPIPHANY” at TOKYO DOME』について、結成25周年を迎えたバンドのターニングポイントについて、そしてニューアルバムに込めた思いについて、TAKUYA∞(Vo)、克哉(Gt)、彰(Gt)に現在の胸の内を聞いた。(宮本英夫)
彰「満場一致で“最高!”となった」――歴史を感じさせたドームでの演出
――アルバムの話に入る前に、素晴らしかった6月14、15日の東京ドーム公演を振り返らせてください。どんな2日間でしたか。
克哉:やり切れた感じもあったし、かといって燃え尽きた感じもなかったし、25年の集大成として過去最高のライブができたと思います。独りよがりなだけじゃなくて、音楽で1つになれた感じがあって、本当に幸せな時間でした。毎回「あそこはああしといたらよかったな」と思うことが多々あるんですけど、それがなくて、終わった後の数日間は満たされていましたね。
TAKUYA∞:人生最高の思い出ができました。アニバーサリー感がありつつも、未来を見据えて、自分たちの一番のライブができたと思いますし、過去の全てのライブを更新できた感じがします。そしてこれからのライブが楽しみになったというか、もっといいライブをしていきたいなという気持ちが強くなったので、早くライブがしたいですね。
彰:終わった瞬間、最高だったと思いました。ただ“ライブあるある”というか、僕はよかったけど、他のメンバーはあんまりよくないと思っていることも結構あったりするんです。でも、東京ドーム2日間が終わった時は満場一致で「最高!」となっていて、すごくホッとしました。自分たちがやってきたことが、しっかり結果として出せたと思います。

――僕は2日目を観ましたけど、サブステージでのMCで、彰さん、かなり長くしゃべってましたよね。珍しく。
彰:しゃべり終わった後、「よし!」と思いました(笑)。あれは予定調和じゃなく、25年前だったら考えられないことなので、そこでも25年の成長を実感できました。
――あのライブの中で、バンドの歴史の重みを特に感じた瞬間があって。それはTAKUYA∞さんのマイクを筆頭に、メンバー全員が“人生で最初に手にした楽器”を持ち寄って演奏した「CHANCE!」。あの時、何を思っていましたか。
克哉:「これを東京ドームでやってんねや」みたいな感じはありましたね。続けてきたから今があるということを、お客さんも喜んでくれるけど、自分が一番思い出すというか。音がどうこうという問題じゃなくて、気持ちが一番大事やなという、バンドをやり出した時の感覚をその場で思い出させてくれました。
TAKUYA∞:25年後もちゃんと使えるって、SHUREの製品はすごいな……と思いました(笑)。そもそも実家のクローゼットを開けて、「あ、まだあった」みたいな感じで当時のマイクを偶然見つけて、みんなにも「昔の楽器、ちょっと持ってきて」みたいな、そんな軽い気持ちで始まったんですけど、東京ドームのステージで音を鳴らす瞬間に事の重大さに気づいたというか。これがどれほど意味のあるものなのかを感じられたので、よかったと思います。
彰:僕は「あのギター、東京ドームで使ったよ」って、すぐに両親に写真を送りました。しかも、安っぽいとかそういうことじゃなくて、いい意味で今の楽器じゃ出ない音がして。それはそれでよかったです。
TAKUYA∞、“本当に愛せる曲”に辿り着いたターニングポイント
――結成25周年、デビュー20周年を迎えたことについても質問させてください。バンドにとって、ターニングポイントだと感じる瞬間はありましたか。
TAKUYA∞:ターニングポイントか……。
――音楽的なことでも、メンタル的な話でも、どちらでも。
TAKUYA∞:ああ、それで言うと、2010年に東京ドーム(『UVERworld LAST TOUR FINAL at TOKYO DOME』)をやって、その後にメンバーと話したことがあって。結果はもう十分証明されたし、「ここからはもう売れなくてもいいよな」「好きなことしようぜ」みたいな話をしました。やっぱりそれまでは結果を求めていたというか、評価されたかったし、自分たちが売れていくことに対していろんな人が喜んでくれるのが嬉しかったけど、「もういいか」みたいな。インディーズの頃を思い出して、自分たちのやりたいことをもう一度やり直そうという話をした時期があって、そこからですかね。本当に自分たちが好きだと思える曲ができ始めたのは。

――でも結果で言うと、売れなくていいやと思ってから、さらにUVERworldはバンドとしてのスケールが大きくなっていきましたよね。
TAKUYA∞:自分に響くものを、ちゃんと純粋に作れたのが大きいと思います。僕は本当に音楽が好きだし、UVERworldが好きだし、しっかり自分が愛せるものを作った結果、それがいろんな人に広まるんだなということは、いろんなものづくりに言えることだと思うんですけど。例えば世界中で売れているラブソングも、その作家さんが自分の一番好きな一人のために書いたものが、結果的にたくさんの人に広まっていくということだと思うんですよね。UVERworldにも、そういうことが起きたんじゃないかなと思います。自分たちのために、しっかりと自分たちが愛せるものを作った結果、それに気づいてくれる人がたくさんいたということじゃないかなと思います。
――間違いないですね。
TAKUYA∞:ただそこで、離れていった方もいると思うんですよ、おそらく。僕たちが好きなことをやったことによって、「これは自分の好きなUVERworldじゃないな」と思われた方もいるとは思います。それはそれで仕方がないと思いますし、でもこれからも1000曲、2000曲、3000曲……と書いていけるので、今まで1回でもUVERworldを好きになってくれた人に、もう1回好きになってもらえたらいいなという気持ちもずっと持っています。
「“また戻ってきたんだ”と思ってもらえるんじゃないかな」(克哉)
――ではアルバム『EPIPHANY』の話に行きましょう。これまで以上にバンドアンサンブルの強みを感じさせる、非常にダイナミックなロックアルバムだと思いました。どんなふうにでき上がっていった作品ですか。
TAKUYA∞:1枚目からずっとそうなんですけど、アルバム単位でテーマを設けて「こういう作品にしていこう」ということはなくて、その時その時で自分たちがやりたい楽曲、聴きたい楽曲を作っていって、ある程度曲数が溜まったらアルバムにするという感じで作っています。今回もそうです。

――この2年間、曲作りの調子はよかったですか。
TAKUYA∞:いや、いいとは言わないですね。常によくはないです(笑)。やっぱり、それなりに時間がかかりますから……簡単ではないよな?
克哉:簡単ではない。常にしっかり考えて、しっかり悩む。
TAKUYA∞:でも、調子悪いかと言われたら、悪くもないし。
克哉:「曲作りってこういうものなんやろな」という感じなんですよね。「こっちのほうがいいかな」とか、常に悩んでるし。人の曲やったらなんとも思わないけど、自分の曲やったらめっちゃ気になるんですよ、ちょっとしたことが。
TAKUYA∞:僕はアルバムを作り終わった瞬間が一番モチベーションが高いんです。あの調子でもっと行けたら、再来月ぐらいはもう1枚出せます(笑)。
克哉:すごかったよな。TAKUYA∞、いつ考えてるのかなっていうぐらいのペースで歌詞を詰めていくんで。朝メール来て、昼メール来て、夜メール来て、「いつ寝てんねん」って思う。
TAKUYA∞:そういう時は、分眠できるので。ちょっと寝て起きてすぐ作業するみたいな感じ。
――アルバム『EPIPHANY』が上がって、今思うことは?
克哉:僕はそこまで思ってないけど、20年追いかけてくれてるファンの方は「また戻ってきたんだ」と思ってもらえるんじゃないかな、と。前作(『ENIGMASIS』)と前々作(『30』)の時に、音作りや曲調において自分たちでも思い切ったところに行けた気がしていて。それがあったからこそ、そっち方面はもういいかなという気持ちになれて、自分たちに戻るじゃないけど、得意分野をもう1回出そうという感覚はちょっとあったのかもしれない。僕は常に新しいものを作ろうと思ってやっていたんですけど、曲を集めて聴いてみたら、そんな感じになったんじゃないかな? とは思います。新しい音像もあるんですけど、結果的に、ずっと追いかけてくれてるファンの人たちが安心して聴いてくれるアルバムになったかなって。

――曲の構成もわりとシンプルで、電子音少なめという印象は、聴いていて確かにありました。
克哉:アルバムの前のシングル曲ぐらいから、そういうバンド内の流れもあって。やっぱり気持ちいいし、古いというわけでもないので、それを曲に落とし込めたらいいなという感覚はありました。入れるところにはがっつり入れつつ、必要ないところには電子音を入れないとか。そこはちゃんと振り切って、中途半端なことはせずに、足し引きはちゃんと考えられたと思います。
彰:この時期に、メンバーみんながやりたいことで作った12曲かなという感じです。アルバム単位での一貫性はなくて。曲ごとに音が全然違うんですけど、今は環境や気分ですぐに音を変えられる時代じゃないですか。一昔前は、アルバム単位でレコーディングスタジオを借りて、限られた機材の中でやっていたんですけど、今は個々でやっちゃうので。より自由になって、日に日に便利になっている環境をうまく使えたかなという感じはします。
――彰さんは前作の時にも、ギターはほぼ家で録ってると言ってましたよね。
彰:そうです。それこそ寝起きでも、フレーズを思いついた時すぐに録れるし。みんなでスタジオに集まって限られた機材で録る大事さも、もちろんあると思うんですけど、この12曲を作ってる時に関してはそうじゃなかったので。だから次回はまたスタジオにアンプを並べてやりたいなとか、ちょっと思ったりもしています。
――TAKUYA∞さんから見て、『EPIPHANY』はどんなアルバムですか。
TAKUYA∞:僕は本当にUVERworldが大好きだし、音楽が大好きだし、その気持ちに従うという意味で、余計なことはほぼ考えないんですよ。戦略的なものとかは本当に何も考えてなくて、ただ純粋に自分の愛しているものに対する気持ちを信じているので、(歌詞としても)本当に自然に出てきたものを書いていくんですね。結果的にでき上がったものを見ると、ファンの人へのラブレターみたいな感じになったなという気持ちはあるんですけど、今僕はそういう気持ちなので、それはそうだよなって。彼ら彼女らに感謝しているし、愛も伝えたいし、それが素直に出てきたものだなと思います。彰みたいに寝起きでギター弾くのもいいし、僕も同じような感じでそれが生活の一部になっているから、「仕事としてこういうふうにしていくからこういう過程が必要だ」とか、「準備をこうしていく」とかじゃなくて、もう本当に生活の中にUVERworldがあるので、それが答え合わせのようにでき上がったのがこのアルバムかなと思います。


















