天音かなた、長所も欠点もクリエイティブに昇華 等身大の自分を詰め込んだ最新アルバム『Trigger』を語る

天音かなたが2ndアルバム『Trigger』をリリースした。前作『Unknown DIVA』から1年4カ月、前作から引き続き様々なクリエイターが参加しているが、天音かなたのさらなる表現の深化を感じる一枚に仕上がっている。
有明アリーナで1stソロライブ『LOCK ON』を8月に控えるなか、天音は自身の音楽活動の広がり、よりこだわりを見せる作詞作曲のプロセスをどのように捉えているのか。『Trigger』の制作エピソードと共に、天音自身の率直な音楽への想いを聞いた。(編集部)
もう思い残すことはない、という気持ちで作り切れました
ーー2ndアルバム『Trigger』の完成、おめでとうございます。1stアルバム『Unknown DIVA』から約1年4カ月というスパンはなかなか早いペースですよね。
天音かなた(以下、天音):そうですね。「2枚目のアルバムも出したい」という気持ちがあったので、リリースできることが決まったときは「また出せるんだ!」という喜びでいっぱいでした。すごく嬉しいです!
ーー2枚目のアルバムとして、内容に関してはどんなものを目指しましたか?
天音:前作は1枚目ということもあって、自分の夢をいろいろ叶えさせてもらったんですよ。好きな作家さんに楽曲提供をお願いすることを最優先にして、とにかくいい思い出作りをさせてもらったというか。でも今回は、もっと次に繋がるような内容にしたいなという思いを持って、制作を進めていった感じでしたね。
ーーそんな思いを持って完成させたアルバム。率直にどんな手ごたえを感じています?
天音:どの楽曲も聴きやすさを一番に意識して作っていったところもあったので、キャッチーな側面がかなり大きい作品になったかなと思っています。どの曲もみんなに気に入ってもらえるんじゃないかなと。自分的にはもうめっちゃ名盤になったと思ってます!
ーー今回も様々なクリエイターが参加されていますが、そのセレクトはどんな基準で?
天音:前作同様、自分の好きなクリエイターさんを指名させてもらった曲もあるのですが、今回はそうでない選び方をさせてもらったりもしたんですよ。元々、自分の好きな曲があって、それを作った方をあらためて調べてお願いしてみたりとか。ホロライブの他の子がまだ頼んだことのないクリエイターの方とご一緒させていただいたりとかもしましたね。あとはクリエイターの方への先入観を排除して、純粋に楽曲の良さで選ばせていただいたものもあります。どの曲にも自分の思いやこだわりを詰め込ませていただくことができたので、自分自身がまず大好きな曲ばかりになりましたね。
ーーアルバムのオープニングを飾る1曲目「Last-resort」は草野華余子さんが作詞・作曲を手掛けられています。これはもうリアルサウンドでの連載「天音かなたは音楽を学びたい!」がきっかけとなって実現したコラボですよね。
天音:いやもう本当にありがとうございます! あの連載で草野さんと対談しなければ、楽曲提供を頼む勇気はいまだに出てなかったと思います(笑)。草野さんは本当にお優しい方で、今回の楽曲に関しても僕のことをいろいろ調べてくださった上で作っていただいたので、歌う時にもめちゃくちゃ気合いが入りましたね。
ーー対談の時点で草野さんは「いろいろ話ができたから、今すぐにでも曲が作れそう」といったことをおっしゃっていましたけど、今回のタイミングであらためて何かやり取りはされたんですか?
天音:できればアルバムのリードになるような曲をお願いしたいです、というお話をまずさせていただいて。その上で、さらに内容に関してもいろいろお話しました。かなたは陰キャですけど、心の底にはけっこう野心があるんです。その野心っていうのは、お金のためとか生活のためとかではないし、誰かよりも上に行きたいという気持ちでもなく、過去の自分を越えたいという美学的なこだわりなんですよね。そんな話を草野さんにも話させていただいたところ、その思いをものすごく汲み取った曲を作っていただけたんです。
ーー天音さんの秘めたる強さが明確に描かれている印象ですよね。〈撃たれる前に撃てば無問題〉というフレーズがあったりもしますし。
天音:これは草野さんにもお話させていただいたんですけど、以前ホロライブのみんなが参加するゲームのイベントで、大先輩のことを容赦なく撃ち倒してしまったことがあって。そのことに関してはいろいろな意見があるとは思うんですけど、自分としては「あ、そういうことができるようになったんだな」って、ちょっと嬉しい気持ちがあったんですよ。もちろん後で「先輩、すみませんでした」って言いましたし、ちょっと反省もしたんですけど、でも自分の中では悔やんでいないというか。普段はあまり見せないようにして生きてはいるけど、何かの目的があるのならば過激なことでも厭わないみたいな、そういう僕の側面が見えるような曲になったらいいなと思っていたんですよね。
ーーBLACK ALBATROSSさんによるロックなアレンジも含め、まんまな曲になりましたね。
天音:まんまな曲になりました! 聴いた瞬間、ロックなサウンドも含め、「これこれ! 最高!」って思っちゃいましたね。僕が話したことが、草野さんならではの表現で散りばめられていて。本当にお願いしてよかったなって思いました。特に〈死に物狂いじゃ死にきれないんだわ〉というフレーズが、ものすごくかなたっぽいなって。自分は何かダメなことがあったとき、「なんだよー!」って不満は言いつつも、諦めずにまた挑んでしまうんです。そんな泥臭さが出ているフレーズだったので、すごく嬉しかったです。
ーーボーカルには鬼気迫る力強さとともに、揺らぎなき決意が込められている印象です。
天音:レコーディングには草野さんも来てくださって。その日の僕は、喉が本調子じゃなかったんです。いつもは出る声が出ないみたいな感じで、ちょっとヘコみかけたんですけど、そこで草野さんが優しく、しかも的確なアドバイスをしてくださって。下の方に叩きつけるように歌ったら声が出るよとおっしゃったので、その通りにやったら本当に声がちゃんと出たんですよね。それがもう魔法みたいで、すごく印象的でした。
ーーこういったロックチューンがアルバムの1曲目に収められたのはだいぶインパクトがありますよね。一気に引き込まれる感じで。
天音:そうですね。曲順を決める際、運営さんが提案してくださった案もあって。それは別の曲が1曲目だったんですよ。でも僕としては絶対に「Last-resort」で始まるのがいいと思ったので、そこは貫かせていただきました。せっかく「Trigger」というタイトルのアルバムなので、1曲目でみんなのことを撃ち抜きたいなって。
ーー対談で草野さんは「届けるためにはもっと傲慢でわがままになってもいい」とおっしゃっていましたよね。今回の制作では、その言葉を実践できたところもあったんじゃないですか?
天音:5年半活動してきたことで、そういう部分も多少は出てきたようには思うんですけど、まだ完全には傲慢、わがままにはなりきれていないかも。自分の意見を言うにしても、「もしダメだったらいいんですけど……」みたいな感じですし(笑)。ただ、自分名義のアルバムだし、次も出せるという保証はないわけなので、できる限り自分の意志は入れていきたいという思いで頑張りましたね。もう思い残すことはない、という気持ちで作り切れました。


















