Maverick Mom、『前日譚』で刻んだメジャーへの決意 変幻自在な“カオスポップ”が鳴らす新時代の産声

結成4カ月にして『TEENS ROCK 2022 GP FINAL IN HITACHINAKA』で優勝し『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』へ出演、翌年にはSPEEDSTAR RECORDS30周年記念イベントのオーディション『LIVE the SPEEDSTAR』も勝ち抜き、鮮烈な幕開けを飾った4ピースロックバンド・Maverick Mom。あまりにも順風満帆な滑りだしゆえに、少しくらい驕ってしまっても不思議ではないものだが、彼らはいつだって地に足をつけて、着々と歩みを進めてきた。
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理想郷への船出を告げた『ONEMAN LIVE 「前日譚」』東京公演
活動開始当初から突出していたポップス×オルタナティブの最適解を生み出す感性は、ポピュラリティに特化した3rd EP『COMPASS』を経て、より洗練された領域へ。ライブにおいても、数々のステージを重ねるなかで、観る者を問わない大衆性と耳目の肥えた玄人を唸らせるスキルの両立を追求し、独自のカラーを確立してきた。3月3日に東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで開催された『ONEMAN LIVE 「前日譚」』東京公演には、その軌跡のすべてが詰めこまれていたといっても過言ではない。音源の旨味を再現しながらもライブならではの生感もアドオンし、すべての人を置いていかない、愛と優しさに満ちた時間を作り上げたのである。

新作のSEを携えて登場したメンバーは、これまでのMaverick Momの旅路を彷彿させる「アルカディア」を投入。冒頭から「Let’s singing!」と焚きつけ、積極的に会場を巻きこんでいく。前のめりで拳を突き上げたり、体を揺らしたりするオーディエンスの姿は、まさに「待ってました!」と言わんばかり。物語繋ぐ“前日譚”から“後日譚”と刻み、本公演が「理想郷へ向かう大きな船出の夜である」と提示したのだ。

まずは“Maverick Momらしさ”を、まざまざと見せつけるターンへ。めくるめくビートチェンジに惹きつけられる「イエローメッセンジャー」、バンドにとって始まりの1曲である「ZONE」と、根幹にあるアイデンティを全開放。それでいて、ギターソロを奏でる中野武瑠(Gt)の背後で、南出大史(Vo/Gt)とタイゾー(Ba)が仲良く決めポーズするなど、遊び心だって忘れはしない。楽曲制作を通してポピュラリティと向き合ってきた彼らは、ライブパフォーマンスにおけるポピュラリティも思考し続けてきたのだろう。スキルフルな演奏を繰り広げつつ、“わかりやすい楽しさ”を実現させることからも、目をそらさなかったのだ。南出にリードされるままに大小の波を描きだすシンガロングは、4人を中心とした一体感がすでに出来上がっていることを物語る。「アスニヒカル」でも団結したジャンプを繰り出し、怒涛の勢いでオープニングを駆け抜けた。



MCで一呼吸置いても、場内の熱が冷めることはない。最高潮を持続したまま、歯切れのいいファンクサウンドが印象的な「Fancy」へと雪崩れこんだ。自ら先頭を切って踊りにいく南出、ここぞという瞬間でアイコンタクトを欠かさないタイゾーとON(Dr)、背中を預けてギターをかき鳴らす中野。その佇まいは、結成から4年弱にして、バンドとしてお互いを強く信頼しあっている事実を謳う。楽曲ごと、さらにいえばフレーズごとで聴かせどころを意識したアプローチが取れるのも、この信頼関係があるからこそなのだろう。「少年とパレット」ではノスタルジックな声色を際立たせ、「傍惚れ」では正統派ラブソングたる王道感を演出。盛り上がらせるのも、聴き入らせるのも、Maverick Momにかかればお手の物。続く「ポラリス」でも、持ち前のバランス感覚を余すことなく発揮し、思わず身を委ねたくなる心地いいグルーヴでフロアを満たした。
折り返しのMCでは、南出が「せっかくのワンマンライブなので、たくさん新曲を持ってきました。このあと、全部新曲です!」とおどけて、タイゾーが「無理無理無理(笑)」とツッコミを入れる場面も。どんなにバンドとして進化しても、彼らの等身大な素顔は変わらない。音楽的な可能性を拡張させながらも、フレンドリーな人柄で寄り添ってくれるバンドこそ、Maverick Momなのだ。

「旅立日記」をきっかけに、再び胸を焦がすパフォーマンスへ。〈たちきったから 決めたから〉と告げながら、胸をトントンと叩く南出のなんと毅然たることか。あまりにも凛とした視線に、このまま成長をテーマとした楽曲を展開していくのかと思われたが、なんとラブソングゾーンへ突入。“愛をもう一度”という花言葉をモチーフに制作された「スイセン」、失意のラブソング「徒花」と、異なる色合いの恋愛を紡ぎだした。とはいえ、感傷的なままでは終わらせないのもMaverick Momの流儀。シンバルの合図で「Transcend even God」に繋ぐと、すぐさまサイケデリックな世界観を構築したのである。斬新でありながらキャッチーさも兼ね備えた“カオスポップ”の名のもとに、いつだって彼らは変幻自在。異なる曲調やリズムを縦横無尽に行き交うプレイはもちろん、ボーカルの質感だって楽曲の雰囲気と巧みにチューニングさせていく。そんな実力があるからこそ、リスナーの「こんな音楽が聴きたい」という欲求を網羅していくようなセットリストを組めるのだろう。























