中島美嘉「『雪の華』はみんなのものになっている」 初のアジアツアーで感じた現地の熱量、ライブへの矜持を語る

今年3月から5月にかけて行われた中島美嘉の初のアジアツアー『MIKA NAKASHIMA ASIA TOUR 2025』。その最終公演にして、初めての韓国ワンマン公演(ソウル・高麗大学ファジョン体育館)が7月21日にWOWOWで独占放送・配信される。
さらに歴代ライブ集、ミュージックビデオ一挙放送などで複数月に渡り特集されることも決定。撮り下ろしインタビューやアジアツアーのドキュメンタリー映像も交えた貴重なプログラムになりそうだ。
本インタビューでは、初のアジアツアーの振り返りをはじめ、中島のライブとの向き合い方について語ってもらった。毎公演、常に最高到達点を目指す。中島美嘉のライブアーティストとしての矜持に触れてほしい。(森朋之)
「雪の華」はみんなのものになっているという感覚

ーー3月から5月にかけて、初のアジアツアー『MIKA NAKASHIMA ASIA TOUR 2025』を開催。台北2公演、中国4公演、韓国2公演のアジア6都市8公演のツアーでしたが、手ごたえはどうでしたか?
中島美嘉(以下、中島):ツアーが決まったときは「多すぎじゃない?」と思ったんです。もともと心配性だし、「こんなにやって大丈夫?」って(笑)。でも、スタッフの皆さんが「大丈夫です」というし、アジアの方々が知ってくれている曲が1曲でもあるのはすごいことなので、それを届けにいこうと。ただ、まだ(海外での公演は)慣れないですね。中国は何度か行かせてもらってるので「こういうライブをやれば喜んでもらえるのかな」ということがわかってきたけど、今回は初めての都市もあったし、どういうライブにするかイチから考えたので。
ーー各国のファンの熱意に応えたいという思いも?
中島:そうですね。もっともっと日本でもライブをやらないといけないなと思ってるんですけど、一度日本でお見せした演出やステージを(海外で)もう一度やれるのは贅沢なことでもあって。どんなに好きな演出でも、同じことをやるわけにはいかないじゃないですか。「海外だったらもう1回やってもいいよね」という気持ちもあるし、ほとんどの方が生で観たことがないと思うので、それは私にとってもうれしいことなので。もちろん、毎回更新しなくちゃいけないのは同じなんですけどね。
ーーなるほど。今回のアジアツアーのセットリストは“ベスト・オブ・中島美嘉”と呼べる内容でした。
中島:「この曲は入れないといけない」という曲がいくつかあるんですよ。それを中心にしながら、いろんな曲を入れて。現地の方に「どんな曲が知られてるんですか?」と聞くこともあります。絶対に外せないのは「雪の華」「僕が死のうと思ったのは」「GLAMOROUS SKY」など。「ORION」も意外と知ってもらえていましたね。今回のツアーではメドレーのなかの1曲だったんですが、かなり反応があったので、「フルで歌ったほうがよかったのかな」と思って。
ーー事前のリサーチだけではなく、ライブのなかで気づくこともあると。
中島:そうですね。アンコールで歌った「FIND THE WAY」もかなり聴いてもらっているみたいです。「アジア圏の方はバラードが好き」とよく言われますけど、私の感覚では、アップテンポもバラードも同じように盛り上がってくれる印象ですね。バラードは日本語の歌詞を一緒に歌ってくれる方も多くて。いつも「すごいな」って感動します。
ーー“絶対外せない”ライブの定番曲について、それぞれ聞かせてください。まず「雪の華」。2003年リリースの楽曲ですが、韓国のドラマ『ごめん、愛してる』の主題歌としてパク・ヒョシンがカバーしたことをきっかけに、韓国をはじめアジア各国でも広く浸透しています。
中島:アジアでワンマンライブをやるようになる前も、イベントに呼んでもらったことが何度かあって。それも「『雪の華』を歌ってください」というオーダーだったし、「知ってくれているんだな」という実感がありました。今となっては数えきれないほどのカバーが存在していて、「雪の華」はみんなのものになっているという感覚なんですよね。声にも好みがあるので、好きな歌手の方のバージョンで聴いてもらえればいいかなって。「オリジナルは中島美嘉さんです」と説明してもらうこともあるけど、私の歌がいちばんとは限らないじゃないですか。他の方が歌った「雪の華」が響いたとしたら、それはそれで嬉しいことなので。
ーー中島さんの手を離れて独り歩きしているというか、スタンダードになりつつあるのかも。では、「僕が死のうと思ったのは」については。リリース当時、日本でも歌詞の内容について賛否がありましたが、海外での受け止められ方はどうでしょうか?
中島:もちろん歌詞は訳してもらっているんですけど、「たぶん直訳ではないだろうな」と思っていたんです。題名にしても「僕が死のうと思ったのは」はNGじゃないかなって。実際、中国でこの曲が聴かれるようになった当初は、「死のうと思った」ではなくて、別の表現に変えられていたみたいで。でも、今は直訳に近いもので伝わっているようですね。今回のライブでもスクリーンに歌詞を出したんですけど、ほぼ直訳だったので。

ーー「僕が死のうと思ったのは」のメッセージ性は世界共通なのかも。
中島:私も初めて聴いたとき、ものすごくグッと来ましたからね。最後まで聴いてもらえばわかるはずだし、海外の方もこの曲のストーリー全体を受け入れてくれているんだと思います。
ーー「GLAMOROUS SKY」はもちろん、映画『NANA』の主題歌として知られているんですよね?
中島:そうみたいですね。今も「『NANA』の衣装で歌って」と言われるので(笑)。結構前から、(『NANA』の衣装で歌うのは)日本では封印してたんですよ。でも去年の香港のライブで久しぶりに復活して……といっても、上(ジャケット)だけですけどね。日本のファンの皆さんはもう観飽きてるかなって。
ーーそんなこともないと思いますが(笑)。しかも『NANA』の原作は今も若い読者を獲得していて、最近になって初めて映画版を観たという人も多いだろうし。
中島:世代を超えてますよね。インスタなどでも、海外の若い人が(映画『NANA』の中島美嘉を観て)「これは誰?」「この子のナナのコスプレすごい!」って言ってたり(笑)。「コスプレじゃなくて、本気で演じてたんだけど」と思いましたけど(笑)、そうやって『NANA』が広がっているんだなと。あのときとまったく同じ衣装で歌うのは無理ですけど、「GLAMOROUS SKY」を歌うときは「40代になったナナはどんな感じだっただろう?」と想像しながらやっています。
ーー「GLAMOROUS SKY」に限らず、中島さんの楽曲は流行に左右されないし、時代を感じさせないので、歌ってて違和感はないのでは?
中島:うん、違和感はないですね。流行りの音に乗らなかったし……流行りに疎かっただけかもしれないけど(笑)。

ーー今回のアジアツアーは、衣装を自分でデザインされたそうですね。
中島:これまでも「こんな衣装がいいです」と意見は出していたんですけど、今回はもっと具体的にお伝えしました。特に海外でツアーするときは、お客さんが知らない曲もけっこうあると思うんですよ。MCもあまりできないし、そのぶん見た目で楽しんでもらえるようにしたくて。

ーーライブの環境はどうでしたか?
中島:やっぱり日本とは全然違いますね。私よりも先にスタッフさんが現地に入り、会場仕込みをしてくれていますが、みなさん本当に大変だと思います。会場に関していうと、あまりエアコンを付ける習慣がない地域もあるみたいで。寒くなったら寒いまま、暑いときも暑いままだったりするので、それはちょっと大変ですね。一度、あまりにも寒くて顎がガタガタしちゃったことがあって。体を動かしているダンサー、バレリーナのみなさんも「寒かった」と言ってたので、よっぽどだったんだと思います。お客さんもダウンジャケットを着てましたから(笑)。
ーー体力的にもタフですよね……。アジアツアーでは、各地のお寺を訪ねたり、その土地ならではの文化も楽しんでいるとか。
中島:「おじゃまします」というご挨拶の気持ちで参拝してます。今回のツアーでは、中国のお寺がすごかったですね。仏像が500体くらいあって、男性は左回り、女性は右回りでお寺のなかを回るんですよ。目が合った仏像から“自分の年齢+1”左にある仏像の番号を覚えて、その数字を出口にいる人に言うと、そのときに悩んでいることの答えが書いた紙をもらえるという。それが当たり過ぎてて、ビックリしました。
ーー現地のファンと接する機会も?
中島:それはあまりなくて。アイドル以外は“入り待ち”“出待ち”の文化もないみたいなんですけど、日本から応援に来てくれたファンの方々がライブの後、会場の外で待っていてくれて。「美嘉はしゃべってくれるよ」という話が伝わったみたいで、だんだん現地の方の姿も見れるようになりました。


















