LE SSERAFIM、最高地点のライブの完成度 初ワールドツアー『EASY CRAZY HOT』日本公演で見せた“今”の姿
最後のMCでメンバーは口々に想いを語った。HONG EUNCHAEは、「始まる前にも裏から(モニターを通して会場の様子を)見ていましたが、観客の数がとても多くて、本当に皆さんが私たちのファンなのかと、感動的でした」と話す。「今日私が感じた幸せをFEARNOTにも感じてほしいです。今日も忘れられない一日を作ってくださってありがとうございます」と日本語でも伝えてくれた彼女の表情は感慨に満ちており、この3年で大きく成長した最年少の大人びた姿が胸に残った。
SAKURAは、「LE SSERAFIMは“恐れを知らない”という意味があるグループですが、デビュー当時の私は恐れ知らずだったと思います。どんな目標も叶えられると思っていました」と明かす。「でも、時には涙を流したりしていくうちに現実的になって、保守的な考え方になっている自分が……高みを望まないほうが気持ちが楽なんじゃないかと思う自分がいました」。しかし、彼女はこうも続ける――「それが大人になるということなら、私は大人になりたくないと思いました」「私は大きな夢を叶えたいし、FEARNOTの皆さんにもっともっと素敵な景色を見せたいです」。アイドルとして3度目の人生を生きるSAKURAの言葉は、彼女だから伝えられる重みを秘めている。迷いなくほぼ一息で言葉を綴り切ったSAKURAのメッセージに、会場からは大きな拍手が送られていた。
KAZUHAは、「舞台を降りると私も皆さんと変わらない普通の人間ですが、舞台に上がるとスポットライトを浴びるギャップに、時々戸惑うこともあります。でも、こんな私でも誰かの原動力になっていることを誇りに思います」と語る。「たくさんの方に応援いただいていることを当たり前だと思わず、皆さんと一緒にいる時間を大切にしていきたいです」「FEARNOTの皆さんと一緒に素敵な景色を見られるように全力で突き進んでいくので、皆さんも私たちのことを信じてついてきてください」――。そう微笑む表情はとても美しかった。
リーダーのKIM CHAEWONは、「これからももっと大きな会場でもっとたくさんのFEARNOTの皆さんとご一緒できるように頑張ります」と意気込み、「今日の公演でLE SSERAFIMにハマっていただけたら嬉しいです。絶対に後悔しないと思いますよ!」と日本語で後押しする。
挨拶を締め括ったHUH YUNJINは、唐突に自分は蛇が好きだと話し、「なぜ蛇が好きかというと、変化、生命力、知恵を象徴する生き物だからです」「今年、私やチームはいい意味で多くの変化を経験したと思います。成長もしたし、メンバー同士もより親しくなり、結びつきも強くなったと思います」とその背景を教えてくれた。「皆さんがFEARNOTでも、FEARNOTじゃなくても、どんな立場であれ、LE SSERAFIMがLE SSERAFIMになる過程をともにしてくださったのは事実なので、感謝しています」「今後、いつか本当に素敵なアーティストになるのが夢です。なることができたら、目を閉じて皆さんの素敵なエネルギーを思い出すだろうと思います」と続けた。
一人ひとりのコメントを終えて、「こんなに重い雰囲気で終わりたくない!」(HUH YUNJIN)、「今日はいつもとは違う終わり方をしましょう」(SAKURA)と話すメンバーは、アンコール2曲目へ。この日の前日に先行リリースされた「DIFFERENT」は、この日が2回目の披露となった。懐かしいディスコファンクのスウィング感を残しつつ、現代風にアップデートされたメロディラインとビートが、目も耳も心も惹きつけていく。
続く「Perfect Night」ではメンバーが再びアリーナに降り、スタンド席の観客とハートを作ったり、観客のスマホにポーズを決めたりと、この瞬間だけの思い出を作る。そして、この日最後の楽曲「No-Return (Into the unknown)」では、突き抜けるようなHUH YUNJINのボーカルに乗せて会場全体が明るく照らされ、アリーナ席には色とりどりの大きな風船が出現した。
本ツアーは、LE SSERAFIMのこれまでの軌跡を総括し、これからの未来を見据えるうえで、これ以上ない完成度のライブに仕上がっていたと筆者は思う。LE SSERAFIMという存在を求めるように幾度となく自然と沸き起こっていた観客のコール、アリーナすらもドーム規模に見せてしまうほど意表を突いていた圧巻の演出、そのすべてが東京ドーム単独公演への布石として映った――。LE SSERAFIMはいよいよ、本ツアーの追加公演となる念願の初単独東京ドーム公演を11月18日、19日に開催する。会場は大きくなれど、彼女たちなら、距離を感じさせないほどの近くで語りかけ、ひとり残らず魅了してくれることだろう。決して平坦ではなかったここまでの道のりに想いを馳せながら、まずは単独ドーム公演決定を心から祝福し、11月を心待ちにしていたい。