LE SSERAFIM、最高地点のライブの完成度 初ワールドツアー『EASY CRAZY HOT』日本公演で見せた“今”の姿

LE SSERAFIM、初世界ツアー日本公演レポ

 LE SSERAFIMが、グループ初のワールドツアー『2025 LE SSERAFIM TOUR 'EASY CRAZY HOT'』を開催。5月から6月にかけては、愛知を皮切りに大阪、福岡、埼玉の4都市9公演をまわる2年ぶりの日本ツアーを行ってきた。2024年リリースの3rdミニアルバム『EASY』、4thミニアルバム『CRAZY』、そして2025年3月リリースの5thミニアルバム『HOT』の名前を冠した本ツアー日本公演から、埼玉公演2日目の模様をレポートする。

 開演5分前から暗転した会場では、三角形状のモニュメントが映し出されるステージに轟音が響き、それを取り囲むように観客の歓声が飛び交う。時計の針が進むと同時にますます燃え上がる画面のなかの火花は、迫り来る公演の幕開けを今か今かと待ち侘びているようだった。音量が最大に達し、赤黒く照らされたステージが激しく燃え盛る頃、ダンサーに導かれるようにして、ついにメンバーが姿を現す。ステージ中央から舞台上へと稲妻を放ち、業火のモニターを背にした5人は、「Ash」で開始早々に夏の空気を吹き込むと、続く「HOT」「Come Over」でさらに熱い季節へと場内を誘った。

LE SSERAFIM (P)&(C)SOURCE MUSIC

 「Good Bones」をBGMに白衣装にチェンジしたあとには、小気味よいバンドサウンドでアレンジされた「EASY」で、R&Bからロックへと変化した楽曲の表情の違いを楽しませる。「埼玉2日目、盛り上がれますか!」という問いに応える声に「こんなに大きな歓声は初めてです!」(HUH YUNJIN)と驚く表情や、「私たち、こんなに大きなコンサート会場で公演をするのが初めてなんです!」(SAKURA)と5人で円になって喜ぶ、かわいらしい光景も見られた。

 さいたま“スーパー”アリーナにかけて「“スーパー”かわいくしてきた」というメンバーは、「左右に分けた前髪」(KAZUHA)、「全部」(HUH YUNJIN)、「ポニーテール」(HONG EUNCHE)、「お団子」(KIM CHAEWON)、「髪の毛染めました!」(SAKURA)と、それぞれの“スーパー”かわいいポイントを紹介し、「今日は“スーパー”LE SSERAFIMですね!」と5人は顔を見合わせる。

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KIM CHAEWON

 夏には、暑さを凌ぐ涼しさも不可欠。涼しげな「Swan Song」や「Sour Grapes」で会場に清涼な空気を届けると、「Star Signs」ではアリーナに降り、観客のすぐ近くへ。「Blue Flame」では〈that is faction〉の掛け声で観客とステージを作り上げた。

 5人揃ってセンターステージ正面に腰掛けた「So Cynical (Badum)」では、互いにルダハートを作ってみたり、HONG EUNCHAEが大きく口を開けてSAKURAを食べるようなポーズをしてみたりと、仲のよさが炸裂。デビュー当時の楽曲「Impurities」「The Great Mermaid」を歌い終えると、当時HONG EUNCHAEが15歳だったことを振り返って懐かしむ。

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SAKURA

 LE SSERAFIMは最近早口言葉にハマっているらしく、この日は「東京特許許可局長、今日急遽休暇許可拒否」という文章に挑戦することに。日本出身のSAKURAとKAZUHAが苦戦するなか、KIM CHAEWON、HONG EUNCHAEが見事成功させると拍手が巻き起こった。また、HUH YUNJINがやりたかったというライトスティックウェーブも無事成功させ、身体がほぐれたところでステージは次のシーンへと切り替わっていく。

 原曲からBPMを上げてポップさが増した「Smart」は、こちらも夏らしく爽快感たっぷりにパフォーマンス。「FEARNOT(ファンの呼称)、私の仲間になれ!」というKIM CHAEWONのセリフが合図となった「Fire in the belly」では、メインステージの巨大モニターに豪華絢爛の花火が色鮮やかに咲き誇り、バックダンサーも含めてお祭り騒ぎのような状態に。

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HUH YUNJIN

 シンセウェーブのようなVCRを経た後半は、クールな黒衣装へチェンジ。一糸乱れぬ「Eve, Psyche & The Bluebeard's wife」から立て続けに披露した「CRAZY」では、SAKURAとKAZUHAをセンターに位置づけたダンスブレイクを挟んだかと思えば、ノンストップで「1-800-hot-n-fun」へ。昨年『Coachella Valle Music and Arts Festival 2024』での初披露から早一年が経ち、今やグループのパーティーチューンとして愛され続ける楽曲だ。HUH YUNJINのサングラスがホットなサマーガールの魅力を醸し、観客を熱狂の渦へ巻き込んでいく。直後、雰囲気を一転させたのは「Pierrot」。キム・ワンソンの「ピエロは私たちを見て笑う」をサンプリングしているこの楽曲は、どこか不気味な様子を感じさせながら、道化師のように変幻自在な表情を見せていた。

KAZUHA

 MCを挟んで、公演はいよいよラストスパートへ。彼女たちの始まりの曲である「FEARLESS」はさらにポップなニュアンスを増したサウンドに変化した形で披露され、息をするのも忘れるほど観客を世界観に引き込む。そして、モニターは再び轟々と燃え盛る映像へ。LE SSERAFIMの真髄とも言える「UNFORGIVEN (feat. Nile Rodgers)」「ANTIFRAGILE」は曲間をメドレー形式で繋ぎ、思いの丈をぶつけるような圧巻のボーカルとロックテイストのサウンド演出で会場内を現実世界とは思えないような異世界空間へ変貌させる。エンディングで5人はステージに倒れ込んで本編に幕を下ろした。

 LE SSERAFIMは、そのアナグラムのもととなっている「IM FEARLESS」の文字通り、恐れや怖さを知らない圧倒的な強さを表現しながらも、その対極にある弱さをも大切に掬い上げてくれるグループだ。そんな彼女たちが届けるアンコールの1曲目「Crazier」は、HUH YUNJINの「FEARNOTに想いを伝えたい」との気持ちからモニターに日本語の歌詞も表示され、会場に集まったすべての者の心に響いたことだろうと思う。

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HONG EUNCHAE

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