VALISが拡張したバーチャルエンターテインメントの可能性 活動休止、5年に渡るエポックな活動を振り返る

VALIS、5年間の軌跡を振り返る
【オリジナルMV】VALIS − 021「熱愛フローズン」【VALIS合唱】

 そうした活動形態や世界観のみならず、様々なクリエイターが手掛けた楽曲の数々も、VALISの大きな魅力となっている。これまで楽曲を提供してきたのは、かいりきベア、syudou、煮ル果実、Ayase(YOASOBI)、カンザキイオリ、DECO*27、TeddyLoid & Giga、みきとP、柊マグネタイト、なきそなど錚々たる面々で、VALISのコンセプトであるサーカス団としてのミステリアスさや退廃的なイメージを表現しつつ、楽曲ごとにモダンな要素を加えたポップミュージックに仕上げている。

【オリジナルMV】VALIS - 008「革命バーチャルリアリティ」【VALIS合唱】

 たとえば、カンザキイオリが手掛けた「革命バーチャルリアリティ」は、モーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を思わせる冒頭のピアノに一気にバンドサウンドやブラスが加わり、エッジの効いた四つ打ちのダンサブルなポップチューンに変わっていく。こうした工夫が楽曲ごとに込められている他、アルバムやライブでは安宅秀紀による異なるアレンジのVer.も披露されるなど、楽曲のバリエーションの豊富さも特徴のひとつ。リリースが決定した5thアルバム『悠久オーケストラ』も「退廃的な美しさを纏う“永遠の乙女”たちがたどり着いた、”最果ての劇場”からお届けする音楽」をコンセプトに、昼の顔「マチネ(matinee)」と夜の顔「ソワレ(soiree)」の2つの面が見られるものになっている。

 そしてもうひとつ、VALISの魅力として外せないのは、高いパフォーマンスで魅了するライブだろう。前述の通り、VALISはライブでも2次元と3次元の2つの姿を持っており、バーチャルな姿とオリジンの姿の両方で、指の先まで意識をめぐらせるようなキレのあるダンスや、踊りながらもブレない高い歌唱力を見せてくれる。過去に筆者が取材させてもらった際のメンバーの話によると、こうしたパフォーマンスに関しては、バーチャル/オリジンの姿ごとにそれぞれ意識することを変えて臨んでいるそうで、細部までに至るこだわりの結果が、綺麗に連動するフォーメーションダンスや豊かな表現力に繋がっている。

 また、バーチャル/オリジン双方の姿を共存させる演出もこのグループらしい魅力となっている。中でも、オリジンの姿で、背後に登場したバーチャルの姿とシンクロダンスするパフォーマンスは、双方のパフォーマンスの迫力がどちらにも負けておらず、次元を超えて2つの姿を持つグループならではのライブの魅力を感じさせてくれる。

『転生デパーチャー』ライブ写真
『転生デパーチャー』ライブ写真
『喝采カーテンコール』ライブ写真
『喝采カーテンコール』ライブ写真

 2021年の『拡張メタモルフォーゼ』で初めてバーチャル/オリジンの両方の姿でライブを行なって以降、2022年の『転生デパーチャー』では全編オリジンの姿でのライブも開催。このライブでは、活動にかける思いを観客に伝えた後、彼女たちとともに過去から転生してきた楽曲も披露されて話題となった。執筆時点での最新ライブとして5月17日に行なわれた6thワンマンLIVE『喝采カーテンコール』では、ようやくたどり着いた「最果ての劇場で舞踊るプリマドンナ」をコンセプトにライブを開催。アルバム『悠久オーケストラ』同様、第一部で少女としての側面「マチネ(matinee)」の要素が、第二部でより成熟した女性としての側面「ソワレ(soiree)」の要素が表現された。終盤のMCでは、体調不良のため2024年に卒業することとなったNINAも含めた6人で歩んできたVALISのこれまでを振り返りながら、涙ながらに5周年を迎えた感謝を伝える姿が印象的だった。

 2020年に誕生し5年間を走り続けたVALISは、間違いなくバーチャルエンターテインメントの可能性を広げたグループのひとつであり、彼女たちがシーンにもたらしてくれた魅力的な多様性は、これからも多くの後続の道を照らすことになるのだろう。もちろん、休止前の活動は今年いっぱいまで続いていく。その足どりにますます注目していきたい。

■リリース情報
5thアルバム『悠久オーケストラ』

<商品詳細>
・ソロジャケットバージョン(全6種)/各 2,500円(税込)
【内容】CD1枚、ブックレット、お話し会抽選券(初回予約版のみ)

・スペシャルボックス/5,000円(税込)
【内容】外装BOX、CD1枚、スペシャルブックレット、Mカード(5枚組)、オリジナルステッカー、お話し会抽選券(初回予約版のみ)

<収録楽曲>
1. 新約プレリュード(instrumental)(作曲:Qutabire)
2. 純情エトワール(作詞・作曲・編曲:香椎モイミ)
3. 幻想アンヴェール(作詞・作曲・編曲:tokiwa)
4. 共振ハートビート(作詞・作曲・編曲:廉)
5. 光芒キャロル(作詞・作曲・編曲:カミるれ)
6. Memoria(作詞・作曲・編曲:tokiwa)
7. Eyes on Me(作詞・作曲・編曲:Purukichi)
8. Mute Beat(作詞:ぽん 作曲・編曲:HIDEYA KOJIMA)
9. βlack Swan(作詞・作曲・編曲:ど~ぱみん)
10. JUICE(作詞・作曲・編曲:梅とら)
11. 廻転コースター(作詞・作曲・編曲:梅とら)
12. 灼熱モーメント(作詞:小野仁誠 作曲・編曲:Zexnum)
13. 誘惑ノンフィクション(作詞・作曲・編曲:廉)
14. 黄昏シミュレイド(作詞・作曲・編曲:他人事)
15. 再臨アントラクト(instrumental)(作曲:Qutabire)

■関連リンク
VALIS公式X(旧Twitter):https://x.com/VALIS_Official
VALIS 公式WEB:https://valis.sinsekaistudio.jp/
IMAGINARY BASE AKIHABARA 公式WEB:https://imaginary-base.jp/

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