VALISが拡張したバーチャルエンターテインメントの可能性 活動休止、5年に渡るエポックな活動を振り返る

2次元と3次元を行き来し、アバターとオリジンの両方の姿で活動するKAMITSUBAKI STUDIO/SINSEKAI RECORDのバーチャルガールズユニット・VALIS。彼女たちが年内での活動休止を発表した。ここでは改めて、5年に及ぶキャリアを振り返ってみたい。
2020年に活動を開始したVALISは、当初はアバターの姿で活動をスタート。メインとなるYouTubeでの活動に加えて各メンバーのストーリーなどがメディアミックス的に公開され、グループの全体像が物語としておぼろげに浮かんでくるような活動を取ってきた。「裏世界」にあるサーカス劇場での活動を経て「深脊界」に赴き、その後ショーレストラン「瓦利斯飯店」へと拠点を移す中で、メンバーが自分の弱さや過去に向き合い、新しい場所で自分たちの居場所をつくっていくーー。グループにまつわるこの物語は、実は「何かに挫折を経験した過去を持つメンバーたちが、再び表舞台に立つチャレンジをするためのグループ」という、VALISのおおもとのコンセプトに大きく繋がるものだった。

中でもグループが大きな変化を迎えたのは、2021年の単独ライブ『拡張メタモルフォーゼ』だろう。彼女たちにとってリアル会場での初の有観客ライブとなったこの公演では、アンコールで初めてオリジンの姿によるパフォーマンスを披露。次元を超えて2つの姿で活動する、現在に繋がる活動をスタートさせた。この活動はまだ「VTuberはあくまでバーチャルなキャラクターとして存在する」という見方が根強かった当時のVTuberシーンにおいて非常に画期的で、現在では様々な形で広がるリアルとバーチャルの要素を混ぜたり/使い分けたりするバーチャルタレントたちの活動方法に先鞭をつけることとなった。
とはいえ、ここで重要なのは、VALISの場合、2つの次元で活動すること自体がメンバーの「向き合うべき過去」に大きく関係していたことだ。というのも、彼女たちはもともとどこか別の場所で、別の姿で同じ夢に向かって走っていた仲間であり、その夢が破れた後も、可能性を信じて共にレッスンを続けてきたという。つまり、脈絡なく次元を超える活動を選んだのではなく、彼女たち自身が持っていた物語自体に、「自分たちの過去と向き合う」という、3次元=オリジンの姿でも活動する理由が存在するということ。ステージに立つメンバーが実際に抱えてきた物語と、それを拡張するビジュアル要素なども含めた独特の世界観が合わさることで、現実のメンバーの想いとバーチャルの彼女たちがひとつにリンクする。VALISとは、「バーチャルエンターテインメントの可能性とは何か?」ということを、あくまでメンバーに寄り添う形で実現したプロジェクトなのだろう。