2025.06.25 18:30

『VOCALOCK MANIA ver.4』運営×出演者鼎談　和田たけあき・Sohbanaに聞く、ボカロ尽くしイベントの醍醐味

「もっと純粋にボカロを楽しめるイベントにしたい」　コンピ発売の狙いも

『VOCALOCK MANIA ver.4』Sohbana×和田たけあき（撮影＝林直幸）

――では、今回の『VOCALOCK MANIA ver.4』について聞かせてください。第5回として、どういうイベントにしようと考えていますか。

梅川：これまでと少し意識を変えようと思っていて。今まではボカロPを含むクリエイターの方々にもご出演いただく形で開催してきたんですけど、今回はしっかりボカロPをフィーチャーしたいと考えています。正直、ボカロPのDJイベントに行っても、クリエイターさんがおすすめする曲や聴かせたい曲をかけて、ボカロ曲がかからないこともあるんですよね。だから、もっと純粋にボカロを楽しめるイベントにしたい。たとえば、buzzGさんのライブもご本人に出ていただくんですよ。最初は別のボーカルを立てるという話だったのですが、イベントの趣旨をしっかりと考えていただいて、ご本人から提案してくださいました。和田さんは、SNSに「DJ機材を買った」と投稿されていたのを見て、このイベントでは初めてのDJで出演していただきます。

和田：「イベントに誘ってください」と投稿したら本当に声をかけてくれました（笑）。ただ、『VOCALOCK MANIA ver.4』では、楽曲をかけながら歌ったり、ギターを弾いたりもしようかなと思っています。

――Sohbanaさんは、晴いちばんさんとアルバム『Puzzle MANIA 89s』の解説のステージですね。『Puzzle MANIA 89s』は、「Puzzle Project」に所属する12名のボカロPによるコンピレーションアルバムということで。そもそも「Puzzle Project」はどういうプロジェクトなんですか。

梅川：「Puzzle Project」は5年くらい前に始まった、ネット出身のクリエイターさんとソニーミュージックのソリューションを組み合わせて作品を作るというプロジェクトです。Sohbanaさんを始め、20組ほどが所属していて。いいクリエイターさんがたくさんいるので、『ver.0』の時から参加してもらっています。

Sohbana：僕も含め、最初は個々で制作していたんですけど。せっかく「Puzzle Project」というハコがあるならハコ単位で何かしないともったいなと思ったんです。だから、まず『Puzzle P4RTY』というDJイベントを開催して、イベントの次にやることと言ったらコンピレーションアルバムだよな、と。単純なコンピにしても面白くないので、半分いたずら心で「コンペ」をテーマにするはどうですか？　と提案したら企画が通ってしまい、こうして形になりました。

梅川：「VOCALOCK MANIA」のロロミという女の子のキャラクターがいるんですが、彼女がアニメのタイアップでメジャーデビューするというifストーリー上のコンペがモチーフなんです。

――今、アニメのタイアップはクリエイターが楽曲を作るモチベーションのひとつになっていますし、実際コンペもいろいろ行われているので、メタ的な目線が面白いですね。

Sohbana：自分もコンペを経て、MAISONdesに参加したり、アニメのオープニングを作らせていただいたりしたことがあるので。ただ、結構ブラックボックスだから、コンペという言葉を使うのはどうかな？　と思ったんですけど、意外とOKになりました。しかも、3人集まれば御の字だと思っていたら、12人も集まってくれて。もう僕は書かなくていいかなと思うくらい（笑）。

――アニメのオープニングだから楽曲の長さは89秒というしばりがあり、さらに4つのテーマからそれぞれ好きなものを選ぶという。

Sohbana：そうです。実際に89秒で出してくださいって言われますし、こういうテーマが出されるタイプのコンペもよくあるんですよ。

梅川：ひとテーマごとに3曲入っていて、テーマごとに聴いていくと本当にそれぞれのクリエイターさんの色が出ていて面白いんですよ。テーマに沿ってこれだけ個性的なものを作れるのがすごいし、ロロミというアーティストの名前や設定を歌詞に落とし込んだり、それぞれの工夫もある。

――Sohbanaさんの「LOWLOWE」は、ヘヴィなギターリフのインパクトが強くて、ミドルテンポで最後までいくところも新鮮でした。

Sohbana：それこそロロミの名前を使うという点では、タイトルの時点で晴いちばんくんと発想がかぶっちゃったんですけど（笑）。楽曲としては、ギターを弾いている図が見えづらいメンバーだから、やりすぎなぐらい自分はロックをやって、アルバム全体の幅を広げる役割を意識しました。普段はテレキャスなんですけど、レスポールを引っ張り出して弾いています。もともとB’zや『無双』シリーズのBGMみたいにザクザクしたリフの曲も好きなんですけど、急にやるとみんなびっくりしちゃうので。それこそコンペや、こういう企画で定期的に発散するようにしているんです。シンプルに左右にギターの低い壁があって真ん中でドラムが鳴っているイメージなんですけど、自分がやると寂しい音像になるなと思って。みんなと並んだ時に見劣りしないように、歌詞でめちゃめちゃ悪口を言いました（笑）。お題として「可愛さと少しの毒っ気」という言葉があったので、「毒っ気」はOKなんだな？と。

和田：僕も聴かせてもらって、歌詞の面ではいつものSohbanaさんだなと思いました（笑）。

Sohbana：（笑）。

和田：1枚のアルバムとしていい作品ですよね。通して聴くと、Sohbanaさんの曲が際立つ感じもあるし。晴いち（ばん）くんの「ローミッド・ローミッド」はちょっと意外だったかな。晴いちロックもいいなと思いました。

――王道のギターロックのアプローチですよね。

Sohbana：知り合った頃の晴いちくんはこういう曲を作っていた印象があるので、僕としては懐かしい晴いちくんがきたなと思いました。一般的にエレクトロのイメージが強いと思うんですけど、ロックをやれる人が作るエレクトロなんですよ。

和田：たしかに。でも、当時ともちょっと違うというか、ちゃんといろいろ経てる感じはあるよね。

Sohbana：そうですね。スッキリしてる気がします。対談で本人に聴けば、そのあたりの話が出てきそうで楽しみです。対談に向けてひとつ決めているのは、晴いちばんくんの年齢に触れるのは飽きたので、もう触れない（笑）。

梅川：出てきた頃は中学生でしたからねえ。

Sohbana：今でこそ中学生・高校生もたくさんいますけど、若いボカロPが出てきた走りですからね。

最近のボカロシーンは「音も、シーン的にも、また改めてゴチャゴチャし始めてきた」

――「Puzzle Project」としては、今後どんなビジョンがあるんですか。

梅川：社内にも社外にもクリエイターさんを紹介していくと同時に、先ほどSohbanaさんがおっしゃっていたようにひとつのサークルみたいなものにもなっているので。ソニーミュージックのソリューションではなく、それぞれクリエイターさん同士を掛け合わせた作品も発信していける場所にしていきたいと思っています。

Sohbana：『Puzzle P4RTY』を開催し始めたあとに検索したら「箱推し」という単語を見かけて、僕がやりたかったことはできたなという手応えを感じていて。「Puzzle Project」の中で僕はちょっと年長ですし、これからはボリュームゾーンであるもう少し下の年代がカッコいいと思うことをどんどん提案してやっていってほしいですね。

ーーますます楽しみですね。新しい世代が出てきているという話はさきほどもありましたが、みなさんとしては最近のボカロシーンのトレンドをどんなふうに感じていますか？

和田：明確にこういう曲調が流行ってるというのは、逆になくなってきたような気がしています。特に前回の『ボカコレ』くらいから、本当に幅広くなっているんですよ。ヒップホップやシティポップが流行り出してから音数少ないブームがあったけど、それがちょっと終わってきて。音も、シーン的にも、また改めてゴチャゴチャし始めてきた印象があります。

Sohbana：たしかに、最近は何かが覇権を握るみたいな状況が崩れてきた感じはします。各社がライブラリを出す頻度も高くなっていて、毎週ランキングをチェックしていないと正しいトレンドが追えなくなってる。

和田：よく言われることですけど、ボカロはジャンルではないので、何をやっても自由なんですよ。だからこそ、むしろ自分はどうしようかなというところなんですが……そういう意味では、バンドサウンドは未だに流行っていないと感じるので。僕は逆にめちゃめちゃギターを弾いてやろうかなと思っています。

Sohbana：ぜひ！　僕も含め、ギター弾きはたぶんみんな物足りないと思ってますから。

――最後に、「VOCALOCK MANIA ver.4」をどんなふうに楽しんでほしいですか。

梅川：今回、渋谷ストリームの3フロアを貸し切って、6階がライブとDJ、5階がカラオケブースと協賛ブース、4階で楽曲解説をやるんです。同時進行で、どこかで必ず何かやっているイベントになるので、1日中いてほしいですね。お目当てのもの以外にも、絶対にひとつは新しい発見があると思います。ぜひ、ど頭から最後まで1日かけて楽しみ尽くしてください！

■イベント情報
『VOCALOCK MANIA ver.4』
日程：2025年7月12日（土）
13:00 OPEN / 14:00 START / 21:00 CLOSE
会場：渋谷ストリームホール（東京都渋谷区渋谷3丁目21−3）

出演者：
【LIVE】煮ル果実、buzzG、RuLu、つる（O.A）
【DJ】鬱P、サツキ、椎乃味醂、メドミア、和田たけあき
【TALK】大漠波新×なみぐる、Sohbana×晴いちばん
【楽曲解説】吉田夜世×Shu、Ruliea×Natrium

公式X（旧Twitter）：https://x.com/VocalockMania
公式HP：https://www.vocalockmania.com/
主催：（株）ソニー・ミュージックエンタテインメント

＜チケット情報＞
発売中
https://l-tike.com/vocalockmaniavol4
先行チケット：6,500円
学割先行チケット：5,500円
※オールスタンディング、来場者特典あり。
※再入場可、ドリンク代別途600円。
※学割チケットは受付で学生証要確認

■作品情報
コンピレーションアルバム『Puzzle MANIA 89s』
5月7日より配信中
https://orcd.co/puzzl-mania-89s