新たなヴィジュアル系の祭典『MASKED』開催 “美学”に共鳴する全36組が作り出した混沌と熱狂

新たなV系の祭典『MASKED』レポート

 2025年5月25日、渋谷。ヴィジュアル系を世界に発信していくプロジェクト『MASKED』初のライブイベントが開催された。メイン会場となるSpotify O-EAST/Spotify O-WEST/duo MUSIC EXCHANGEに29組、渋谷REXでの『MASKED mini』に7組、合計36組ものヴィジュアル系バンドが集結。clubasiaでは出演バンドのトークショーも行われるという充実っぷりだ。

 このエリアでのサーキットフェスは数あれど、ヴィジュアル系に特化したものは昨今珍しい。そのなかでチケットが即ソールドアウトしたというのだから、現行シーンの勢いが伝わってくる。勢いをさらに加速させるべく、ライブのほかに、全29バンドのボーカルを特別なスタイリングで撮り下ろした写真や、6月4日までSHIBUYA TSUTAYA 7Fで開催中のコラボカフェ、ゴールデンボンバーの鬼龍院 翔が司会を務めたTV番組『MASKED TV』(TOKYO MX)の放送などさまざまな企画が立ち上げられ、ついに迎えた当日。

 開演時刻の前から、好きなバンドのマーチや、撮り下ろし写真がデザインされたTシャツ、個性的なファッションを纏ったオーディエンスが大勢集まり、会場一帯が不思議な熱を帯びていた。この日、ここから何かが始まる、そんな予感に満ちていた。

 期待が高まるなか、「『MASKED』が、バンド、ファン、スタッフ、すべてのV系を愛する人たちの新たな拠点になればうれしいです」という主催者・GOEMON RECORDS代表 石川氏の熱いアナウンスが流れ、大きな拍手が開幕を告げた。

 まずO-EASTのトップバッターを務めるのは、結成15周年イヤーを終えたばかりのRoyz。手拍子に迎えられ、黒とシルバーを基調とした衣装のメンバー4人が姿を現す。昴(Vo)が「『MASKED』、始めようか!!」と一喝して「JOKER」で口火を切ると、イントロの振り付けから早速オーディエンスと一体となって空間を作り上げていった。「VENOM」や「TRANSFORM」など、ヘヴィなサウンドのなかに響くメロディと、ギターソロやベースソロも盛り込んだ艶やかな楽曲で魅了。「9月に渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)やります! いつか武道館やります!!」と力強い宣言を残してステージをあとにした。

 続いては、Alice Nine.のShou(Vo)によるプロジェクト Verde/が登場。ソロだからこその繊細な世界観を描くと同時に、Royzの昴とBugLugの一聖(Vo)を招いてAlice Nine.の「RAINBOWS」を披露する一幕もあった。こうした貴重な共演が実現するのもフェスの醍醐味だ。

 一方、O-EASTと同時にスタートしたduo MUSIC EXCHANGEは、オーディションライブを経て出演権を獲得した東京花嫁がトップを飾った。

 その後も、ストレートなギターロックとヴィジュアル系を掛け合わせたnurié、キズの来夢(Vo/Gt)が主宰するレーベル DAMAGE所属の新鋭sugar、ヒップホップを軸に攻めのパフォーマンスを展開したCHAQLA.などなど、今まさに台風の目となっている新世代バンドがぞくぞくと爪痕を残していった。

 CHAQLA.のANNIE A(Vo)が「ヴィジュアル系の幅を広げに来ました!」と言っていたとおり、いろいろな音楽性やカルチャーを貪欲に吸収したバンドたちが、これからのシーンの起爆剤になっていくに違いない。

 もうひとつの会場・Spotify O-WESTでは、さらに個性的&実力派バンドがしのぎを削っていた。東京花嫁と同じくオーディションを制したヤミテラのライブを皮切りに、中盤には“V系メタルコア”を掲げるDEVILOOF、DEXCORE、JILUKAがそろい踏み。世界に進出する轟音でそれぞれのカオスを生みだし、入場規制になる場面もあった。

 その3バンドを、ヴィジュアル系のなかでも特にテンションの高い“アゲみ集団”ビバラッシュ、エンタメ満載のえんそくが挟むというタイムテーブルが面白い。音楽ジャンルなどにとらわれず、バンド独自の美学をぶつけ合ってこそのヴィジュアル系だ。O-EASTのラインナップは、そんな群雄割拠のシーンを生き抜いてきたバンドたちの“競演”と言っていい。

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