KinKi Kids、三浦大知、観月ありさ……ドリカム提供曲で味わえる“作詞 吉田美和&作曲 中村正人”の真骨頂
5月5日に全356曲をサブスクリプション音楽配信サービスで解禁し、話題をさらったKinKi Kids。デビュー前からドラマへの出演などで認知度の高かった堂本剛と堂本光一だが、デビュー曲「硝子の少年」(1997年)を松本隆(作詞)と山下達郎(作編曲)が手掛けたこと、さらに2人の確かな歌唱力で幅広い音楽リスナーから注目を集めた。その山下達郎を筆頭に、奥田民生、織田哲郎、久保田利伸、坂本龍一、高見沢俊彦、堂島孝平、徳永英明、吉田拓郎、松岡充など、名だたるアーティストが彼らに楽曲を提供している。KinKi Kidsには名曲が多いと言われるが、その理由は稀代のメロディメイカーが提供陣に揃っていることに加え、剛と光一がボーカリストとしてメロディを鮮やかに彩ったがゆえの結果だと考察する。KinKi Kidsはツインボーカルというよりも、“メインボーカルが2人いる”と言われた方がしっくりくる。
さて本稿では、KinKi Kidsに楽曲提供歴のある名だたるアーティストの中から、4月1日に『渋谷 ドリカム シアター』がオープンしたことでも話題のDREAMS COME TRUE(以下、ドリカム)による提供曲についてピックアップしたい。昨年デビュー35周年を迎えたドリカムだが、他アーティストに楽曲提供することは珍しい上、提供する際には吉田美和と中村正人が揃って書き下ろしていることも面白い。そんなドリカムがKinKi Kidsに提供したのは「ね、がんばるよ。」(2004年)、「願う以上のこと 祈る以上のこと」(2011年)の2曲だ。
KinKi Kids「ね、がんばるよ。」(作詞:吉田美和/作曲:吉田美和・中村正人)
「ね、がんばるよ。」は、最初のブロックから剛、光一という2人のボーカリストの低音と高音のアドリブのコントラストが登場する。このコントラストを繋ぐように2人が歌い繋ぐAメロ、ユニゾン、コーラス、そして既出したアドリブで聴かせるサビなど、それぞれの聴かせどころが入り組んでおり、メインボーカルが2人という印象が強く残る1曲だ。この曲の難しいところは、サビ始まりからAメロへ移行する際の譜割りの大胆な変化、そしてグッドメロディの随所に挟み込まれる低音のパートだ。緩急ある音域の広いメロディは、まさにドリカムならでは。曲中に布石のように低音を配置することで、ラストの2人のアドリブのような掛け合いも光っている。
KinKi Kids「願う以上のこと 祈る以上のこと」(作詞:吉田美和/作曲:中村正人)
「願う以上のこと 祈る以上のこと」は、ソウル/ファンクを彷彿とさせるようなバックトラックながら、歌い出しのメロディは歌謡曲然としていてメランコリックな空気もある。サビ前からサビにかけてフレーズごとにロングトーンが繰り返されるメロディはドリカムの得意技のひとつ。剛と光一はそれをほぼユニゾンで聴かせており、ソロでは歌のアプローチから発音までそれぞれ結構違いがあるように聴こえるが、KinKi Kidsの曲を歌う際はお互いにある程度ニュアンスを寄せて歌唱しているように思う。そんな中でも本曲では、声質の違いを活かして揺らぎにも似た広がりを出すパターン、声質やブレスまでばっちり重なるパターンなど多彩なユニゾンを披露していて、何度も登場するロングトーンからその違いがわかる。