PSYCHIC FEVERはなぜ北米でも受け入れられた? 現地の熱狂を生み出す“グローバルアーティスト”としての資質

PSYCHIC FEVERはなぜ北米で活躍できた?

 LDH所属のボーイズグループ PSYCHIC FEVERが初の北米ツアーを終了した。これまでアジアを中心としてステージに立ってきた彼らだが、ワシントンD.C.を皮切りに、ニューヨーク、シカゴ、ダラス、シアトル、ロサンゼルスの6都市で開催された北米ツアーも大盛況。しかも、各公演は現地のファンが訪れる形となり、まさに“理想の海外展開”といえるような成果を残した。なぜ、PSYCHIC FEVERはここまで海外で受け入れられているのか。本ツアーにも帯同した、グループ戦略本部エグゼクティブストラテジスト・石井一弘氏に話を聞いた。(編集部)

次につながる確かな手応えを感じたLA公演

ーーPSYCHIC FEVERの快進撃が続いています。まずは2月の北米ツアーで感じられた手応えから聞かせてください。

石井:初日のワシントンD.C.はマーヴィン・ゲイやジェームス・ブラウンらがライブをした歴史ある文化施設としても有名な「Howard Theatre」での公演だったのですが、夜の公演にも関わらず昼から長蛇の列ができ、個性的な黒人女性の方が非常に多かったんですが、想像もしていなかった光景に驚きました。そういった方々が最初から大熱狂&大合唱で盛り上げてくださって本当にいいスタートが切れました。そもそも「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」が南部のヒップホップコミュニティに刺さっているという話はアメリカのPR会社から聞いていましたが、現地のファンの皆さんで埋め尽くされた会場がとても印象的でしたし、とても嬉しかったですね。

 続くニューヨーク公演はブルックリンの倉庫を改修した「Brooklyn Steel」という雰囲気のあるカッコいい会場で、こちらもお客さんは黒人女性が多かったのとカウボーイハットのお客さんがとても多く、剣のカウボーイキャラがこんなに浸透しているんだと驚きでしたね。盛り上がり方が日本とは全然違うし、昨年7月の『Japan Expo Paris 2024』で感じたヨーロッパの人たちの“歌って踊って”という盛り上がりもありつつ、また違うパワフルな盛り上がりでした。PSYCHIC FEVERのメンバーの小波津志、WEESA、JIMMY、渡邉廉、中西椋雅は2013年に開催された、選抜された子どもたちがニューヨークへ3年間留学するという「GLOBAL JAPAN CHALLENGE」オーディションの参加者でしたが、ニューヨーク留学の選抜メンバーに入れなかった子たちでした。自分も当時「GLOBAL JAPAN CHALLENGE」に関わっていたので、当時のあの子どもたちと一緒に12年の時を経て、夢を叶えニューヨークでライブを開催していることがとても感慨深かったですね。

 アメリカは都市ごとに歴史も文化も違い、暮らしている人種の比率も異なりますが、3つ目の訪問都市シカゴでその違いを感じました。これまでの2都市では黒人女性が80%を占めていましたが、60%ぐらいになった感じです。シカゴの会場はスティングやビリー・ジョエルなど、レジェンドたちや、シカゴ出身のチャンス・ザ・ラッパーなどが立った「The Riviera」という老舗の雰囲気のある劇場でしたが、そういう場所でまた違うお客さんを盛り上げられたのもよかったと思います。実は、シカゴでは早朝に劇場前で水道管が破裂してその影響で劇場が営業できず公演中止かもしれないと激震が走ったのですが、懸命の復旧作業でなんとか公演ができてホッとしたということもありました。続く4都市目のテキサス・ダラス公演はカウボーイの本場でもありますが、ここでも剣のカウボーイがウケていて、カウボーイハットのお客さんがとても多かったのも印象的でした。

ーーどの都市でも現地のファンがしっかり足を運んでいるのが素晴らしいですね。

石井:そうなんです。次はシアトル公演でしたが、西海岸に行くとアジア系のお客さんが増えて、またカナダから来る方も多く、白人女性のお客さんも増えましたね。シアトルの劇場の方にも言われましたが、日本アーティストの公演でこんなに日本人がいないのは初めてだと。

 ファイナルのLA公演の前日には、ワーナーミュージック・グループとのグローバルレーベル契約をLAのワーナーオフィスで発表させていただきました。これまでアジア、ヨーロッパ、アメリカと各都市を巡ってきましたが、PSYCHIC FEVERにとって新たなスタート地点に立てたような気がしましたね。

 LAの会場が一番の観客動員数になりましたが、アジア系とヒスパニック系がメインで、その次に黒人女性という感じで、これまでの5都市とはまた違った雰囲気でした。初のアメリカツアーファイナルは、ファイナルとしての集大成として本当に大熱狂で感動的なライブになったと思います。ファイナルでは、ツアーの音楽監修をしてくれたブルーノ・マーズのバンド、The Hooligansのジョン(・フォシット)がキーボードでステージに立ってくれ、「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」ではJP THE WAVYさんがスペシャルゲストとして一緒にパフォーマンスしてくれ会場を盛り上げてくれ、観客の反応や現地の音楽関係者の評価からもLA公演は次につながる確かな手応えを感じることができました。

PSYCHIC FEVER - 'Just Like Dat feat. JP THE WAVY' Stage CAM @ U.S. TOUR 2025 in Los Angeles

 帰国の日に空港まで送ってくれたLAのコーディネーターさんが車の中で「日本人アーティストがローカルの観客をあんなに熱狂させる日が来るなんて想像もしてなかったし、長年LAで働いているけれど本当に前代未聞のことだと思う。PSYCHIC FEVERが何かを変えてくれる気がして日本人としてすごく嬉しい気持ちだし、今後が楽しみだ」と言ってくれました。PSYCHIC FEVERがアメリカで活躍することでいい影響を与えられるようにメンバー、スタッフ一丸となってもっと頑張らなければと気合が入りましたね。

 これまでも、ライブを行うためにSNS、Spotify、YouTubeなど都市ごとに目標を設定してデータを見て分析してきましたが、実際に現地に行って、「アメリカ」と一括りにできないことを改めて実感しました。やっぱりそれぞれの都市の歴史や文化、価値観を学んで、そこに合わせていかないといけないんだなと。ライブ前も都市ごとの資料を作ってもらって、メンバーも歴史や文化、名物のグルメなんかも勉強して臨んでいますが、これは東南アジアでの経験が活きていると思います。ASEAN 10か国、宗教も文化も言語も違う国が密集しているなかで、PSYCHIC FEVERは2年間、そのなかをグルグルと飛び回っていたので、メンバーも多様な文化に抵抗なく合わせていけるようになったと思います。アーティストとして自分の主張だけでなく、異文化を理解しリスペクトしコミュニケーションしていくという世界で活動するためのベースはここで築かれていて、だから今回の北米ツアーでも、何となく抽象的に「アメリカ」と一括りにせず、毎公演終わった後にメンバーたちは反省会を開き次の公演に向けて修正や調整を繰り返していたので、各都市で観客を大熱狂させるパフォーマンスができたのだろうと。2週間で6都市での公演という短期集中のツアーでしたが、メンバーもスタッフも本当に大きな経験をして成長できたと思います。もちろん課題も山ほど見つかっていて、世界で活動するためにレベルアップするヒントをたくさん得たツアーとなりました。

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