GRAPEVINE、30年以上続くバンドとしての矜持と自負 『あのみちから遠くはなれて』略称“アミーチー”の意図とは

GRAPEVINE、新作に込めた矜持と自負

 “何もしない”アウトロに託した「追憶のビュイック」

ーーアグレッシブな曲が多い中で「はれのひ」のように穏やかな曲がかえって印象に残ったりしますね。

田中:うん、逆にそういう曲がアルバムの目玉になるんじゃないですか。これは10cc方式(「I'm Not In Love」でメンバー3人の声を13音階×16トラック分重ねて録音)で録ったんで、結構時間かかりましたよ。3人で1音階につき、8本ずつ。

西川:高野さんがぜひやりたいと言うから、スタジオでの作業時間を湯水のごとく使いました。重ねていくと、音が揺れてくるんですよ。でも、あるところから効果がなくなる。その限界が知りたかったのかな。7本目と8本目ではあまり変わってない。

田中:増やせば増やすほど音の波形が重なって隙間がなくなり、効果が薄れてくるんですよ。やってる時は盛り上がりましたけどね。

亀井:高野さんが卓をマニュアルで操作しながらやっていて、それも面白かったですよ。

ーー今どき、まさに道楽と言ってもいい贅沢なレコーディングですね。続く「猫行灯」では、ねずみ、雀ときて、今度は猫ですか。この曲も原曲からずいぶん変わったらしいですけど、スケール感のある演奏から中盤でラテン調になり、ダンサブルに盛り上がる構成が面白いです。

田中:動物ものですね。猫は今まで出してなかったのがおかしいくらい。曲のイメージはそんなに変わってないんですけど、要はリズムが変わるところの解釈をどうするか、そこがポイントでしたね。

西川:構成を作るのが大変でしたね。どう変えて、どう戻っていくのか。やる人によって解釈が違ったりするんで。最初はラテンのつもりだったんですけど、歌詞が上がってきたらまるで妖怪大運動会(笑)。

田中:録ってる時は、もっとアフロビートみたいにしたいなと思って、ポリリズムっぽいパーカッションを入れてたんですよ。家に帰っていざ歌詞を書こうと思った時に、この曲の雰囲気とリズムが変わるところが祭囃子にしか聴こえんくなって。山奥で迷ってたら遠くから祭囃子が聴こえてくる、そういうイメージしか浮かばなくなって。

ーー民話にありそうですね。転調したところであの世に連れていかれて、最終的には戻ってくるみたいな。この曲では金戸(覚)さんが様々な鳴り物を入れたそうで。金戸さんは鳴り物が好きなんですか?

田中。そう、カバサとかね。鳴り物はみんな好きですけど、レコーディングの順序的にベーシック録りが終わるとリズム隊は一旦暇になるんですよ。だから金戸さんは「よっしゃ、俺が入れる!」ってパーカッションをダビングすることが多いんです。

GRAPEVINE(撮影=林将平)

ーー最後の「追憶のビュイック」は、田中さん幼少期にお父様が外車に乗ってらしたそうで、そんな思い出も込められた曲でしょうか。

田中:歌詞の内容自体はフィクションですけど、気分としてはかなりパーソナルなものではあると思います。“道”のことを歌ってるんで、そこからアルバムのタイトルも引っ張られましたね。

西川:このアウトロ、何もしていないんですよ。普通ならギターソロとか入れると思う。でも、何もなしでホワーッとしてるだけのアウトロというのが、逆にイカしてる。

ーー“道”と言えばロードムービー。本作には70年代のアメリカン・ニューシネマ的なイメージが底流にある気がします。

田中:この曲はアウトロ込みで、そこがエンディングロールというか。そんなイメージでしたね、こういう曲があってもいいんじゃないかと。ここで壮大な景色が見えてくれればいいなと思います。

■リリース情報
GRAPEVINE
『あのみちから遠くはなれて』
2025年5月28日(水)リリース

【初回限定盤(CD+DVD)】
価格:¥5,500(税込)
※3方背ブックケース仕様

【通常盤(CD)】
価格:¥3,630(税込)

【VICTOR ONLINE STORE限定セット(初回限定盤+オリジナルバックパック)】
価格:¥22,000(税込)

<CD 収録曲>
01 どあほう
02 天使ちゃん
03 ドスとF
04 わすれもの
05 my love, my guys
06 NINJA POP CITY
07 カラヴィンカ
08 はれのひ
09 猫行灯
10 追憶のビュイック

<DVD「LIVE AT UMEDA TRAD 2024」収録曲>※初回限定盤のみに付属
デビュー前、大阪時代のホームグラウンドだったumeda TRAD(旧梅田バナナホール)の閉館に際して開催した「GRAPEVINE The Decade Show : Trad Gala」よりライブ映像6曲を収録。 01吹曝しのシェヴィ
02 Time is on your back
03 Through time
04 君を待つ間
05 覚醒
06 Alright

■ライブ情報
『GRAPEVINE TOUR 2025』

6月21日(土)神戸Harbor Studio
開場/開演 16:15/17:00
6月22日(日)SOUND SHOWER ark
開場/開演 16:15/17:00
6月28日(土)広島LIVE VANQUISH
開場/開演 16:30/17:00
6月29日(日)高松MONSTER
開場/開演 16:30/17:00
7月4日(金)梅田クラブクアトロ
開場/開演 18:00/19:00
7月5日(土)名古屋クラブクアトロ
開場/開演 16:15/17:00
7月10日(木)恵比寿LIQUIDROOM
開場/開演 18:00/19:00
7月12日(土)金沢EIGHT HALL
開場/開演 16:30/17:00
7月13日(日)長野CLUB JUNK BOX
開場/開演 16:30/17:00
7月20日(日)新潟LOTS
開場/開演 16:15/17:00
7月21日(月)横浜Bay Hall
開場/開演 16:00/17:00
9月6日(土)福岡DRUM LOGOS
開場/開演 16:15/17:00
9月7日(日)鹿児島CAPARVOホール
開場/開演 15:30/16:00
9月13日(土)札幌ペニーレーン24
開場/開演 16:30/17:00
9月15日(月)仙台Rensa
開場/開演 15:30/16:00
9月20日(土)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
開場/開演 16:30/17:00

■関連リンク
GRAPEVINE アーティストリンク:https://lit.link/GRAPEVINE
GRAPEVINE オフィシャルサイト:https://www.grapevineonline.jp/

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