GRAPEVINE、アナログ盤リリースを経た追加公演ならではの手応え この先に続く物語も想像させたステージ

GRAPEVINE、Zepp DiverCity公演レポ

 GRAPEVINEが『GRAPEVINE Almost There Tour extra show』と題した東名阪ツアーのファイナルを、3月28日にZepp DiverCity (TOKYO)で迎えた。

田中和将(Vo/Gt)

 田中和将(Vo/Gt)が最初のMCで「『Almost There Tour』追加でございます。昨今ツアーが短いからすぐに終わってしまう。やり足りひんということで、3本追加させていただきました」と言ったが、それだけが理由ではない。中盤で田中が触れた『Almost there』のアナログ盤が、新曲「Loss(Angels)」を加えて1月24日にリリースされ、それに伴いこのツアーが発表されていたのだ。とは言え、ツアーの“追加”であるのも勿論で、一度仕上げたツアーに更に一筆加えた手応えと重みを感じさせ、この先に続くストーリーも想像させるステージだった。

西川弘剛(Gt)

 歓声の中メンバーが登場し、披露されたオープニングナンバーは「雀の子」。アルバム『Almost there』の先行シングルとしてリリースされた曲だ。これを起点にした流れがこの日まで続いていることを思わせると同時に、この斬新な曲を初めて聴いた時の驚きを思い出した。ステージの5人がそれぞれ別なことをしているような複雑な構成の曲だから、昨年ツアーが始まった頃は「誰かがコケたら皆コケる」と西川弘剛(Gt)が言っていたものだが、今は流石にそんな危なっかしさはなく、程よい躍動感のある曲となって響いてくる。関西弁の歌詞の面白みを田中は増幅させていて、〈饂飩食わしたる〉という一節をセリフのように吐き出した。

亀井亨(Dr)

 複雑な「雀の子」と対照的にクールな反復ビートの「Neo Burlesque」に続いた「Ub(You bet on it)」は、亀井亨(Dr)がリズミカルにドラムの縁を叩き田中がザクザクとギターで刻んで歌い出すと、このバンドらしい安定感のあるサウンドに。2ndシングルだったこの曲がアルバムタイトルの由来になったことを改めて思い出す。自らを「もう少し」と鼓舞するような意味なのだが、実際彼らはツアーを経て『Almost there』を出したところから既に何歩も進んできていることを実感した。

 ここで冒頭に書いたMCがあり、白シャツの腕を捲り上げながら「最後までよろしく〜」と呼びかけた田中が両手を眼鏡の形にして目の前に持ってきた。そして始まった曲は「EVIL EYE」。リスクを恐れない歌とスピード感のある演奏がカラフルな照明に映え、オーディエンスは腕を上げて西川のギターソロを煽る。エンディングで「確かめるぜ〜!」と田中は声を張った。そして西川がノイジーなギターを鳴らしてフロアを沸かせた「マダカレークッテナイデショー」は、2年前にリリース20周年ライブを行なった『another sky』収録のファンキーチューン。大きく揺れたフロアに向かって田中が「おっだいばー! 東京のお台場のみなさん! オン・ベース、金やんが行く!」とコールすると、長身を黒のシャツとパンツに包んだ金戸覚(Ba)が前に出てダイナミックなベースソロで存在感を示した。

 存分に温まったところで一息入れ、落ち着いたテイストの「それは永遠」へ。高野勲(Key)が柔らかなオルガンを響かせて歌と重ねていく。西川が軽快なギターで空気を変えた「TOKAKU」は、〈どんな気がする〉と歌うサビで田中がオーディエンスに問いかけるように手を伸ばした。〈どんな気がする〉はボブ・ディランの「Like a Rolling Stone」の一節と重なる。このZepp DiverCityはボブ・ディランの日本でのお気に入りの会場だそうで、事務室には直筆サインのポスターが飾られている。

 亀井の緊張感あるドラムソロから始まったのは「ねずみ浄土」。そのテンションのままに曲に入り、田中が気持ちよさそうにファルセットで歌い出した。これは前作『新しい果実』の曲だが「雀の子」の前哨戦と言いたい曲。微妙な間合いで音数を抑えた演奏で進めていくライブならではの緊張感が絶妙で、後半の西川と田中のフリーキーなギター合戦が熱を帯びた。そしてラストの〈好き嫌いはよせ〉というアカペラコーラスパートでは田中が明るく照らされたフロアを指差し、歓声があがった。

 抑制の効いた演奏と歌が幻想的な「停電の夜」は、緩やかなグルーヴが心地よく、田中も気持ちよさそうにファルセットで歌い上げる。ここから『Almost there』の曲が続いていくことの前触れだったのだろうか。ディジリドゥのような低音が響いて始まった「アマテラス」は、田中が体でビートを取りながらラップパートを歌い、〈アマテラス〉と繰り返すサビでは楽器が微妙な重なりで鳴って不穏な空気を醸し出す。田中は間奏でも歌いながらもフリーキーなソロを弾き、〈わたし誰?〉とロングトーンで歌い上げ、答えのないカオスに引き込んだ。

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