Maverick Mom、『COMPASS』東京公演で示した誰かの記憶に残る“自分らしさ”　成長を続けるバンドの現在地を観て

　南出が「さあ、盛り上がっていこうぜ。東京！」と焚き付け、ついにライブは終盤へ。2nd ミニアルバム『unknown』のリードトラックである「Fancy」を投入し、再び熱気を最高潮まで引き上げていく。続く「青く、春」のサビでは、至るところから掲げられた拳が颯爽と天を仰いだ。ソロパートを引き継ぎながら導かれるセッションになると、メンバーは巧みな演奏で「バンドってカッコイイ」というシンプルな事実をまざまざと突きつける。さらには〈革命起こせ　若きこの世代で／僕らは歌う　未来に生きる歌〉と合唱を巻き起こし、大団円な空気を熟成させていった。

　ドラムフィルを経て、南出が〈あなただけ映す世界で芽吹いた恋情花〉と歌声を紡ぐと、場内は大盛り上がり。バイラルヒットとなっている「儚夏」をドロップし、クライマックスへのギアをグッと踏みこむ。祭りのリズムでオーディエンスを躍らせ、エモーショナルをぶつけるようなアウトロで魅了し、エネルギッシュなパフォーマンスを刻んだ。ラストの1曲となったのは、南出がソロで奏でる「最後に。」。ほかのメンバーが去った舞台に1人で佇みながら、優しい歌声とカッティングでメッセージを丁寧に手渡していく。彼から発せられる柔らかな熱にほだされたのか、オーディエンスは吸いこまれるようにステージを見つめていた。

　本編が終わってしばらくすると、鳴りやまぬ拍手に呼ばれてアンコールへ。先立って姿を見せた中野武瑠（Gt）がお立ち台の上でギターをかき鳴らし、そのメロディにエスコートされるようにして3人も合流。サイケデリックな音像の「Transcend even god」へと誘われた。「まだまだ休ませるつもりはない」とでも言わんばかりの選曲に、オーディエンスもヒートアップしていく。ラストを飾ったのは、Maverick Momのキャリアを語る上で欠かせない「Monster」。ベースとギターで交互にソロプレイをするシーンでは、表情から弾くスタイルをタイゾー（Ba）が繰り出せば、余裕たっぷりな面持ちで中野が打ち返す。片方が仕掛ければ、もう片方が仕掛け返すリレーを辿り、最後はON（Dr）にバトンタッチ。華麗なタム回しで卓越したスキルを披露するだけにとどまらず、抑揚をつけてメロディックに打音を弾ませていく。最後の最後まで妥協のないステージングで、Maverick Momの指針となるであろう日を結んだのだった。

　ポップスに傾倒した『COMPASS』が生まれたことにより、Maverick Momのライブフォーマットが確立してきたように感じた本公演。新たなピースを得たことで、セットリストとして曲順を再構築した時にそれぞれの作品が持つ個性をより際立たせられるようになったのは間違いない。異なるリズムやグルーヴを操りながら、観客のエモーションと共鳴し、思わず身を委ねたくなる空間を彼らは創出していくのだ。素直な気持ちで吸収し、成長を続けていく4人なら、きっと革命を起こしてくれることだろう。

Maverick Mom『EP「COMPASS」リリースツアー』東京公演　写真をすべて見る

■『EP「COMPASS」リリースツアー』
2025年5月10日＠東京・Spotify O-Crest

＜Maverick Mom セトリ＞
01.イエローメッセンジャー
02.ZONE
03.アスニヒカル
04.存在の証明
05.旅立日記
06.My name
07.傍惚れ
08.Fancy
09.青く、春
10.儚夏
11.最後に。
En1.Transcend even god
En2.Monster