「石井恵梨子のライブハウス直送」Vol.7:Dos Monosはロックで躍動しヒップホップで突き破る 未知なる変異体の“進化”を目撃

昨年の傑作アルバム『Dos Atomos』でDos Monosは一気にロック化したが、ライブはバンドセットの日もあれば3人編成の日もある。この日は後者。中盤から荘子itもギターを置いて舞台を練り歩き、旧作品からのドープな曲が続いていく。生バンドでは表現しきれない音の歪み、重低音の響きはきわめて現代的だ。そして、どんな編成で見せようと、ストレンジに蠢くものが何かを食い破って現前する瞬間一一この日プレイされた「Estrus2」の歌詞から引用するなら〈フラストレーション/晴らすデモンストレーション〉の具現化、その時には〈セロトニン/アドレナリン/ドーパミン〉が一気に噴出する一一というのがDos Monosのステージだ。後半に披露された新曲もまさにそうだった。

「Pearl」と名づけられた新曲は『Dos Atomos』のロック路線とも違い、メロディアスなトラックが歪に回転しながらダンスビートに変わっていく、というもの。没はオートチューンを使ってメロディを追い、荘子itはいつも以上に冷徹に言葉を畳み掛けていく。TaiTanのラップが後半ぐんぐんと熱量を上げていき、かと思えばいったんチルアウト……したように見せかけて、大音量のギターノイズで最後に爆発が来る、筋書きの読めないサスペンスみたいな楽曲だ。ロックかヒップホップかの二元論ではなく、ただ未知の変異体として進化していくDos Monosの美学が詰まっているかのよう。なお、このライブの直後、新作EP『Dos Moons』が5月7日にリリースされること、カバーアートはあの伊藤潤二が手がけていることが発表されたのだった。


新曲のあと荘子itは再びギターを手にし、ラストは『Dos Atomos』から「KIDS」、そして「HI NO TORI」となる。あらゆるポップカルチャーからの引用が凄まじい前者も相当なパンチがあるが、イントロのギターリフ一発で勝負をつける「HI NO TORI」は、もうすっかり必殺曲のひとつになった。ギターが鳴るたびフロアから拳と怒号が上がり、荘子itが「もっとイケんだろ!」と煽り立て、いよいよ“Oi”コールが生まれたところでフロアは大爆発。そのうちモッシュピットも起こりそうな勢いだ。アルバムの知性、膨大な文脈の複雑さを絶賛する声は多かったが、最も重要なのはこのフロアのヤバさ、暴動なのか祝祭なのかわからないが「今にも何かが起きそう」というムードではないかと肌で感じる。新作EPリリースの2日後、5月9日には、過去最大キャパとなるSpotify O-EASTワンマン公演が決まっている。

「飢えてる人に来てほしいですね。最近なんか音楽面白くないな、音楽とかライブもう十分かなぁ、みたいな人にこそ観てほしい」と荘子it。バンドセットなので内容は大きく変わるが、見たことありそうで実はどこにもなかった、もしくは今まで見知ってきた当たり前に圧倒的なバグを起こす、そんな生バンドの音が体験できるはずだ。
























