連載「lit!」第148回:ベンソン・ブーン、CA7RIEL & Paco Amoroso……“春フェス”で存在感示すグローバルアーティストの新作
日本国内で音楽フェスは夏の風物詩だが、世界的に見れば4月〜6月開催のものも多く、春フェスが定着している。例えば世界最大級の音楽フェス『コーチェラ』こと『Coachella Valley Music and Arts Festival』は、米国カリフォルニアの砂漠地帯で毎年4月に2週間に渡って開催される。2011年以降はYouTubeでの生配信を継続しており、日本でも年々盛り上がりを見せている。
これまでも「lit!」グローバルポップ回では、今年圧巻のパフォーマンスで度肝を抜いたレディー・ガガやBLACKPINKのJENNIEなど、コーチェラ出演アーティストを多数扱ってきた。
今回は春フェス特集ということで、スペイン・バルセロナで6月に開催される『Primavera Sound』(『プリマヴェーラ』)と、私が今年3月に実際に南米チリを訪れて現地で参加した『Lollapalooza South America』(『ロラパルーザ』/チリ・アルゼンチン・ブラジル)に出演者の新作に絞って紹介していきたい。
ベンソン・ブーン「Mystical Magical」
『コーチェラ』のステージで自身の敬愛するQueenのブライアン・メイを召喚し、「Bohemian Rhapsody」を演奏するという伝説を残したベンソン・ブーン。昨年の特大ヒット曲「Beautiful Things」を手に今年は来日公演含め精力的に世界を回っている彼が、その勢いに乗るようにして新作アルバム『American Heart』を6月にリリースする。
先行リリースされた「Mystical Magical」では、80年代ポップスへの愛を臆面なく表現するブーンらしく、サビの部分でオリビア・ニュートン=ジョンの「Physical」をストレートにオマージュしている。ともすれば大味とも捉えられかねない大胆なスタジアム向きのポップスが彼の特徴のひとつだが、実際に南米チリの『ロラパルーザ』で生パフォーマンスを見てみると、その圧倒的なライブ力の高さにひれ伏すばかりだった。何度繰り出されたかわからない宙返りを始めとする身体能力と迫力満点で狂いのない歌唱力は、スケール感の大きな楽曲をこなせるだけのスター性を証明していた。
『コーチェラ』2週目には、ブライアン・メイの紙パネルを登場させるという遊び心のある演出も見られた。「音楽で認められたい」という理由で大手オーディション番組を辞退した経歴を持つブーンだが、間違いなくその評価は世界に拡大中だ。
CA7RIEL & Paco Amoroso「DUMBAI - Live at NPR MUSIC's Tiny Desk」
もう一組『ロラパルーザ』で衝撃を受けたアーティストが、今年の『フジロック』でも来日が決定しているCA7RIEL & Paco Amoroso(カトリエル&パコ・アモロソ)だ。
アルゼンチン・ブエノスアイレス出身の幼馴染である彼らは、昨年米メディア・NPRの人気企画『Tiny Desk Concert』に出演。再生回数は半年で3,400万回超という本シリーズ内でも記録的なヒットとなった。新作ミニアルバム『PAPOTA』にもその模様は収録されており、エレクトロニックを基調としつつ、ヒップホップやファンクの要素を取り入れた実験性も兼ね備えたポップスとして絶品だ。
現在世界を回っている彼らの南米での人気はとにかく凄まじく、私が見たときは観客が多すぎてフロア内にまったく収まりきれていなかった。『コーチェラ』でも観客をしっかり躍らせており、緩やかな雰囲気だがメリハリのある演奏技術はトップレベルだ。こんなベストタイミングで『フジロック』に来日するのは奇跡的なので、ぜひ現地に足を運んで彼らの演奏に酔いしれたい。





















