ぜったくん×木暮栄一(the band apart)、“アスパラガス”を歌う! コラボの真意とヒップホップを語り尽くす

ぜったくん&木暮栄一が語る「アスパラ」

ラップのなかにはアスパラのことがひとつも入ってない(ぜったくん)

ぜったくん&木暮栄一(撮影=池村隆司)

――楽曲のテーマ的には“アスパラ”や“春”を題材にしつつ、リリックの内容はそこに引っ張られ過ぎない自由さがあるところもいいですよね。

ぜったくん:全体的にめっちゃゆるいですよね(笑)。サビのフックで〈アスパラッパッパ~〉と歌っているけど、ラップのなかにはアスパラのことがひとつも入ってないんですよ。ラップでもアスパラのことを言い過ぎると、みんなが体感している春が、あまりにもアスパラに寄り過ぎる気がしたんですよね。木暮さんがアスパラとまったく関係ないラップをしてくれたことで、僕もあたたかめの空気感を守りながら日常のことをラップしようと思って。全体としてくどくない、春にぴったりな曲になりました。

――なおかつ、木暮さんのリリックにある〈アイスクリーム〉のフレーズを受けて、ぜったくんが〈アイスクリームを/食べながら Air Pods ノイキャンして〉と歌うなど、リリック面での相乗効果も見られます。

ぜったくん:もともとはその木暮さんのバースに続けて自分がラップする予定で書いたんですけど、その間に木暮さんが〈食べる 食べる 食べる 食べる〉というパートを追加してくれて。そこで使われているコラ(西アフリカ発祥の撥弦楽器)の音が春っぽくてめちゃよかったので、自分のラップパートはサビのあとにするという構成にしました。あのコラの音はすごくよかったです。

木暮:2回目のやり取りの時に無断でこっそりと増やしたんですけど、気に入ってくれたみたいでよかったです(笑)。ループしているトラックにそういう変化が入ると、クイックミックスしているみたいで面白いかなと思って。

ぜったくん:それとこの〈アイスクリームを/食べながら Air Pods ノイキャンして/「っていうかこの曲なんだっけ?」〉の後ろで、バンアパの「Eric.W」のリードギターのフレーズを入れてもらったんです。最初は原さんがベースを弾いてくれている後半に入れる予定だったんですけど、原さんのベースがすごくトリッキーだったのでここに持ってきて。そうしたら、僕の〈「っていうかこの曲なんだっけ?」〉というフレーズと一致しちゃって。曲の構成的にはまとまっているけど、流れ的にちょっと失礼になってしまって、申し訳なさもあったんですけど。

木暮:別にいいよ(笑)。すごくよくできた構成だと思うし。

ぜったくん&木暮栄一(撮影=池村隆司)

――個人的には木暮さんの〈ロレックスより結局は カシオ〉というフレーズが、逆フレックス感があって刺さりました。

ぜったくん:ここ、ヤバいですよね。僕からは絶対に出てこないですから。ロレックスしていたんですか?

木暮:いや、仲のいいバンドの奴がしていたんだけど、「値崩れしないし投資にもなるから」とか話してるのを聞いて、「何言ってるんだ、こいつ?」と思って興味がなくなったんだよね(笑)。

――(笑)。ちなみに木暮さんのリリックに〈待ち合わせはいつでも幽楽町〉とありますが、KOGREY DONUTS名義の作品にも「幽楽町ライン」という楽曲がありましたよね。

木暮:自分は有楽町線の沿線に住んでいて、アクセスもいいし、有楽町は好きな街で、字面も好きなんです。そこで“有”の字を“幽”に変えて、想像上でのもっと楽しい街みたいなイメージで使っていますね。

――生楽器の演奏に関しては、どのように作業していったのでしょうか。

ぜったくん:ベースは原さん、ギターは荒井さんが弾いてくれることになって、僕もスタジオにお邪魔して、レコーディングに立ち会いました。秘密基地みたいなスタジオで、初めてなのにすごく落ち着ける場所でした。

木暮:永遠の部室みたいな感じだよね(笑)。

ぜったくん:アットホームな雰囲気がすごく良くて。今回は、本来は川崎さんが弾いている「Eric.W」のリードのフレーズを荒井さんが弾いてくれたんですけど、その時に自分も裏でアコギを持ってコードを弾きながら相談していたんです。その時間がめっちゃ幸せだったんですよね。バンドをやっていた頃に憧れていた人たちと一緒に音を鳴らしている状況がすごく幸せで、あの時、実は言葉では言い表せない感情になっていました。

木暮:そんなエモーションがあったんだ。気づかなかった(笑)。

うちのバンドの楽曲よりも洗練されていると思いますよ(笑)(木暮)

ぜったくん&木暮栄一(撮影=池村隆司)

――おふたりのなかで、アレンジ的なビジョンはありましたか?

木暮:原の弾くベースは少し歪んでいて、ミッドが強い音色になるのがわかっていたので、事前にそれでOKかは確認しましたね。「絶対にこういう音色になるし、フレージングもこれくらい動かないと原に弾いてもらう意味がなくなるけど、どうかな?」と確認したら「いいっすね!」って言ってくれて。

ぜったくん:原さんのベースの音色はもともと知っていましたし、木暮さんは原さんの鳴らす音色をシミュレーションできるプラグインを持っているんですよね。それを聴かせてもらって「めっちゃいい!」と思って。アレンジに関しては、(デモの状態から)皆さんの生演奏に差し替えることで絶対によくなると思っていたし、トランペットとトロンボーンを吹いてくれているマコトコンドウくんが仮で入れてくれたブラスもすごく合っていて。その音も足した状態で原さんと荒井さんに弾いてもらったので、いい感じになりました。

――マコトコンドウさんの生ブラスが入ったことで、現在進行形のネオソウルっぽさも加わっていますよね。

ぜったくん:ですね。マコトくんは自分ひとりで歌もトラックメイクもできる人で、ネオソウルやヒップホップも好きなんですけど、こういう雰囲気で吹いてくれる人はあまりいないので、今回お願いしました。実は全部宅録でやってもらっていて。このブラスが入ることで温度が2、3度上昇してあたたかくなった印象で、最後のトロンボーンソロも雪解け感を感じました。

ぜったくん&木暮栄一(撮影=池村隆司)

木暮:今の話で思い出したけど、もともとは僕が打ち込みでブラスを入れていたんですよ。それが90年代に活動していたZOOみたいな、ちょっと懐かしい感じの音色だったんです。今はK-POPでもニュージャックスウィングがリバイバルしているし、「ぜったくんに響くかな?」と思ったんですけど、それは響かなかったみたいですね(笑)。

ぜったくん:自分にはまだ理解できなかったみたいです。すみません(笑)。

木暮:でも、結果ブラスも生にしてすごくよかったです。ZOOはちょっとリバイバルが早すぎました(笑)。

――生演奏がふんだんに入りつつ、リズムはタイトで、ミニマルなファンク感があるトラックですよね。

ぜったくん:自分が最初にデモを作る時、ヴルフペック的なミニマル感のある曲を作りたいと思っていたんですよね。だから、そういう雰囲気になったんだと思います。ただ、そこのイメージの共有はしていなくて。

――バンアパはアンサンブルが複雑でも風通しのよさが感じられますが、そういう魅力が出ているようにも感じました。

木暮:いやあ、うちのバンドの楽曲よりも洗練されていると思いますよ(笑)。本格イタリアンの香りがしますね。

ぜったくん:マコトくんも参加してくれたからかな? でも、いろんなところで修業した人たちが一緒に集まって料理した感じがします。種類は違うけど、それぞれのよさの味があるっていう。

ぜったくん - 「アスパラfeat. 木暮栄一 (the band apart)」Official Lyric Video

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