ROTTENGRAFFTY、怒涛のツアーは「幸福感に救われた」 25年間の熱と決意を詰め込んだ『わびさび』ロングインタビュー

長く続けてきたバンドの特権とも言える“美しい物語”
――そんな中で、NOBUYAさん作詞曲の「夢幻獄」はエレクトロ色が強めで、いいアクセントになっていますよね。
NOBUYA:KAZUOMIが現場から離れて、サウンドプロデュースにまわって。今回(KAZUOMIが関わったの)は「暁アイデンティティ(New Mix)」だけだから、よりN∀OKIの色が強い作品になってて、僕らがガキの頃に聴いていたようなパンクやロックのメロディ感が出ています。だからこそ、僕はそこじゃない、現代の若い子たちが聴いても「知ってる」「好き」って思えるところを狙って作りました。でも僕、自分の作詞曲した楽曲をロットンで出すことは避けてきたので、今回が初めてなんです、25周年にして。
――そうなんですね!
NOBUYA:KAZUOMIもN∀OKIも色が濃いので、そこに自分の色を出すとまとまりがなくなると思っていたから。だけど今回は、N∀OKI色以外を出すために、この楽曲を作りました。
――これからのロットンの可能性を見せてくれる楽曲だと思います。「Blown in the Reborn」は、どんなイメージで書かれたんですか?
N∀OKI:これが、まさにコロナ禍に書いた曲です。このビート感ってロットンになかったなって。歌詞の情報量も詰め込みすぎず、一語一句聴けるテンポ感と、すぐに歌えるような感じで。あの期間がなかったら書いてへんかった曲やと思います。でも、ポンと配信とかでは出さずに、ライブで育ててきて。去年から今年のツアータイトルにもしましたけど、ほぼ全カ所やっていたし。ライブハウスでやり続けて音源化する方法も昔っぽいですよね。
――ライブでやり続けることで変化していった形をレコーディングしたんですか?
N∀OKI:仮デモもいいテイクで録れていたんですけど、やっぱりライブで歌い込んでいくと変わっちゃうし、気持ちにも余裕が出たので、結局録り直しましたね。
――だから熱量がパッケージされているんですね。そしてライブと同じタイトルの「響都グラフティー」は、ライブのタイトルが先だったのか、それとも曲名が先だったのか。また、ライブのテーマソングのようなものを作ろうとしていたのか。そのあたりが気になります。
N∀OKI:NOBUYAが「『響く都2』みたいなんを作ってや」って言っていたんです。もともとはこの曲、そういう感じじゃなかったんですけど。歌詞も違ったのかな。そうしたら、この曲を聴かせた時にNOBUYAが「これが『響く都2』ちゃうん?」って言ってくれて、それで、ああ確かにってなったんです。まだタイトルは決まっていなかったんですけど、京都の歌にしようと。で、イベントのタイトルを「『響都グラフティー』がいいんちゃう?」ってメンバーに提案した時に、NOBUYAから「この楽曲のタイトルも『響都グラフティー』ちゃう?」って言われたんですよ。
――そういう順番なんですね。こうして聞いていると、常にNOBUYAさんがN∀OKIさんにアイデアの種を投げているというか。
NOBUYA:そうですね。僕、ずっとそういう立ち位置なので。KAZUOMIの楽曲に対しても、N∀OKIの楽曲に対しても。まあまあまあ、無茶苦茶ダサい言葉ですけど(笑)、2人の楽曲のファンなんで、僕は。
N∀OKI:ははははは!
NOBUYA:誰よりも僕が理解していると思っているし。客観的に見れるところもあるじゃないですか。アイデアを伝えた時も、すぐ行動してくれるので。
――そんな中で、なぜ今「響く都2」を作ってほしいとリクエストしたんでしょう。
NOBUYA:パルスプラザのワンマンで、「響く都」の続編みたいな曲を初披露できたらめちゃくちゃ美しいと思っていたんですよね。
――長く続けてきたバンドの特権とも言える美しい物語だと思います。でも、その次に今ならではの、未来も見せるMASAHIKOさんとN∀OKIさんの共作「Activism」で締められているところも、また別の美しさがありますね。これは、先ほどもお話が出たように、MASAHIKOさんの家で作られたと。
N∀OKI:そうですね。元からあった歌メロに、MASAHIKOがコードを当ててくれたんです。最初はめちゃくちゃハードロックだったんですけど、どんどんダサくなって(笑)。ロットンがまだやっていない感じにしよう、と軌道修正してからは煮詰まることなく1日でオケができて、次の日にはデモを歌入れして。歌詞も、最初からほぼ変わっていない。バランスが取れている中でも、しっかりMASAHIKOの色が出たと思います。
DISC2『さび』にはTAKUYA∞ 、TAKUMA、大森靖子らがフィーチャリング参加
――ハードロックバージョンも聴いてみたくなりました(笑)。DISC2のお話も聞いていきますね。収録曲もキラーチューンばかりで、参加されているボーカリストもバラエティに富んでいますが、どんな流れで決まっていったんですか?
NOBUYA:たとえばUVERworldのTAKUTA∞は、(今回歌っている)「暴イズDE∀D」を発売した時に、地元・滋賀のCDショップで試聴して「なんなんこのバンド!?」って買ってくれたらしいんですよ。まだSOUND極ROAD時代だったのかな。で、そのことを初めて会ったときに伝えてくれて。っていうドラマがあったので、TAKUTA∞に頼むなら「暴イズDE∀D」だな、とか。
――なるほど。
NOBUYA:「切り札」は初めの代表曲、1曲目にできた曲なんですけど、僕らの初ライブって、観に来てくれたのが10-FEETだけやったんです。ならTAKUMAに「切り札」歌ってほしいなとか。で、くーちゃん(野生爆弾・くっきー!)は、出会ったんが「夕映え雨アガレ」をライブでよくやっていた頃で。僕らもバンドでメシ食えてない、くーちゃんもお笑いでメシ食えてない時代だった。よくライブにも遊びに来てくれたし、飲みに行ったり遊んでたんですね。だから今回「『夕映え』やってくれへん?」って言ったら「すぐ歌える!」みたいな。
――素敵な話が続きますね。
NOBUYA:そして大森(靖子)さん、実は面識なかったんですけど、女性シンガーを絶対に招きたかったんですよ。スカビートというか、裏打ちがある楽曲がよかったので「ASIA(N MARKET POW)」でやりたいとはずっと思ってました。でも、誰がいいか出てこなくって。悩んだ挙句、「この人しかいいひん」って大森さんが浮かんで、ロットンのグループLINEに「大森さんどう?」って聞いたら、N∀OKIが真っ先に「最高!」って。
N∀OKI:みんなが一緒にやりまくってるボーカリストじゃおもんないし。僕ら界隈とは違うところにいる人がええし、ロットンやって美しくないとあかんってさんざん意見を出し合って。でも見つからなくって、「女性シンガーとやるの、もう無理なんちゃう?」ってなってたら、めちゃくちゃベストな大森さんをNOBUYAが挙げてくれて、そこだ! って。
NOBUYA:アイデア浮かんだすぐ後に、『TOKYO ISLAND』ってフェスで一緒やったんです。そこでお願いしたら、ピエール中野(凛として時雨)に相談したらしく(笑)。中野が「ロットンとは絶対に一緒にやったほうがいい」って言ってくれたみたいなんですよ。
――中野くんグッジョブですね(笑)。
NOBUYA:で、ANARCHYくんは、このラインナップだとラッパーにも参加してもらったら面白いよねってなって、そうしたらN∀OKIが「ANARCHYと一緒にやりたい」ってアイデアを出してくれたんで。
N∀OKI:京都出身っていうのもあるし。ANARCHYってずっとかっこいいんですよね。ラッパーはもちろん、色んなアーティストにリスペクトされているし、向こうもノリノリだったので。そういえば、参加ボーカリストってみんな西の出身なんですよ。大森さんはどこやっけ?
NOBUYA:四国(愛媛県松山市)。
N∀OKI:やっぱ西やん(笑)。
――西のパワーを感じます(笑)。どの楽曲も物語や特筆すべきところがあるんですけど、中でも大森さんはジャストですよね。かわいさと色っぽさと狂気を出せる女性シンガーって、限られていると思うから。
NOBUYA:今おっしゃっていただいたあたりを、まさに僕らは求めていたんですけど、すべてレコーディングのときに表現してくれました。プロやな、すげえなって思いましたね。
――あと、全曲通して演奏の後に参加ボーカリストが曲名を言うところにも、愛を感じました。
NOBUYA:一発目のレコーディングがくーちゃんやったんですけど。N∀OKIが、くーちゃんのネタで、喉になんか詰まったような声でしゃべるのが面白いから、そのテイクを録ってほしいって言っていたんです。でも、それが録れなかったんで、なんかおもろいことないかな?って、くーちゃんに「喉が詰まってる声で曲名言ってくれへん?」ってお願いして録ったんです。それを曲のケツにつけたら、めっちゃ面白かった。それから、ほかの人にも曲名言ってもらうんアリやなって思って、そっからですね。
N∀OKI:曲が始まる前じゃないっていうんもおもろいよな(笑)。


















