Wez Atlasの人生観を届けた初ワンマン w.a.uとのグルーヴで熱気と一体感を高め合った一夜に
Wez Atlasが自身初となるワンマンライブ『Wez Atlas LIVE 2025 “ABOUT TIME”』を渋谷WWWで開催した。
日本とアメリカをルーツに持ち、東京を拠点に活動しているヒップホップアーティスト、Wez Atlas。2023年、2024年と2年連続で米テキサスで行われる『SXSW』、国内では『METROCK 2024』に出演するなど、ライブパフォーマーとしても確実にスケールアップしてきた。最新EP『ABOUT TIME』(2024年)を携えた今回のライブには、ゲストとしてラッパーのSkaai、シンガーのSagiri Sólが登場。Wezの音楽的盟友と呼ぶべきクリエイティブコレクティブ/レーベル w.a.uのメンバーとともに、質の高いバンドグルーヴとWez自身の人生、価値観、“今”の感情が刻まれた楽曲を堪能できる、素晴らしいステージを繰り広げた。
スマートフォンの振動、街のノイズなどをコラージュした「Intro」からライブはスタート。EP『ABOUT TIME』のプロデュース/トラックメイクを手がけたKota Matsukawa(w.a.u/Ba)をはじめとするバンドメンバー(ギター、ベース、ドラム、パーカッション、PC&マニピュレーター)に続き、Wez Atlasが登場し、「One Life」で初のワンマンライブは幕を開けた。〈明日のことなんかはさっぱり分かんない/やらなくてがっかりよりやって失敗しちゃえ〉というフレーズを響かせ、濃密でしなやかなバンドサウンド、エモーショナルなギターソロとともに会場の熱気を引き上げる。
「調子どう? みんな! あけおめ! Let’s Dance, C’mon!」という言葉から「Echo」、「空を飛んでる自分の姿を想像して」というシャウトに導かれた「Zuum!」などダンサブルな楽曲を連ね、オーディエンスの身体を揺らしまくった。
ここからはWezの多彩な音楽性をダイレクトに体感できる時間が続いた。ヘヴィなサウンドが炸裂した「T.I.M.M」、オリエンタルな音像を取り入れた「PSA」、さらにHelsinki Lambda Clubとのコラボによるオルタナティブナンバー「Mystery Train (feat.Wez Atlas)」(Helsinki Lambda Club)、爽快なギターリフを軸にしたロックチューン「RUN」、そして、「15歳のときからの知り合い」だというSagiri Sólとともに披露された「(Da Da Da) Day Ones (feat. Sagiri Sól)」。“Day Ones”とは“幼なじみ”や“昔からの仲間”という意味。軽快なグルーヴに乗せて〈Da Da Da〉の大合唱が巻き起こり、ナチュラルな一体感を生み出した。
ライブ中盤では、Wez Atlasのこれまでのキャリア、そして、その中で辿ってきた感情や価値観の変遷が体感できる楽曲が続いた。「グッと遡って、1st EPの曲をやろうかな」と紹介されたのは、2019年のEP『Saturday』に収められた「Pink Lemonade」。パーカッションを強調したトラック、スキルフルかつエモーショナルなラップが響き合うこの曲はまさにWezの原点だ。
「最高のシチュエーションでも、“ここは上手くいってないな”というところを見つけちゃうんだよね。そういうことも全部、音楽に込めて」というMCに導かれたのは「Overthink」。抑制を効かせたフロウの中で描かれるのは、“考えすぎるのはもうやめよう”という逡巡。〈空気なんか読まなくてもいいのかも〉という日本語のラインによって、オーディエンスとの距離がグッと近くなる。「でも、対処法は考えていて。英語のフレーズで“It Is What It Is”。“まあ、そんなもんだよね”って意味なんだけど、みんなにもぜひ使ってほしいです」というトークから「It Is What It Is」へ。セルフボースティングだけではなく、自らの弱さを明らかにし、それを音楽へと結びつける。そこで生じる親近感もまた、Wezの大きな魅力だ。
開放感に溢れた「Damn!」、チルなバイブレーションが広がった「Me Today」を繋げた後、いったんバンドメンバーが下がり、Wezはトラックを流しながら「Summit」をひとりでパフォーマンス。〈俺は俺、他の人とは比べず/強く生きる〉というリリックには、Wez自身の決意がはっきりと刻み込まれていた。「去年の春くらいに、進めなくなって。好きで始めたことが“好きじゃないかも”というタイミングがあって。結構しんどかったけど、そこで自分の新しい強さを見つけられて『Summit』ができたんですよね。みんなもしんどいことがあったら、とりあえずそこを通り抜けてください」という赤裸々なMCも心に残った。