関西で注目集める謎多きバンド・KI_ENとは? “歌心”あるライブから感じたポテンシャル
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京都発、KI_EN(きえん)。昨年11月1日に1stシングル「スノーハート」をリリースした、野川爽良(Gt/Vo)、橋本歩夢(Key)、澤風雅(Gt)からなる3人組バンドだ。現時点でオフィシャルサイトはなく、SNSにアップされたライブの写真やショート動画、ストリーミングサービスやYouTubeで公開されている楽曲以外に彼らの情報を知る術はほとんどない。しかし、そうしたプラットフォームで、またはラジオで、彼らの音楽・存在に出会った人たちが着実に増えており、主に関西の音楽ファンの間で注目を集め始めている。
KI_ENの語源は、思いもかけない不思議なめぐりあわせを意味する「奇縁」にあるという。そういった意味では、私が彼らを意識したのも“奇縁”によるものと言えるかもしれない。「スノーハート」のリリース後、近い時期にKI_ENの名前を聞いたり、目にすることが続き、楽曲を聴いたのがきっかけだった。繊細なピアノの調べに乗せて、言葉を大切に届けるシルキーなボーカル。アートワークに描かれた年輪は、楽曲の中でも歌われている、時を重ねることで強くなっていく人とのつながりや絆、愛を表している。情景が呼び起こされる歌詞とあいまって、寒い季節に聴きたくなる温もり溢れるバラードだ。バンドサウンドが主体というよりは、シンガーソングライター的とも言える歌が際立つ楽曲、メロディの美しさがストレートに伝わる楽曲である。他にはどのような楽曲を演奏するのか、どんなスタイルのライブなのかが気になり、彼らにとって2度目のライブ、昨年12月17日下北沢251に足を運んだ。
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KI_ENの出番になると、フロアのムードを一変させるSEが流れ、メンバーが登場。向かって左からキーボードの橋本、ギターボーカルの野川、ギターの澤が位置づく。この日はステージのサイズの都合もあったのかもしれないが、3人が横並びで演奏するスタイルだ。新鮮な感覚を抱いていると、1曲目の「better」が始まった。このライブの時点では聴いていなかった、1月21日にリリースされたばかりの2ndシングル曲である。キャッチーなフレーズを奏でるツインギター、打ち込みによるグルーヴィーなリズムが身体を揺らすライブ映えするナンバーだ。スタイリッシュなこの曲から幕を開けたことで、さっそくKI_ENというバンドの多彩さを垣間見た。さらに驚いたのが、3人が歌うハーモニーの美しさ。以降の楽曲でも3人の歌声が冴える場面が随所にあり、メンバー全員が歌えるバンドだという新たな個性を知ることとなった。
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橋本の上品かつ繊細なタッチのピアノのインタールードに導かれた「Fifty-Fifty」は、野川と橋本がボーカルをとり、ハイトーンとロートーンを響かせる。野川はメインボーカルでありながらも間奏では軽妙なギタープレイを披露する。橋本と澤も“歌心”のあるプレイスタイルだ。続く「夢のまた夢」では、ギターの澤がシンセにチェンジ、橋本のコーラス・ピアノとともに野川の歌をアシストする。力強く前へ進んでいく決意が歌われた「性根」では、この日いちばんのエモーショナルな歌唱と演奏を見せていた。先にも記したようにこの日は彼らにとって2度目のライブ。しかし、彼らの歌と演奏にはそんな事実を忘れさせるパワーがあり、さらに大きな会場に響く光景すら想像することができた。そして、最後の「スノーハート」では、澤と橋本もコーラスで加わり、音源よりもドラマチックな琴線に触れるような野川のボーカルを聴くことができた。
彼らがどのような音楽遍歴を辿ってきたのか、どんな想いで音楽活動を行っているのか、そのようなバックグラウンドは現時点では明かされていない。しかし、ライブを通して感じたこと、得られるものは確かにあった。ミステリアスな彼らについて知る上でも、ライブを観るのが一番だ。3月22日には早くも地元京都・KYOTO MUSEでワンマンライブを開催することも決定した。おそらくこの規模で観られるのも今のうちだろう。絶好の機会を逃さないでほしい。
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■ライブ情報
KI_EN初ワンマンライブ『合縁_奇縁』
出演:KI_EN
会場:KYOTO MUSE
開場18:30/開演19:00
前売り:3,000円(税込)当日券:3,500円(税込)
※1人4枚まで購入可能。別途1D必要
券売開始:2月1日(土)10:00〜
受付URL:https://w.pia.jp/t/kien-kt/
KI_EN 公式SNS
Instagram:https://www.instagram.com/ki_en_official/
X:https://x.com/KI_EN_official
YouTube:https://www.youtube.com/@KI_EN-v6o