星野源、米津玄師、Number_i、Ado、Creepy Nuts、乃紫……注目新譜6作をレビュー
Ado「エルフ」
ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)主題歌となる新曲。作詞作曲はボカロPやYouTubeで活躍するアーティスト、てにをはが手がけている。小説家としても筆を取る彼が、言葉をしみじみ聴かせるために作ったバラードなのだろう。葛藤しながらも戦う主人公の心境が〈神話を持たないあの星座のように〉〈それは千年のホームシックでした〉など、思わずメモしたくなる表現で綴られている。往年の歌謡曲風にはらはら盛り上がるストリングスも、総じて言えば淡い背景であり、終始舞台を支配しているのはAdoの圧倒的歌唱力。〈走りなさい〉と言い含めるスタートから〈消えちまえ〉と叫ぶ後半まで、すべての歌唱がステージ上のセリフのごとくに響く。(石井)
Creepy Nuts「doppelgänger」
映画『アンダーニンジャ』の書き下ろし主題歌。タイトルを見て、まずは〈ドッペルゲンガー〉と言いたかったのかなとニヤリ。口に出すだけで気持ちがいい響き、意味もなく口にしたくなる単語を扱わせれば、いまやR-指定の右に出る者はいないのだから。とはいえ安易にタイトルを連呼する楽曲ではない。色彩そのものがかなり乏しいトラックで、BPM160に近い硬質な四つ打ちと、その高速ビートに追われるように吐き出される言葉があるのみ。一度でも踏み外したら終わりと言わんばかりの緊張感が続く中で、〈どっから来て〉〈ドッペルゲンガー〉〈アンドメロダ〉など、妙にユーモラスな押韻が用意されるのだ。ヤバさとおかしみのバランスが最高。(石井)
乃紫「バレンタイン決戦」
2023年に本格的に活動をスタートさせ、昨年「全方向美少女」で瞬く間にブレイク。緻密なコンセプトワークに裏打ちされたソングライティング、ジャンルレスな音楽性、官能性とポップネスを兼ね備えた歌の魅力は、新曲「バレンタイン決戦」においてさらなる向上を果たしている。サウンドのイメージは平成のJ-POP。Aメロ、Bメロ、サビのわかりやすい構成、エモさを演出する転調、そして、〈令和を生きる女の子は/計算高くなきゃ〉に代表されるキャッチ—かつ刺激的なフレーズ。やっぱり上手いな〜と思いつつ、サウンドメイクの心地よさとフックの効いたボーカルによってついついリピートしてしまう。あざとさと鮮やかさが共存するクリエイティビティは、やはり際立っている。(森)


























