日食なつこ、駆け抜けた活動15周年イヤーで得たものとこの先に待つ未来 「まだ何も成し遂げていない」

日食なつこ 15周年イヤーで得たもの

導火線が今走ってる真っ最中

ーー今後の活動に目を移すと、「appetite」に引き続きドラマ『こんなところで裏切り飯~嵐を呼ぶ七人の役員~』のオープニングテーマを担当することが決まりました。「風、花、ノイズ、街」は「エリア未来」で演奏された「k」なんですか?

日食:そうです。「k」です(笑)。

ーーアルファベットは出来上がった順だと言われていたので、あの日の曲の中では一番最近できた曲とも言えますね。どういう経緯で生まれた1曲なんですか?

日食:「k」の前にアルファベットの「i」という曲もあったんです(「エリア未来」では未演奏)。それで本当は「i」で完成にしてステージに出す予定でいたんですけど、「i」があまりにも暗すぎてこれはライブ映えしないだろうと思ったのと、バンドアレンジじゃないかもしれないと思い迷ってしまって。それでもう1曲書き下ろそうと急遽書いたのが「k」でした。ちょうど「エリア過去」(四谷で開催された展覧会)をやっている最中で、新宿御苑の辺りをうろうろしていて。春の街を歩き回りながらできたのが「k」ですね。なのでちょっと春の爽やかさみたいなのを含んでいる曲だったりします。

ーー〈kiss〉とか〈hug〉のような日食さんが普段書かなそうなフレーズも印象的です。

日食:うん。ちょっと洒落込んでみました。

ーーなるほど(笑)。少し散文的というか、文章よりも単語の連なりを感じさせる歌詞のようにも思います。

日食:作文っぽくしたくはなかったんです。そういうのは「やえ」でもうやったから、今回は真逆にしようと思いました。「やえ」は春の物悲しさみたいなものを歌った曲でしたけど、そうではなく春の軽さを書きたいと思い、そういう風にやっていったら自然と言葉遊びのような歌詞が湧いてきたという感じです。

ーーそしてアルバム『銀化』が5月にリリースされます。これは「エリア未来」で演奏された未発表曲が全て入るんですよね?

日食:その予定です。

ーー何故『銀化』というタイトルをつけたんですか?

日食:やたら古めかしいものを集めている、私の好きな雑貨屋さんが東林間にあるんですけれど。そこで扱っているのが、ローマングラスとか銀化ガラスと呼ばれるものたちなんです。それで銀化ガラスってなんだろうと思って調べたら、地中とか海底に凄く長い時間埋めてあったガラスは、化学反応を起こしてガラスの中が層になって複雑な光を反射してプリズムみたいになるらしく、それを「銀化」というみたいなんです。それが「エリア未来」で一度世に晒した楽曲を、もう1回アルバムに入れて出すという今回のアルバムコンセプトに合うんじゃないかと思ってつけました。

ーー化学反応を起こすという点では、「Fly-by」で歌っていることにも近いのかなと思います。そこには日食さんのどういう人生観や哲学が表れてると思いますか?

日食:実は凄く人が好きだったんだな、ということに気づかされたのは1個ありますね。私は人と一緒に音楽ができない人間だったので、人と付き合うのが嫌いなのかと思ってたんです。でも、この周年をやるにあたって、過去のものを色々とひっくり返してみて。日記や昔使っていたピアノや歌の練習ノートを見ると、どうやら人が好きっぽいということに気が付きました。やっぱり人に与えられることが好きだし、たぶん自分が何か与えることも楽しいと思っているし、苦手なだけで嫌いではなかったんだなと。

ーーなるほど。

日食:それが「Fly-by」で私が一番言いたいことだったのかなと。上手くいってないかもしれない、ただすれ違うだけかもしれない。でも、嫌いなわけではないよって言いたかったのかなと思います。

ーーそれこそ去年はリアルサウンドで3回も対談しましたからね。

日食:そうですね。上手く喋れないかもしれないけどその人から何かを得たい、この人の話は面白そうだから聞いてみたいみたいな。そういう気持ちがどっかにあるんだろうと思います。

ーー少し気が早いですが、次の5年が始まったわけですよね。20周年になる頃には、どんな日食なつこになってると思いますか?

日食:間違いなく凄まじいことになってると思います。と、吹いておきます(笑)。

ーー実際、「宇宙友泳」の企画はどれも充実が伝わるものだったと思います。15年の活動の中で、ご自身ではいつ頃からギアが入ってきた実感がありましたか?

日食:ギアが上がった瞬間は、この間の東京ファイナルですね。本当にお恥ずかしいんですけれども、あの日まで私はスイッチが入ってなかったのかもしれないと思うぐらい、パチンとスイッチが入ったというか。私がZeppツアーをやると言わないと誰もZeppには連れてってくれないし、周りがいくら美味しい材料を持ってきたとしても、私にその気がなければ事は動かない。結局は本人なんだな、というのを周年の最後の方で察知して、あのTOKYO DOME CITY HALLの会場を見た時にようやくストンと落ちたというか。マジであらゆることを私がやんないといけないんだ、みたいな。それに気づくまでに15年かかってしまったというか、ようやくエンジンかかりました。散らかさないように、汚さないようにやっていた期間はもう終わりで、16年目以降はちょっと嫌なやつになるかもしれないです(笑)。

ーー凄く楽しみです。良い勢いのまま、Zeppツアーが始まりそうですね。

日食:15周年で本当にいろんな強い追い風が吹きましたね。「THE FIRST TAKE」に出演し、『COUNTDOWN JAPAN』にも出られて。メディア露出の多さにも助けられて、15周年は強い起爆剤が揃った年だったので、たぶんそれに火をつけるのが16年目です。実はもう既に火はつけていて、導火線が今走ってる真っ最中だったりすることもいっぱいあるので、20周年は間違いなくエグいことになると思います。

ーーM-1グランプリの主題歌に「ログマロープ」が決まった辺りから、まさに追い風が吹いてきましたよね。いろんなピースがカチッと合わさったというか。

日食:M-1に始まり、そこで隠されていたお笑い界隈のファンが化学反応を起こしてくれて。芋づる式にいろんなところから、実は俺も! 実はこの界隈も! みたいなことが露わになったのがこの1年間だったんじゃないかなと私は思っています。CDJにも凄くいいタイミングで出られて、たぶん日食なつこの名前しか知らないけど、行ってみようという人もいたと思うし、それで8000人キャパの8割ぐらいが埋まって。そっからZeppに流れてきてくれる人も少なからずいると私は信じているので、己に自信を持って今年は頑張ろうかなと。去年1年で引っ張り出されたものの、さらに奥まで手を伸ばす作業をするのが次の1年なんだろうと思います。

※1:https://realsound.jp/2024/09/post-1793990.html

日食なつこ 15th Anniversary -宇宙友泳- 特設サイト
ベストアルバム『日食なつこ 15th Anniversary BEST -Fly-by2024-』 特設サイト
日食なつこ『銀化』&『玉兎 “GYOKU-TO”』特設サイト
公式HP
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