リュックと添い寝ごはん、ドラマ『未恋』主題歌「灯火」で描く孤独と希望 松本ユウが届けたいメッセージ

松本が考える孤独感、“星野源愛”を落とし込んだ「灯火」
――「灯火」はどのように生まれていった曲なんですか?
松本:最初にドラマのお話をいただいて。自分とドラマと照らし合わせる作業の中で、ドラマのテーマとして“孤独感”というものがあって。何をやっても孤独感がある感覚と、自分の中にある孤独というものを照らし合わせて作っていきました。今の僕らの年代、22歳とか23歳っていうのはやっぱり大人から見たら子どもだし、子どもから見たら大人みたいな、ちょうど境目にいる年齢な感じがしていて。新卒の人とかも「何やってんだ」とか言われるけど、子どもの世代からは立派な大人だと見られると思うんです。そのどこにも届けられないやるせなさみたいなものと、このドラマのテーマをうまいこと合わせられないかなと思って作りましたね。
――そういう感覚はユウくん自身も感じている部分があるんですか?
松本:ありますね。今年でバンド7年目になるけど、年齢は若い。キャリアと年齢の差異で、たとえば30代以上の先輩からは「まだ若いじゃん」と言われるけど、僕らに憧れて僕が音楽を始めた人たちも一線で活躍してるしっていう。その間にいる感覚が、新卒の人たちと近いのかなと思って、照らし合わせていきましたね。
――サウンド面で言うと、レフティさんが今回も入って、ストリングスなどが加わることによってすごく広がりのあるサウンドになりましたね。
松本:レフティさんには最初に「星野源さんをやりたい」と言ったんです。源さんのストリングスの入れ方だったりをやってみたいですっていう。そこからコードとメロディで構成を決めてレフティさんと一緒に肉付けしていき、その中で細かなキメとかは「こういうものにしたいです」という僕の中の星野源愛を落とし込めたかなって。
――今までも星野源に対するリスペクトはあったし、それをリファレンスにしていくこともあったと思うんですが、これまでとは何か変わった部分はありますか?
松本:より解像度上がった感じがします。ここまでやってよかったのに、なんでやってなかったんだろうって思いました。何か恐れ多いものを感じていたのか。『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024』で源さんとお会いして、お手紙を渡してお話ししたんですけど、僕は源さんが好きなのに、どうしてそれをうまいこと自分の曲に落とし込めてないんだとハッとさせられたんです。それで、もっとやりたいことやろうということで、自分の思い描くものを作れたなって思います。

――僕もこの曲を聴いた時に星野さんの顔がパッと浮かんだんですけど、結構直球じゃないですか。自分が好きな、憧れの音楽に対して結構まっしぐらに向かっている感じがこの曲にはある。
松本:今までは自分の中のエッセンスとして源さんを曲に落とし込めたら素晴らしいなという感覚だったんですけど、大好きな源さんを聴いてきた自分が作る、源さんイズムがあるものを聴いてみたいと思って。それが楽しみだったし、完成してからも結構聴いちゃってますね。
――いいサウンドになりましたよね。歌詞もすごくストレートになったという話をしましたけど、サウンド面でも同じで、曲ごとに「こういうものが作りたいんだ」っていうものが明確にありますよね。そのために必要なものに、本当に躊躇なく向かっていけるようになっているんですよね。躊躇や遠慮がなくなっている。
松本:そうですね。自分たちのサウンドにも自信がついてきたから、アイデンティティもしっかりありつつ、自分の好きな源さんのエッセンスもありつつ、という曲が「灯火」なのかなと思います。少し前だったら本当に「源さんの曲じゃね?」みたいな感じになってしまうところを、リュックと添い寝ごはんが落とし込んだ源さん、みたいなものにできたのは、自分たちのサウンドに自信がついてきているからなんだろうなと思います。

――これも「タイムマシン」と同じだけど、決してモノマネにはなっていない。そこがこの曲の大きな成果だと思います。レコーディングはどうでした?
松本:レコーディングは本当にいつも通りだったんですけど、初めてストリングスを生で録ったんです。ブースに入って、その現場を目の前で見させてもらって。そういう結構貴重な体験もいろいろさせてもらいました。
――これ、たぶんストリングがなくても成立する曲だと思うんですよ。でも、あえてそこにいろいろな音を乗せていくことによって、最終的に外向きに発信されていくようなベクトルが生まれていった気がする。それは歌詞のメッセージともすごくリンクしているなって。
松本:最初はストリングスがなくて、すごい明るい曲だったんですよ。結構狭い感じというか。でもストリングスを入れることで空間を広げて、より孤独になっていく感じが出せたんです。源さんの曲のストリングスを聴くと、なんだか寂しい感じがしていて。「これ何なんだろう?」と考えると、弦楽器の倍音だったり、ちょっとしたサステインが残ってる部分とかがそうさせてるんだろうなって思って。
――でもこの曲、演奏難しそうですよね。
松本:めちゃくちゃ難しいと思います(笑)。変拍子のところもあるので、みやさん(宮澤あかり/Dr)も悲鳴をあげながらやってました。ライブがどうなるか楽しみ。
――その辺の展開の多さもすごく自由ですよね。
松本:レフティさんにお願いしてよかったなって思うのが、僕らのわがままをたくさん聞いてくださったことで。アレンジャーさんと一緒にやるのが初めてなので、ちょっと言いづらい感じもあるのかなと思ったんですけど、レフティさんは昔から関係性があるという部分もあり、すごく相談しやすくて。「ここに声を入れたいんです」とか、そういうのをうまいこと落とし込んでくれて、リュックらしさをちゃんと出せたなと思います。
――レフティさんってすごくバンド愛がある人ですもんね。
松本:はい。ちゃんと境界線をわかってくださっている感じがしました。