2025.01.06 18:00

タイ＆韓国ライブ、Zion.Tとのコラボシングル……SIRUP、活発なアジア展開に表れる最新モード

文＝石角友香

2024年最後のビッグプレゼント、Zion.Tとのコラボシングル「CHEESE CAKE」

　そして、2024年最後のビッグプレゼントと言えるZion.Tとのコラボ曲「CHEESE CAKE」。すでに国内外44の国や地域のプレイリストでピックアップされる注目度の高さだ。両者の交流は約3年前にZion.TがSIRUPのInstagramにDMを送ったことからスタートし、今回の「CHEESE CAKE」に繋がる制作は2年前から始まり、東京とソウルを行き来しつつ完成したそう。Zion.Tは韓国R&Bシーンにおいて、ラップとメロディをミックスした先駆者。R&Bをベースにしつつ、ジャズやポップスの要素も持つシンガーソングライターだ。日本のアーティストにもファンが多く、星野源とのコラボ「Nomad」（2021年）も記憶に新しい。彼のチルでリラックスした音楽性からすると今回の「CHEESE CAKE」は少々意外な曲調ではあるけれど、メロとラップの肩の力の抜けたムードはZion.Tの持ち味と言えるかもしれない。

　「CHEESE CAKE」は「成長とともに手に入れるものや達成感が時に虚しさや陳腐さに変わる心情を表現しつつ、同時に子どもの頃の純粋な気持ちや小さな喜びの大切さを歌ったグルーヴィーなナンバー」と銘打たれており、大人だからこそ感じる若い頃の気持ちの甘酸っぱさをチーズケーキに喩えているのだろう。SIRUPとは「Superpower」や「Change」、「R&W」、「PRAYER」でタッグを組んできたトラックメーカーA.G.Oの生音とエレクトロニックのミックスが生み出す鮮烈な空間は今回も冴えに冴え、どこかトライバルさも感じるビートながらジャンルを無化したテクスチャーも楽しい。そして何より痛快に転がるSIRUPのラップとメロディライン、Zion.Tのハングルと日本語を話すテンションのラップが友人同士の会話のようだ。このバイブスはライブでのムードにも通じる。

　ともに音楽を作りたいアーティスト、自分の音楽を待っているファンに会いに行く。国が違ってもモチベーションに大差はないのだろう。SIRUPの活動はアーティストではない我々にとっても今しっくりくる生き方だ。今の彼のモードが反映された2025年の活動に注目したい。